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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第2章不死殺し編
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第15幕 華御鏡

果たし合いというかただの我輩の軽率さが招いた喧嘩を終え我輩は土地神さまと境内でお茶を飲んで過ごしていた。

仕事をしろよと言われるかもしれないがこれもれっきとした仕事なのだと言っておく。決して疲れたから境内でお茶飲んで一服してる訳じゃないから。断じて違うから


「土地神さまなら何か知ってるんじゃないですか?ある程度華姫の全体を見れる訳だし」

「それがココ最近華御鏡(はなみかがみ)の調子が悪くてな。ノイズ混じりでしか見えんのじゃ。(もも)(こん)(あい)。華御鏡を此処へ持ってまいれ」

「「「畏まりました」」」


声と共に鏡を持って現れたのは3人の同じ顔の巫女。背丈、声色、目付き全てが同じで脳の処理能力が追いつかなくてそう見えてしまっているのでは?と錯覚するほどに同じなのだ。

違う点を挙げるのなら各々腕に自分の名前と同じ色の布を巻いている。唯一、ただそれだけだ


「それが華姫全体を見渡せる鏡・・・なんというか普通に銅鏡って感じですね」

「これはどこぞから出土した銅鏡に浄玻璃鏡(じょうはりのかがみ)に近い能力を足しただけの物じゃから実際は普通の銅鏡と変わらんのだ」

「浄玻璃鏡って言うと地獄にあるって言われてる罪人の過去を写すやつですか」

「左様。こやつは今しか見れぬというのは難点じゃが華姫を見渡せるというのはアレより優れておる。まぁ実物は1回しか見ておらんから必ず優れておるとは断言できんが」


実物を見た事があるというのなら1度死んで閻魔に会っていることになる。そもそもそうなれば此処へは戻ってこれていないのではないだろうか。本物を見るのはきっと死んだ後の事だし神様に死の概念が存在するのかどうかも怪しい。


「疑問符を浮かべておるな?神は死にはしないとかそういうのじゃろ?」

「えぇ」

「儂は元々人間でな。ここの前の土地神、少彦名命が少し寝込んでおる時に儂が神に仕立てあげられたんじゃ。1度死んで甦る前に死後の世界というのか?そこで浄玻璃鏡を見たという訳じゃ」

「人が神になっていいものなんですか?」

「良くはないな。しかしまぁ成ってしまったものは仕方ないと他の神も言っておったし」

「そうですか。それはそうと少彦名命様に会ったことは?」

「あるぞ。そりゃもうしょっちゅう顔を合わせておる。昔の事に負い目を感じておるのかよく団子をくれる。というか童はまだ会ったことが無いと言うのか?」

「はい。昔縁があったみたいなんですけどてんで思い出せなくて・・・」

「あーそうかそうか。あやつめまだきっちり姿を現しておらんかったか・・・まぁそのうち逢えるじゃろ。なんせ童の事をかなり気にかけておるからな」


さて、と言いながら土地神さまは三巫女から銅鏡を受け取り見覚えのある景色を銅鏡に映し出す。

どうやら事務所の応接室の様だ。琴葉ちゃんと虎織、どこの市のお偉いさんだったかてっぺんが禿げた初老の男が居た。多分何かしらの商談だろう。琴葉ちゃんはふんぞり返って座り、相手は汗を拭ってから紙に数字を書いて、それを見た琴葉ちゃんが首を横に振る。

それを数回繰り返していると映し出した映像にノイズが走る


「今日はもうダメみたいじゃな」

「流石に判断早すぎません?」

「こうなると後はノイズが酷くなるだけじゃ。見るだけ時間の無駄というものだ。紺、片付けておいてくれ」

「承知致しました」


あれ?桃色の布の巫女の名前は桃じゃなかったか?


「布はきっちり巻いてくれ。儂でもお前達の顔は見分けがつかんのだ。遊び心というやつなのじゃろうがもう少し違う遊びをしてくれ・・・」

「そろそろ土地神さまも見分けがつくようになってください。あの辻井禍築でさえ私達を正確に把握できているのですよ」


禍築のやつ凄いな・・・どうやって見分けてるんだ・・・?

