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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第2章不死殺し編

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第25幕 離脱戦

斬った。落とした。撃ち殺した。キリがない。返り血が飛ばないのが唯一の救いか


「どんだけ居るんだよ・・・!」


人の道から外れた者達いや、人の道を外された者達は元に戻してやれないなら殺すのが救いだと小さな頃から言われてきた。だがこうも原型を留めているとしんどい。

こんなことを考えながらでも首を刎ねたり、蹴り倒してから頭に鉛玉をぶち込む作業的な殺戮を行っていた。

これもまた異常なのは分かっている


「嗚呼、なんと残忍な・・・私の食糧をこんなにも粗末に扱うとは・・・いえ、これは外に置いておいた私の不始末とも言えるやも知れませんね」


声のする方向に目をやる。片方は濁りきった目、もう片方は澄んだ宝石の様に煌めく不気味で不吉な茶髪の優男がそこに居た。そちらに気を取られていると足元にどす黒い影が広がっていた


「みんな気をつけろ!影に喰われるぞ!」


全力で叫び近くに居る全員に鎖を絡め思いっきり空へと全員を投げる。火事場の馬鹿力というやつなのだろうか軽々と投げる事が出来た。

あぁ、なるほど。虎織がサポートしてくれてたか。まぁ当然と言えば当然だな。

地面の影が大口開けてバクンとその場に居た人間モドキ全てを飲み込んで残ったのは不吉な男と赤い煙だけだった


「はぁ・・・まともな人など久しく食べておりませので今夜はご馳走だと思ったのですがこれはお預けかも知れませんね・・・」


不吉な男はそういうとカッカッと靴を鳴らし自らの影に手を突っ込み中から人間モドキを1体、2体と取り出し恐ろしい速度で我輩目掛けて投げてくる。

空中にいるため身動きは取りにくい。皆に括りつけた鎖を解き、その鎖を振って一撃目の人間モドキに絡めてから地面に叩きつけ、足元に魔術式を展開し足場とし不吉な男目掛けて飛び込む。迫り来る二撃目も鎖を使いいなす。


「鎖使いとは随分と珍しい。しかし変ですね。聞いていた話とは随分と違う・・・」


不吉な男は顎に手を添え余裕そうに不思議だと考え始めていた。構わず我輩はさっきまで出していた鎖を仕舞い、新たに鎖を引き出し男をぐるぐる巻きにするように絡ませる


「おや、捕まってしまいましたか」

「お前絶対わざとだろ・・・!目的を言え!でないと・・・」

「私を殺しますか?ハッタリはききませんよ。君は確か人は殺せないと聞いています」


鎖に魔力を込める。すると鎖の一部が赤熱し始め爆ぜる。ぼとりと男の腕が地面に落ちる。そして我輩はすぐに次の鎖を巻き付ける


「腕を吹っ飛ばすとは手荒な拷問ですね。でも私には効きません」


男がそう言うと地面に落ちた腕を影が食い、鎖がギチギチと鳴き始める。

再生能力かなにかなのだろうか、男の腕は元通りになり男はにやりと薄気味悪く笑う


「1つ、教えてあげましょう。私は死ねません。どこかの部位が欠損しようが再生しますし君たちで言うところの痛覚など有りません。ですので痛みなどによる拷問は無駄、なのですよ」

「不死身って言いたいのか」

「えぇ、有り体に言えば不死身です」


不死か、神殺しなら殺せるか?いや待て、何故我輩はコイツを殺そうとしている?


「将鷹、ここは一旦引く事を提案する。ここには何か良くない何かが有る」

「分かりました。先に桜花さんの所まで行っててください!コイツをグルグル巻きにしてからそっちに向かいます」

「虎織、将鷹を頼む」

「分かりました!」


ヴァンさんの提案を受け我輩は周りを見渡す。何故か皆顔色が悪い。確かに何かがここにはあるようだ。

鎖を自称不死身の男に複雑に巻き付けてから地面に杭を打ち込み鎖を繋ぐ。これで止められるなんて思ってない。時間稼ぎにすぎない


「待たせた。走ろう」

「うん、アレは放置で大丈夫なの?」

「放置せざるをえないってやつかな。華姫にあれを持って帰る訳にはいかないし、ここで倒せるとも思わない。全員が万全ならまだしも皆なんか顔色悪いし」

「多分ここで人間モドキにされた人の怨念みたいなそういうのだと思う・・・」

「そりゃ厄介だな・・・車に乗る前に祓うか」


走り出しながら拳銃を構え後ろを警戒する。不吉な男はまだ動けていない。だがワラワラと奴の影から人間モドキが這い上がってきていた。そろそろ使い時だろうか。そう思い袖から紐の通された十の指輪、十の願い事を取り出し紐を解く。

