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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第2章不死殺し編
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第28幕 アルカンスィエル

店内に入ると鈴の音が響く。

店の内装はカウンターの前にクルクル回りそうな丸椅子が10、2人がけの対面席が4席。そしてその奥には大きなピアノが1台。カウンター奥の2つの棚には見たことの無いような酒から一般的な物までずらりと並んでいた。

そしてその棚と棚の間には通路があった。ちらりと見えたレンジやコンロからして厨房だろう



「あら坊や。早速来てくれたのね。しかもいい男2人も連れて・・・ふーん。十二本刀の重鎮、白鷺が居るって事はお仕事かしら?」


赤いドレスを身にまとった男、孔雀院晴臣が酒が並べられた棚の整理をしながら我輩達を出迎えてくれる


「お邪魔します。仕事と言えば仕事、息抜きと言えば息抜きですよ」

「大変なのね。どうぞ、好きな席に座ってちょうだい。それとこれはメニューね。あとアタシの店は未成年にお酒は出せないからそこの金髪の子にはソフトドリンクのメニューね」


我輩達はカウンター席に順に腰掛けていく。

それはそうとなんでアリサが未成年ってわかったんだ?と思ったけど良く考えればアリサは今日制服だったな。

目の前のメニューに目を通すと酒類しか載っていなかった。裏面にソフトドリンクがあるのかと思ったが変わった酒があるだけだった


「我輩にもソフトドリンクのメニューを頂けますか?」

「坊やは下戸なのね。そういう雰囲気はなかったのだけれど?」

「少し飲むとすぐ寝ちゃうんで控えてるんですよ」

「へぇ、それならまた今度夜が更けてから信頼出来る人と来るといいわ」


アタシの店の酒が飲めないってのか!って言われなくて良かった


「儂はカシスオレンジを」


桜花さんがメニューに目を通してから注文を口にする。飲み会で桜花さんがいつも最初に頼むやつだ


「俺はビールで!」


禍築もいつも通り


「メロンソーダを。あっ、氷ぬきで」

「私もメロンソーダ氷ぬきでお願いします」

「うちもメロンソーダ氷ぬきで」


我輩達もいつも通りだ。気分が乗ればウィスキーや度数の低い酒を頼むのだがこのあとを考えると酒は飲めない


「まずはビールね。それとカシスオレンジとおつまみのミックスナッツ。メロンソーダは少し待ってちょうだい」


店主は手際良く注文の品とおつまみを並べて行く。

そして棚の間にあるおおよそ厨房と思われる場所に消えていく


「待たせたわね。メロンソーダよ」


トン、トン、トンと3人分のメロンソーダを我輩達の目の前に並べて行く。そのメロンソーダにはアイスクリームが乗っていた


「アイスはオマケよ」

「ありがとうございます」

「では一応恒例のアレをやっておくか。禍築、音頭を頼む」

「こほん。では、俺たちの出会いと華姫の平和にカンパーイ!」

「「「「カンパーイ!」」」」


全員でグラスを上に掲げる


「あらあら、皆仲がいいのね。それはそうと仕事半分って事は何か情報収集でもしに来たのかしら?」

「えぇ、最近この近辺の人達の失踪事件を追ってまして」

「あーアレね。お客さんが結構話をしてたわよ。人間モドキが関わってるって話じゃない」

「皆結構知ってるんだなぁ・・・他に何か知りませんか?」

「人間モドキ関連でなら1つ。外国企業と仕事してるお客さんがアルカンスィエルって企業が人間モドキの実験してるか何かは聞いたわね。誰かが人間モドキの資料をそこの会社に売って話をややこしくしてるそうよ」

「アルカンスィエル・・・」


午後の聞き込みの最中蓮から来たメールに書かれていた企業だ。ヤバい薬作って流してるかもなんだよな・・・

意味は確か虹だったか?

表向きにはアンドラ公国に拠点があってフランスが経営しているきっちりとした製薬会社らしいが・・・

メロンソーダを1口飲み考える。なんでその企業に人間モドキの情報を売ったのだろうか。あんなもの厄介極まりない人の手に負えない代物だろうに


「ぷはぁー!聞いた事有りますよその会社。深層ウェブじゃかなりやばい事やってる会社って聞きますしなんならコカインとかも売り捌いてるとか」


禍築がビールを飲み干し言う。一気飲みは良くないぞと蓮なら言うだろうな・・・


「禍築、酒の一気飲みはやめとけ、死ぬぞ」

「蓮先輩みたいな事言わないでくださいよー」


若干酔っているのか少しテンションが高い気がする


「にしてもコカインか・・・厄介な物を流してるんだな・・・日ノ元に流れ込んで来る前に抑えておきたいが・・・」

「コカインは一応抗うつ薬としても使われるからそれの横流しかしらね。利益重視の会社なんてすぐに潰れるわよ」

「それならいいんですけどね」

「孔雀院さんはどうして女性の格好してるんですか?」


虎織が唐突になかなか踏み込んだ事を聞く。興味が抑えられなかったのかキラキラとした目で彼を見る


「そうね。単純に着たかったから。それに服なんてどんなもの着ようが似合ってればいいじゃない。メイクをするのもアタシが美しく見えるようによ。男がドレス着ちゃいけないなんて古臭い考えよ」

「なるほど・・・孔雀院さんは凄いんですね」

「まぁそうかもね。着て見たくても世間様の目があるからとか日ノ元の人はそんな人ばかりだからアタシが先頭に立って歩くのよ。そうすればきっと後から着いてくる人に向けられる目も少しは和らぐじゃない?アタシは自由を愛する者なの。好きな物は好きと言える世の中がいいじゃない?だからこの硬っ苦しいルールと世間のレッテルとタイマンはってるのよ」


その言葉に嘘偽りは無く堂々としていた。かっこいいとすら思う程に。多分この人は数多くの人の悩みや葛藤を聞いてきたのだろう。そして修羅場も多くくぐり抜けてきたのだろう


「店主さん、ビールもう一杯!」


禍築はつまみに手を伸ばしながら空のジョッキを掲げ、孔雀院さんへと渡す。飲み過ぎ無いだろうか、大丈夫だろうか・・・禍築には飲み過ぎた末、飲んでいた店の前で吐いて店に迷惑がかかるという前科があるからだ。


「儂はジェントルマンズショコラを頼む」

「承ったわ」


我輩達は談笑しながら1時間ほどして店を後にする。なかなか楽しい時間を過ごせていた。

桜花さんの頼んでいたジェントルマンズショコラはまた今度頼んで見ようと思える程に美味しそうな香りがしていた。酒が飲めない事を悔やみながらラーメン屋に立ち寄りそこでご飯を食べ解散となった。

楽しい上に情報収集も少しできたし朝、昼と大変だった分充実していたと言えるかもしれない。

あとは帰ってから虎織と手合わせして風呂に入って寝るだけか。割と長い1日だったな・・・

そう思いながら我輩達は帰路へとつく

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