第21幕 服屋
我輩と虎織は服屋で白狐の服を見繕っていた。時刻は11時手前。だいたい1時間くらい我輩は眠っていた訳か。そういえばアイツが華姫を彷徨いてるって琴葉ちゃんに報告しておかないと・・・いや、月奈と虎織が連絡しているだろう。まぁ一応聞いておこう
「虎織、アイツの件報告してる?」
「うん。大丈夫。きっちり報告してるよ」
やっぱり報告はしてるよな。これで市民に被害が出ることはほぼないだろう。
我輩は服を選ぶのに専念するとしよう。
1着良さそうなTシャツを見つけ虎織に見せる
「これなんてどうだ?」
「いやーこれはちょっと失礼じゃないかな・・・」
「うーん流石にダメか。ノリでOK出るかなって思ったけど」
「それ着せたらもう聞き込みどころじゃないよ。下手したら職質だよ?というか私なら職質待ったナシだよ」
やはり助平親父とドドンっとプリントされているTシャツはダメか。面白いと思ったのだが
「これなんてどうかな?」
「甚平か。うん。悪くないな。ってそのサイズじゃアイツ着れないな」
すごくいいデザインなんだけど如何せんサイズが小さいとな
「あーごめん。これ将鷹にと思って・・・」
「よし、買おう。虎織は我輩の好みをよく分かってるな」
「何年一緒に居ると思ってるの?」
「確か17年くらいだったかな?」
「そうそう、そのくらい。今までの人生の約9割一緒に居るって相当だよね」
「だな。もう家族みたいなもんだしな。一緒に暮らしてさ」
「中学の頃からなんだかんだ将鷹の家でご飯食べてたもんね」
「そうなんだよなぁ。虎織が来ない日とか母上が喧嘩したのかって聞いてくるレベルで馴染んでたし」
全く・・・あの頃から大好きなのに今まで告白のひとつも出来ないとは我輩は随分と臆病でヘタレなんだなって自覚せざるを得ないな
「私も家で1人で居るのが落ち着か無かったんだよねぇ・・・お父さんが用意してくれた部屋も寝泊まりするだけみたいな状態だったし」
「そんな状態見て母上がうちで一緒に暮らせば?って言ったんだよなぁ・・・そんで我輩が虎吉さんに風咲家で虎織が暮らせないかって話に行った日は今でも鮮明に覚えてるな・・・なんせ殺されかけたし」
「あの日の将鷹すごくかっこよかったんだよ。何度倒れても立ち上がってさ」
「そうか?我輩としては何回も吹っ飛ばされてみっともないって思ってたけどな」
「そんなことないよ。私はあの頑張ってる姿凄い好きだもん」
「そうなのか?まぁかっこいいって言われるのは悪い気はしないな・・・」
「そうそう。あっ、そうだ!今日仕事終わりに手合わせしようよ!」
「おっけー!今日は負けないからな!」
「私も負けないよ!」
意気込んでみたが今まで虎織に勝てた事は1度もない。今日こそはと昔はよく挑んだものだ。
そんなことを考えていると白狐に良さそうな服を見つけた。服というかワイシャツとジーンズなのだが
「虎織、白狐にこんなのはどうだ?」
「いいんじゃないかな。街中歩いてても不自然さは無いし」
「よし、それじゃあ買ってくる」
ジーンズの金額に驚きつつ会計を済ませる。最近のジーンズは中々に高いんだな・・・
神社に戻り白狐に服を渡して気づいた。シャツとかパンツを買っていないことに・・・
「下着はねぇのか?」
そうなるよな。正直に言うしかない
「すまん忘れた」
「まぁ構わんが」
「そんなことも有ろうかと近くのコンビニで買ってきておいたよ」
月奈が袋をポイッとこちらに投げる。本当に有難いものだ、こうやって我輩のミスをカバーしてもらえるのは
「ありがとな!」
キャッチすると何故か下着類の重さではなく何か缶珈琲でも入っているかのような重さが伝わってくる
「その中に将鷹の珈琲も入ってるからね!」
「せめて珈琲は袋から出して投げて!」
なんというか下着類が入っている袋に珈琲が入っているのは許容し難い・・・個包装されているとはいえもし何かあったら珈琲浸しになる。というか昔そんなことがあったから衣類と飲み物を一緒の袋に入れておくのが若干苦手なのだ
「童。お前なんか決意でもしたか?憑き物がとれたというか朝よりさっぱりしてるが」
「んーそうだな、決意といえば決意だな」
「そうか。あまり気を張りすぎるなよ?いや、あまり気を抜くなよと言うべきか」
「分かってるよ」
「あと、これは誰にも話してはいないのだがどうやら結界の綻びはお前の父親を名乗る者が関与している。結界を調べている最中にそいつが得意気に語っておったぞ」
「結界の件に関わっていたのか・・・いや、そう思っておく方が自然か。あの鬼型と戦った時にアイツが何らかの手で我輩達の感覚を狂わせておいてあの場所に誘導していたと考えるべきか」
「どうやら既に一悶着あったみたいだな。詳しく聞かせてはくれぬか?」
白狐は服を着ながら我輩にそう言う。そして我輩は頷いてからさっきまでの出来事を簡潔に語り始める
「なるほど。ふむ、認識阻害の霧とはまた厄介な者だ。しかし昨日渡した天照の御守が機能していないとはな。あれはあらゆる厄を退けるモノだが・・・どれ、御守を見せてみろ」
白狐に御守りを渡すと白狐は顔を顰める
「随分と高度な技を持った相手だったようだな。権能の一部が封じられておる。結界を弄るだけでなく御守を現世と隔離する結界を張っておるとは」
「それって治ったりするのか?」
「それは無理だな。連絡をとりたい者が居る携帯とやらを貸してくれ」
携帯を渡すと白狐は知らない番号へと電話を掛け始めた
「あぁ、天照か?オレだオレ。・・・詐欺ではない。白狐だ。童に渡した御守なんだが速攻で使い物にならんようになった。他のを用意してやってくれ。わかった。伝えておく」
電話を切り我輩に携帯が返ってくる
「天照が新しい御守を持ってくるそうだ。しばし待つといい」
「なんかそれは申し訳ない気がするな・・・」
「気にするでない。アレも満更でもなさそうじゃったし。さて、アレが来るまでお前達の仕事の手伝いといこう。着いてこい」
言われるがまま白狐の後ろに着いていく。やっと今日の本来の仕事が始まる・・・




