表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第2章不死殺し編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/361

第6幕 来客

目覚ましの軽快な音楽と明るい歌声が響き我輩は目を覚ます


「ふぁぁぁ・・・」


目覚ましを止め欠伸を1つ。時刻は朝5時。ふと視界に入ったのはまだ寝ている虎織とアリサだった。

2人を起こさない様に我輩はベッドから降り、静かにベッドを畳む。


「今日の朝飯は何にしようか」


ボソリと呟く。我輩達は交代制で朝食を作っている。そして今日は我輩の番なのだ。

トーストがいいかそれとも和食か。気分的にはどちらでもいい。手間とかを考えるとトーストだが朝はあまり食べないとはいえアリサがお腹を空かせてしまうのではなかろうか?


よし、和食にしよう。

やはり焼き鮭とご飯、味噌汁が定番だろうか。ついでだから卵焼きも作るとしよう。あとほうれん草のおひたしもいいな。


我輩は顔を洗い台所に立ち手際は良くはないが料理を完成させていく。

調味料は基本目分量。感覚で入れていく。


「少し醤油が少ないか。まぁ入れすぎよりはマシだな」



「お兄ちゃんおはよ・・・」

「おはようアリサ」


アリサが起きてきた。

ということは虎織もそろそろ起きてくるか。いや、多分まだだな。虎織も起きてるならアリサと一緒に台所へ来るはずだ。


「虎姉はあと10分って言ってまた寝たんだけど仕事の時間大丈夫?」

「まぁ問題はないか。飯出来上がった時に起こせば十分間に合うしな」


風鈴のような澄んだ音が部屋に響く。来客のようだ。


「アリサ、ちと鮭の焼き具合とか見ててくれ」

「はーい」


アリサに台所をまかせ我輩は玄関へと向かう。

この家にはインターホンというやつがない。有るのは家の前に誰かが来たら音が鳴る魔術式のみだ。

悪意や敵意がなければ風鈴のような音、もしそういう感情を持つ輩なら大きく鈍い鐘のような音が響く。

だが警戒はしておくに越したことはないだろう。


「どちら様で?」


我輩は玄関の前に達尋ねる


「おはよう。私だよ、月奈だよ」


聞き馴染みのある声だった。まだ眠いのか何時もよりも声が低い気がする。


「月奈か。朝早くからどうした?」


引き戸に手をかけ鍵を触る。開いている?おかしい。昨日はきっちり戸締まりしたはずだ・・・

まぁ特に何かあったという訳でもないしそこまで気にする事はないか。単純に我輩の記憶違いの可能性もあるし。

そう思いながら引き戸を開ける。

そこには黒髪を肩まで伸ばした女性、我輩の恩人であり友人である吉音月奈がそこに立っていた。


「おはよう。こんな朝早くにどうした?」

「今日の仕事の資料届けに来たんだ。なるべく早く解決したい事件でね。昨日渡しても良かったんだけど昨日は虎織と2人でデートしてたみたいだし邪魔しちゃ悪いかなって」


随分と気を利かせてくれていたようだ。資料の入ったファイルを我輩に渡し月奈は何かを感じたのかグイッと我輩に顔を近づける。


「昨日、いや、今日かな・・・?狐か何かに化かされた?」

「白い狐の神様は来たぞ。丑三つ時に・・・」

「あのエロ狐・・・!虎織とアリサちゃんは無事!?」

「アリサがセクハラ受けたな」

「まだ居るんでしょ白狐、10秒以内に出てこないと糸で首引っ張って無理矢理表に出てこさせるよ」


月奈が静かに言うと昨日の白い狐が洗面所の方から現れた。まさかこいつ虎織達の朝風呂覗こうとしてたりしないよなぁ?


「おいおい怖いこと言うなよ。俺だってセクハラしたくてしてんじゃねぇよ」


少々呆れ気味な声で白い狐は月奈に言う


「じゃあなんでそういう事するのかな?」


月奈の表情は笑っているが目が怒っている。ぶっちゃけめっちゃ怖いんだけど。


「口が勝手に動いちまってな!考えるより先に言葉になるのさ!」

「神様はそういうの多いけどやっぱりそういうの駄目だと思うんだよね。それにさっきお風呂付近から出てきたよね?覗きでもしようとしてたのかな?そうだとしたら極刑物だよ」


怖い怖い!月奈の目がめちゃくちゃ怖い!端的に言えばハイライトが消えた状態だ。

しかも右手にいつの間にか槍を持っている


「そ、そんなことする訳ないだろう!」


この狐、覗こうとしてたな?

言葉から明らかに動揺が見える


「土地神さまと宇迦様(うかさま)に誓える?」

「すいません覗こうとしました・・・」

「じゃあ罰として今回の事件解決まで力を貸して貰おうか」

「オレのようなまだ中堅クラスの神が人間に肩入れするとか絶対に有ってはならんのはお前もよく知ってるだろ!」

「知ってるけどそうじゃないとちゃんとした罰にはならないから。それに肩入れするんじゃなくて今回は手助けだよ」


ニヤリと黒い笑みをうかべる月奈。今日の月奈は本当に怖い


「屁理屈だな。そんなもの赦される訳がない」

「それでも構わないけどこれが呑めないならこのまま口を縫って置物に戻るか消えるかしか選択肢がないよ」


月奈は語調を強めずただ平坦に白い狐に圧をかけていく。ちなみに我輩も何故か凄い圧を感じている。


「随分と強引ではないか。そんなにも厄介事なのか」

「厄介極まりないよ。失踪者多数に、何故か再び現れ始めた人間モドキ。先代様の件もあるから城ヶ崎が絡んでると見るのがいいかもしれない。あの男は今の私じゃ倒せないから・・・」


珍しく弱気な月奈だ


「わかった。今回はオレが協力してやる。だがその前に今日土地神の所へ行くぞ。この旨を伝えておかなければ後であやつに儂の土地で何やっとんじゃと言われてしまうからな」


そんな月奈を見かねた白い狐はこの件を承諾し今回手を貸してくれるようだ。


「童、景気付けに飯食わせてくれ」

「神様の飯なんて作れないぞ」

「問題ない。今焼いておる鮭1切れでいい。」

「はいはい。分かりましたよ。月奈も一緒に朝ごはん食べるか?」

「うん。迷惑じゃなきゃお邪魔しようかな」


こうして我輩が鮭フレークにして出汁茶漬けで食おうと思っていた予備の鮭が我が家の冷蔵庫から消えたのであった

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