指輪には1から10までローマ数字で刻印がされており我輩はⅠ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅴ、Ⅶ、Ⅸの指輪を紐から引抜き指にはめていく。


「それって・・・お爺さんのあの指輪?それを将鷹が着けた瞬間身体が軽くなったんだけど・・・」


虎織が不思議そうな顔をしながらこちらを見ながら言う


「あぁ、十の願い事だ。ⅠとⅡの指輪の効果だろうな」


Ⅰ、悪鬼悪霊を払う指輪とⅡ、病事を跳ね除ける指輪だ。

正式名称は各々あるみたいだが今は思い出せない。

さらにIV、VI、Ⅷ、Ⅹの指輪に関しては効果が一体どういうものなのか我輩は知らない


「将鷹!乗れ!」


桜花さんが車を勢い良くUターンさせ近くで停車させる


「我輩はトランクに乗ります!出来れば3列目を少し前にしてアリサと虎織を2列目にお願いします!」

「分かった!席替え急げ!」


桜花さんの掛け声で席の移動が始まる。それを終えたのを確認してから一声


「全員目を瞑ってください!」


声をかけてすぐに我輩は袖から塩を車内に撒き、自分にもかける


「将鷹、お前これ塩か!?外で撒けば良かっただろうに!」


文句を言いながらもこれの意味がわかったのか桜花さんは車のエンジンをかけ勢い良く車を走らせる。

車が発進してからピッーピッーと警告音が響く


「どこか半ドアだぞ」


ヴァンさんが言う


「ヴァン、後ろ見てみなさい」

「あぁ、なるほど。だから3列目を少し前に出せって言ってたのか」


ヴァンさんは納得したような声で言う。

半ドアなのはドアでは無い。我輩の居るトランクのだ。もうこれは半ドアとは言ってはいけないな。全開なのだから


「後ろから人間モドキが接近!応戦します!」

「頼んだぞ!」


車とほぼ同速で走ってくるとかヤバいだろあの人間モドキ。しかも結構な数居るし・・・

でも倒せない数じゃない。引き金に指を添え狙いを定めてから人間モドキに向けて銃を撃つ。

1発1発着弾の確認なんてしてられない。気にせず撃ち込んで行く。

撃ち続けているとスライドが引かれた状態でロックされる。これは弾を撃ち切った後になる状態だ。

袖から予備マガジンと予備の弾を取り出しマガジンと予備の弾を後ろに居るヴァンさんに渡して予備のマガジンをセットしロックを解除してスライドを引き、もう一度引き金に指をかける


「ヴァンさん、給弾お願いします」

「渡された時点でやってるぜ!気にせず撃ちまくれ!」

「ありがとうございます!」


撃ち続けること数十秒、それなりに数が減ってきたように思える。

そんな時だった。桜花さんの声が響く


「振り落とされるなよ将鷹!」


曲がり道か!一直線ならいざ知らず曲がる瞬間に振り落とされそうになったが何とか持ちこたえた。


若干人間モドキに距離を詰められた気がするが気にせずに撃っていく。あと少しで逢坂付近か・・・塩を撒いたのは例のトンネルに引き寄せられる可能性があったから撒いておいた。ついでだし少し外にも撒いておこう。何発か撃ってから塩を撒く


「桜花さん、大丈夫ですか?」

「お蔭さまでな!このまま逢坂を抜けるぞ!」


逢坂を抜けた途端人間モドキは追って来なくなった。しかし警戒は緩めてはいけない。何時でも撃てるように銃を構えて待つ


「よし、何とか華姫まで帰って来れたな」

「事の報告をしに行くぞ、将鷹と虎織、月奈、アリサはついてきなさい。ヴァンとローズは白狐様をもてなして貰う」

「了解。全く、師匠は無茶言ってくれるぜ。神様なんてどうもてなしゃいいんだよ」


ヴァンさんがボヤくと車が止まった。ちょうど着いたようだ。見慣れた景色を見て一安心する。

これからどう琴葉ちゃんに説明したものか・・・

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