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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第2章不死殺し編

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第27幕 魚塩町

午後からの聞き込みは新しく有力な情報を得ることもなく終わってしまった


時刻は午後6時。我輩と虎織は孔雀院晴臣という男?が経営する魚塩町に存在するバーを尋ねるため、魚塩町と十二所町を隔てる橋の前に立っていた。

橋を超えると花やむせかえりそうな香水の匂い、飯屋や立ち飲み屋の美味しそうな料理の匂い、そして若干の酒気が漂った先程居た十二所からすれば異質とも言える世界へと広がっている


「いつ来ても慣れないな・・・この雰囲気も匂いも」

「そうだね・・・正直ここは仕事でも来たくないんだよね・・・」


虎織が嫌そうな顔で言う。何故なら・・・


「そこの美人な白髪のお姉さん、うちの店来ない?かっこいいキャスト揃ってるよ!君みたいな可愛い子大歓迎だから安くするよ!」

「お断りします。連れが居ますんで」


虎織はそういうと我輩の腕に腕を絡める。一瞬何が起きたのか理解出来なかったがあぁ、なるほど、こういう風にやんわり断るやつだなと思いそのままその場でフリーズしていた。正確には動けなかった


「いいじゃん!そんなのよりかっこいいの居るよ?」


そんなのとは失礼な。これ以上客引きが酷くなるようなら取り締まってやる・・・


「私の連れをそんなの呼ばわりするのやめてください。それに知ってますか?華姫は客引き禁止なんですよ?」


肌がひりつく程の殺気が虎織から放たれている。虎織もこういう時大概怖いんだよなぁ・・・

それでも男は殺気に気づかないのか飄々と話を続ける


「知ってるさそんなことぐらいさぁ。バレなきゃいいんだよそんなもん」

「分かりました。埒が明かないんでお店に行きましょう・・・将鷹、いいよね・・・?」


あっ、やばい。この感じ。我輩は黙って頷く他なかった。虎織は腕を絡めたままスタスタと歩く


「いらっしゃいませ!」


きっちりとしたスーツの長身の金髪男が最も最悪な客を招き入れてしまった。可哀想に・・・


「この方はこの店の店員さんですか?」


虎織は優しく、自然な声で客引きの飄々とした男を指差し金髪の男に問う


「いえ、このような者はこの店には所属しておりません」


澄ました顔で金髪の男はそう言った


「何冗談言ってんですか金森さん」

「お引き取りください。ここは彼氏連れで来るような場所ではありませんので」

「そうですか。では私達は失礼します」


曲がり角まで行ってその角で虎織は止まる。そして我輩は少し気になった事を聞く


「なぁ、去り際に投げたのって盗聴器的なやつ?」

「あっ、バレてた?」


笑顔で虎織が言う。バレるよそりゃ・・・最小限の動きとはいえ普通なら気づくと思うんだけど


「まぁあの2人にはバレてないみたいだから大丈夫だよ」


懐かしさを感じる四角いフォルムの機器をポケットから取り出して虎織はそこから聞こえてくる声に耳をすませていた。

どうやらカセットテープが入っているようで録音もできるようだ。懐かしいなカセットテープ・・・

懐かしさに浸りながら我輩も聞こえてくる会話に耳を傾ける


「・・・客引きする時は相手を選べ!そもそも今の法令の中で客引きするな!」


金森と呼ばれていた男の声だ。随分と怒っているようだ。まぁそれもそうか。あいつらからしたら店を潰される危険性さえ有るのだから


「どう考えてもありゃあ仲良しカップルだろうが!人様の幸せ邪魔してどうすんだ!それにあの女性の表情きっちり見たか!?あれは文句言いに・・・いや!店を潰しに来てるような顔だったぞ!?それにお前には周りの掃除頼んだだけで客引きしてこいなんて俺は一言も言ってねぇよなぁ!」


あれ?案外この人いい人っぽいぞ?


「すんません、俺どうしても売上に貢献したくて・・・」

「あのな?その気持ちは嬉しいんだけどよぉ客引きは逆に店潰そうとしてるんだわ。今回は引き下がってくれたが次は確実にねぇからな?」

「はい」

「掃除に戻れ」

「うっす」

「そこははいだろ・・・」

「はい」



「普通にいい人だったね・・・」

「だな。さて、立ち往生はここまでだ。さっさと店見つけて情報集めよう」

「そうだね!あっ、そろそろ来るかな」


虎織がそういうと曲がり角から禍築が現れた。禍築もこちらに気づいたのかびっくりしていた


「なんで先輩達がいるんですか!?ここで桜花さんと待ち合わせしてたはずなのに・・・!」

「おー皆来ておったか。待たせたな」


桜花さんが屋根から屋根に飛び移りながら声をかけて来た。よく見るとアリサを抱えていた


「随分とダイナミックな登場ですね」

「いやはや神代を丸め込むのに思いの外時間がかかってな。急いでここまで来る為には屋根伝いの方が良いからな」

「なるほど。アリサ、大丈夫か?」

「ご心配をお掛けしました!風咲アリサ、完全回復しました!」


アリサはシャンと背を伸ばし敬礼をする。例えるなら海軍のようだった。まぁ一時期日ノ元を巡回する船で生活してたみたいだし癖付いているのかもしれないな


「アリサは本当に礼儀正しいな。金剛寺兄弟や陰乃伊兄にも見習って欲しいものだ・・・」


そう言って桜花さんは苦笑いを浮かべる


「そういえばなんで桜花さんがここに?あと禍築も」

「儂は虎織に付き添い頼まれてな。禍築はここら辺詳しいだろうから呼んでおいた」


確かにここを我輩と虎織で調べるには力不足か。もしもの事があるかもしれないというやつだな。禍築も魚塩町においては我輩よりも詳しいはずだし案内人としては適任だ


「それでは奇々怪々と酒と欲が渦巻く夜の華姫の世界へと出向くとしよう」


桜花さんは恐ろしい事を言いながら歩を進める。そしてその前を歩く禍築。どうやら場所の検討はついているようだ


「ここが先輩達が探してる店です。本当に入る気ですか・・・?ここ女装した男共が居るやばい店って聞いたんですけど・・・?」

「やばい所ほどいい情報が集まるってもんだろ?」

「それは確かに・・・」


妙に納得している禍築。それもそうか。ネット情報を駆使する禍築のことだ多少はやばいところにも入りこんで情報を仕入れていのだろう


「じゃあ入るか・・・!」


きらびやかなネオンに照らされた店、ベッロパヴォーネのドアを開き我輩達は意を決して中へと入った

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