でもなんかあいつが見分けられるって言われてなんかしっくりくる自分も居る


「アレと一緒にするでない!儂はあの助平と違ってお前達の胸をじっくり観察したりせんしそもそもあやつは服の上からスリーサイズを言い当てる化け物だぞ!」


やっぱりそういう・・・なんかいかにも禍築らしくて安心できる理由だ

では、と言って三巫女はどこかへと消えていった。文字通り消えたのだ。


「あの三巫女って人外だったりするんですか?」

「あれらは普通の人間だ。空間移動の魔術がやたらと上手いだけじゃ」


「おーい。結界の緩んだ原因が解ったぞ」


白狐の声が響く。月奈でも分からなかった問題を短時間で解くって相当凄いな


「おぉ、大義であったな。して、理由は?」

「それはあの娘が来てから話す。というかどこ行ったんだ?」

「月奈は風呂に入っておる。このバカが水を浴びせたり鎖で縛ったりしたからな」

「ほー。お前アレとはそういう関係か。本命そっちのけでそういうのは良くないんじゃねぇのか?」

「違うわ!土地神さまもややこしい言い方しないでください!ちょっと喧嘩しただけじゃないですか!」

「おや?儂は事実を述べたまでじゃが?そう捉えるとはなるほど。白狐も童も男子よのぉ」


着物の袖で口元を隠しながらにまにまと土地神さまは笑う。絶対確信犯だ


「さて、ならオレは覗きにでも行こうかねぇ」

「やめとけ。死ぬぞ」

「止めるな童!覗かぬ方が失礼だろうが!」

「お前のそういうところマジで尊敬するけど親友の裸を拝ませる訳にはいかないな!」


白狐に鎖を巻き付け縛り上げる。これで一安心だな。まぁ多分白狐自体本気で覗きに行く気は無かっただろうけど


「そういえば童は風呂は良いのか?自ら水を被ってびしょ濡れじゃが」

「オレが乾かしてやるよ」


白狐が鎖の隙間から尻尾を出し我輩の周りに青白い炎を灯していく


「狐火か。有難い」


青白い炎は暖かく少々冷えてしまった身体を温めてくれる


「なんだよ。ちっとは驚けよ・・・っても宇迦の狐火とか見てりゃこんなもんは遊びも同然か」

「まぁ宇迦様のは山の道全部を照らせるしなぁ。真夜中に帰る時に道全部に狐火着けてくれたし」

「随分と気前のいい物を見せて貰えたんだな。普段なら祭りじゃない限りあれはやらんと言うのに」

「そうなのか・・・?」

「よっぽど機嫌が良かったか童の事が心配なのか・・・全く、オレ達には人間にあまり肩入れするなと言っているというのに」


白狐は呆れながらそう言いながら鎖から抜け出し我輩の横へと腰を下ろす


「ごめんお待たせ!」


月奈が服を新たに戻ってきた。月奈が近くに来て気づいたが虎織と同じシャンプーの匂いがする。口に出すとこれは変態扱いされてもおかしくはないな


「おう。おかえり」

「さっきはごめんね。将鷹に悪気があったわけじゃないのに八つ当たりみたいに喧嘩ふっかけちゃって・・・本当にごめんなさい!」


月奈は我輩の前に立って深く頭を下げた。そんな事しなくてもいいのにとは思うが我輩でも多分そうするだろう


「気にしなくていいよ。我輩の失言であぁなったんだから月奈に非は無いさ。でも、もし月奈の気が済まないって言うなら何か飲み物でも奢ってくれるか?」

「うん!何がいい?ココア?珈琲?おしるこ?」


飲み物のチョイスに我輩の好きな物しか出さないのが凄いな・・・


「じゃあ珈琲で」

「了解!後で用意しておくね!珈琲って言ってもカフェオレの方が好みだったよね?」

「あぁ、よく知ってるな」

「そりゃあ仕事場でいつも息抜きで飲んでる珈琲見ればね」


息抜きにはいつも炭火ミルクと言うやつを飲んでいる。ほろ苦くも甘いなんともいえないバランスで美味しい珈琲、もといカフェオレなのだ


「お前ら、仲がいいのは結構なんだが説明を始めてもいいか?」


白狐があくび混じりに言う


「白狐帰って来たんだ。早かったね」

「オレ気付かれてなかったのか!?」

「ごめん、眼中に無かった」

「ひどい!」


月奈は本当に気づいていなかったようだ。

白狐は我輩の頭の上に乗り口を開く

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