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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第2章不死殺し編
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第14.5幕 其ノ壱 揺られ、心、揺れ

何時もなら眠い路線電車の中、私はアリサちゃんと一緒に仕事場へと向かっている。

今日はどうも眠くならない。理由は簡単、落ち着かないから。アリサちゃんと一緒に居るのが落ち着かないって訳じゃなくて何時も隣で微睡んでいる将鷹が隣に居ないから。

長く一緒に居ると近くに居ないとちょっと不安になってきて心が少し重い。今回の将鷹の任された仕事が危なそうで心配という訳じゃない。

やっぱり少し心配かな・・・でも月奈も居るから怪我をする事はまず無いと思う。

単純に将鷹と離れたくは無いそういう独占欲のような醜いなにかが私の心を重くする。こんなのを将鷹に知られてしまったら重い女って思われちゃうかな・・・


今はそんな気持ちを外を眺めて誤魔化している真っ最中


「虎姉、眠くないの?」


アリサちゃんが私に質問をする。私の事をよく知っているからこそ出てくる疑問なんだろうなぁ。

私は朝が異様に弱いし、寝起きはどうも頭がふわふわしてそのまま眠りにつくことも多々ある。

早起きするのは私が朝ごはんの当番の時で、その日も目覚ましを起床予定時間より2時間くらい早めないとその時間に起きる事が出来ない


「んー、今は大丈夫だよ」

「珍しいね、こうやって朝早く乗り物に乗ってる時に起きてるのは」

「ちょっと考え事しててね」

「お兄ちゃんの事でしょ?」

「ははっ、バレちゃったかぁ。流石アリサちゃんだね」


アリサちゃんとは付き合いとして1年ぐらいになるのかな。

ほとんど家族同然の生活をしていればある程度バレるのは仕方ないし、アリサちゃんは異様に恋愛とかそういう話には聡いから私が将鷹に片想いしているのも気がついているのだろう


「虎姉はお兄ちゃんの事考えてる時は髪留め手に取って見てるか虚ろな目で空とか見てるからわかるよ」

「えっ・・・?そうなの?」


自分では全く気にしていなかった事を指摘されて振り返ってみると確かにそういう事が多いかもしれない


「あとたまにお兄ちゃんに向ける視線が恋する乙女のそれだったり。お兄ちゃんは気付いてないんだけど」

「バレてるかなって思ってたけど本当にバレてた・・・なんか恥ずかしいなぁ・・・」

「そう?人を好きになる事ってそんなに恥ずかしいことじゃないと思うよ?堂々と言っちゃえばいいのに」


正論なんだけど・・・でも・・・


「将鷹は私の事は幼馴染とか家族みたいな感じって思ってるんじゃないかな・・・?それに将鷹は私より雪の方が好きだと思うよ」


将鷹は雪と一緒に居るとよく笑うし刀好きって共通点もあるんだと思う。

それに雪って僕っ子属性で顔立ちもいいし何より服着てる時は分からないけど脱ぐと凄いし・・・将鷹の好きな属性てんこ盛りなんだよね・・・


「確かにお兄ちゃんは雪さんと仲良いよね。でもお兄ちゃんと雪さんの関係って好きは好きでもLIKEの方の好きじゃと思うんよ」


何故ここでエセ広島弁!?と突っ込むべきなのか分からないからスルーして、というかたまにアリサちゃんこうだし


「でも・・・」

「うちがいい事を1つ教えたげるけぇそんな暗い顔せんで。虎姉にはそういう顔は似合わんよ。いや・・・でも、うん。これは・・・うん。これはこれでいいかも」


そう言いながらアリサちゃんはニヤリと笑う。まさかアリサちゃんってSっ気強い感じなのかな・・・?


「まぁそれは置いておいてと。お兄ちゃんは虎姉のその灰色の髪めちゃくちゃ好きみたいじゃよ」

「髪かぁ・・・」


嬉しい様な自分の髪に負けた様な敗北感が同居するちょっと複雑な気持ちになったけど段々嬉しさが勝ってきた


「やっぱりそっちの方が虎姉らしいよ」

「そうかな・・・?」

「うん!いつもお兄ちゃんと一緒に笑ってるイメージがあるからね。最近お兄ちゃんは暗い顔ばっかりじゃったけど。でも虎姉とデートして昨日は大分まともになっちょる。いつもお兄ちゃんを支えてくれてありがとね」

「逆だよ。私が将鷹に支えて貰ってるんだよ」


私独りじゃここまで来れなかった。何処かで心が折れていたか壊れていたかもしれない。これに関しては将鷹だけじゃなくてあの日、将鷹と私を助けてくれた月奈のお陰と言っても過言じゃない


「ふふっ。お兄ちゃんも多分同じ事言うんじゃないかな?お互い支え合える存在っていいね。羨ましい限りだよ」


アリサちゃんは笑いながらそう言った。つられて私も笑う。

聞き取りづらい車掌の声でいつも降りる駅の名前が告げられ、私とアリサちゃんは降りる準備を始める。と言ってもポケットに入れた定期券を手に持つだけなんだけど


私達は電車を降りて将鷹と同じ様に身体を左右に曲げ伸ばしてみた。

うん。確かにこれは今から仕事するかって気持ちになるね。横を見るとアリサちゃんも同じ様に左右に身体曲げ伸ばしている。従兄妹とはいえこういう行動まで似るものなのかな?

もしかしたらアリサちゃんは私の思っている以上にお兄ちゃんっ子なのかもしれない。というか分家の風咲家の家族の絆は硬すぎるんだよね。本家は基本的に皆仲悪いってお父さんから聞いてるんだけど。

確かお父さんが将鷹のお爺さん、風咲幸三郎さんに会いに行った時口喧嘩があってもお爺さんはいつもの事だって笑っていたらしい。

まぁそんな事はどうでもいいんだけどね


「さて、今日の琴葉ちゃんの護衛任務頑張るぞ!」


誰に言うでもなく私は声に出す。外で護衛任務とか言うのは不味いんじゃないのかと思うかもしれないけど風が全ての音をかき消していく


今日が平和な日でありますように

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