第14.5幕 其ノ弍 不安と・・・
アリサちゃんと話をしながら事務所へと向かっている。
話の話題で盛り上がるのはやはり将鷹の事だった。
幼少期の自信に満ち溢れ、とあるヒーローに憧れていた頃の将鷹の話をすると、どうやらその頃に1度風咲の本家で会っていた様だ。
やっぱりと言うべきなんだろう、泣いていたアリサちゃんに声を掛けて遊んでくれたらしい。
今では目の前のモノさえ守れるならそれでいいと言っているけど昔は助けを求める人には手を差し伸べるって言って困っている人全員に手を差し伸べていた。
あの頃の将鷹も今の将鷹も何かを守ろうとするのは全く変わっていないのが私としてはとても嬉しい。
人は変わっていくけど根本的に変わる事はそんなにない。目の前のモノを守りたいと将鷹が言うのは目に映るモノ全てという事なのだから昔とそう変わらない
「そういえば今回はお兄ちゃんと虎姉は別行動なんだね。珍しいというかありえないというか・・・」
「人手の問題だと思うよ。最近バタバタしてるし・・・でも月奈の追ってる事件は1人で片付けるって言ってたっけ・・・?どういう事だろ?」
琴葉ちゃんの評価として月奈1人居れば大抵の事は片付く。それくらいには評価されているはず・・・
今回の事件はもしかしたら月奈だけじゃ手に負えない様な状態なのかな。それに昨日・・・じゃない。今日神様が家に来たって事はやっぱり何か大きな事が起こるのかな・・・
考えているうちに事務所へと着いてしまった。私も考え過ぎる癖があるから将鷹の事どうこう言えないかなぁ
「私は琴葉ちゃんと話があるからアリサちゃんは桜花さんに仕事教えて貰ってね」
「了解!虎姉頑張ってね!」
「アリサちゃんもね」
「うん!」
アリサちゃんは元気に私を見送ってくれた。
階段を登るのが面倒、というより時間が惜しいから2階の開いている窓目掛けて跳ぶ。ちょうど黒影対策課の窓でなおかつ市長室の扉の近くだった。
「おはようございます!」
時間的に桜花さんか禍築君が居る頃合かな。
挨拶しながら窓の縁に手をかけ飛び込んでみた。将鷹が居たら笑いながらおはようって言ってくれるんだろうなぁ
「おはようございま・・・えぇ・・・雪城先輩まで窓から出社ですか・・・」
居たのは禍築君だった。困惑しながらこちらを見てくる。しかもお前もかみたいな表情で
「あれ、その反応はもしかして誰か窓から入ったりした感じ?」
「風咲先輩っすよ。1週間くらい前に全く同じフォームで飛び込んで来ましたよ・・・」
「そ、そうなんだ」
まさか将鷹も窓から入った事あるなんて・・・というか1週間くらい前って多分禍築君に釘刺しにいった日かな・・・
「ふぁぁ・・・おはよう・・・禍築、パンと珈琲・・・ってあら?随分と早いわね虎織。てっきり将鷹とイチャイチャしながら来ると思ってたけど」
禍築君はなんで毎回俺なんだって言いながらトーストを焼きながら珈琲を淹れている。
口では悪態をついているが顔は少し楽しそうだった
「将鷹は月奈と聞き込みに行ってるよ。あと聞きたい事があるからこの後時間を空けておいてもらってもいい?」
「そうだったわね。すっかり忘れてたわ・・・話は朝ごはん食べながらでもいいかしら?」
「問題ないよ」
「そう。じゃあ市長室に行きましょうか」
「それで聞きたいことって何かしら?」
琴葉ちゃんは少し笑って見せる。これは大抵察しがつくけどという表情だ
「今回の月奈の追ってる事件って危ない事件なの?」
「そうね。前にあった先代との戦いで裏で糸を引いていた人間がまた何かするつもりじゃないかと私は読んでいるわ。だから将鷹を先に月奈の手伝いに行かせたのよ」
「じゃあ私も明日から・・・」
淡い希望は即座に打ち砕かれてしまった
「そういう訳にも行かないのよ。しばらく私の護衛の仕事が続くわ。会合とか面談みたいなのが連続してるの」
はぁ・・・と琴葉ちゃんはため息をつく。私もため息つきたい状況だよ・・・
「あと将鷹と虎織は私としては個々で戦う方が強いと思ったりしてそれを踏まえて今回は2人の距離を空けさせてもらったわ」
「確かに将鷹は1人でも強いかもしれないけど私は将鷹が居るから全力が出せるんだよ。正直この護衛任務も私1人で務まるかどうか今も不安だし」
思った事をそのまま言っちゃったけど大丈夫かな・・・?
「あら、桜花の言う通りの反応ね。本人が言うならもう試すまでもないかしらね。嘘をついている様子も無いし。ただ、明後日までは我慢して欲しいの。他の部署でというか経理課の神代から昔馴染みだからといって贔屓するのは良くないって言われてね。どうにも丸めこめそうに無いからこういう形を取らざるを得なかった・・・いえ、私も2人は個々で仕事した方が早いとは思うのだけどやっぱり虎織の意志を尊重するわ。今日の面会が終わったら月奈と将鷹に合流してちょうだい。神代の方は何とかして言いくるめておくわ」
「いいの?」
「いいのよ。はぁ・・・あの日の私はどうかしてたみたいね。虎織、汗はきっちり拭いておきなさい。というかそんなに将鷹が居ないのが不安なのかしら?」
「えっ?そんなに汗かいてる・・・?」
確かに服がじめっとしている気がする・・・顔を触ると汗だくだった・・・
「まぁ分からなくはないわよ。昔から一緒に居るものね。それこそ縁が切れることなく全ての学校でクラス同じだったわけだし、特別な存在なのよね。でも、程々の距離じゃないと後から辛いわよ?」
「どういうこと?」
「もし将鷹が死ぬ、もしくは他の女とくっついたら貴女正気で居られるのかしら?」
「自信はないかな・・・」
「そう。なら虎織、貴女にできる選択肢は3つ。1つ目、将鷹から距離をとる。2つ目、さっさと将鷹と結婚して夫婦共々危険なこの職場を離れる。3つ目、死なない様にずっと一緒に居てお互い守り合うか」
「3つ目」
「そう答えるだろうとは思ったけどこれは根本的な解決にはならないのよ。そうね、追加で言うなら将鷹が虎織しか見れないようにしないとかしら」
その言葉は魅力的で、でもそれと同時に将鷹の夢を奪うことになる様なものだった
「悩んでいるところ悪いのだけど着替えるから部屋から出てちょうだい。流石に同性とはいえ見られるのは恥ずかしいわ」
私は市長室を出て自分の席に座ってニュースを聞き流す
「今日の運勢!絶好調さんはしし座のアナタ!唐突に嬉しい事があるかも!ラッキーアイテムは大切な人からもらった物!」
唐突に嬉しい事か・・・ラッキーアイテムはこの髪留めかな
今日はいい事がありますように・・・そう祈りながら机の上にある特に意味の無いであろう書類達に目を通し始める




