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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第2章不死殺し編
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第5幕 白狐

ヴァンさんの喫茶店を出たあとは服屋や本屋、CDショップなどを虎織と共に練り歩いた。久しぶりに長距離歩いた気がするな。

今日はよく眠れそうだ・・・風呂や夕食を済ませ我輩はベッドへ潜り込む。多分5分もしないうちに眠ってしまった。



深夜、多分丑三つ時くらいだろうか?我輩は足に痛みを感じ飛び起きる。


こむら返りだ・・・ふくらはぎが痛む。下手に動かしてはいけないがこのままだとさらに痛くなる。

脚を少し動かし楽な所を探すが抵抗虚しく我輩はふくらはぎの痛みに悶える


「なんで急にこうなるかなぁ・・・こむら返りって数時間、ちょっとした痛みが常に来るから嫌いなんだよなぁ・・・」


誰が聞いているでも無く独り言を呟く。


「カッカッカッ。童、お前運動不足なんじゃないか?」

「そんなことはないとは思うんだが・・・って何?幽霊?」


どこからともなく聞き覚えのない声が聞こえる。

ここは我輩の部屋だよな?辺りを見渡し我輩は今自分の部屋に居るというのを確認する。

姿見よし、時計よし、刀よし、我輩の部屋だ。

時計を確認したついでに時刻も見ておいた。時刻はなんと深夜2時ピッタリ。本当に丑三つ時だった。


さて、この聞こえる声はなんだ?我輩の部屋というかこの家には今は亡き爺様が魔除け、悪夢払いの魔術式が張り巡らせている。

効果が切れたというのは考えにくいし・・・


「幽霊とは失礼な。オレは神だぞ」


ちょこんと白い狐が我輩のベッドの上に現れる。


「うわぁ・・・そういうのかぁ・・・」

「露骨に嫌な顔するなよ凹むだろ。神様は繊細なんだぞ」

「神様は間に合ってるんでどうぞお帰りください。あっ、十円玉いるんだっけ・・・」

「狐だからってコックリさんと同一化するな!お前それ宇迦(うか)とかならまだしも荼枳尼(だきに)の前で言ったらぶっ殺されるぞ!」

「あー宇迦様も怒りますよそれ」

「やったんかい!」


白い狐は大声で我輩にツッコミを入れる


「世話になってる神様の嫌がることやるわけないじゃないですか。それと今何時だと思ってます?人間は寝てる時間なんですよ?迷惑だと思わないんですか?」

「急に辛辣!でもごもっとも!」


この狐基本的に声がデカい奴だな・・・?ならせめて昼間に来いよ。それにこむら返りでめちゃくちゃふくらはぎが痛いんだけど


「もう少し声小さくなりませんか。みんな起きちゃうんで」

「あぁ、心配するな!既に皆起きてしまっている!」

「はぁ!?」


襖がゆっくりと開く


「お兄ちゃん。何事?」


金髪に空色の瞳をした少女、アリサが目を擦りあくびをしながら我輩に訪ねる


「うるさくしてごめん。ちょっと厄介な神様が家に入り込んでな」

「神様?月奈さん呼ぶ?」


アリサは至って冷静に最善でそしてもっとも恐ろしい選択肢を提示したのだ。

月奈は神様でさえも殺せる槍を持っている。この神も当たれば一瞬だろうなぁ


「ま、待て、あの小娘だけは勘弁してくれ!槍で小突かれただけでもオレは死んでしまう!それにしても嬢ちゃんいい乳してんなぁ!スタイルも抜群じゃねぇか!しかもパジャマがはだけてやがる!」


慌てふためく自称神の狐。というか後半のアリサへの発言が気になるんだけど。やっぱり月奈呼ぼうか。でも夜中だし寝てるだろな。それを起こすのは宜しくないしそもそも非常識だ。脅し文句で名前を使わせては貰うが。

そしての神に敬語を使うのが馬鹿らしくなってきた


「おいこら変態狐。妹をそんないやらしい目で見るな。マジで月奈呼ぶぞ」

「すみません許してください多少の望みなら叶えますから!」


こいつどんだけ月奈のこと怖がってるんだよ・・・まぁいいや、何かしら理由があってここに来たんだろ


「とりあえずそれは置いといてだ。自称神にしろなんにしろ家に入り込んだって事はなんかあるんだよな?」


さっさと要件聞いてコイツ追い出して寝よ・・・アリサが今にも月奈に連絡しそうだし


「おっと、忘れるところだったな。ほれ。引きこもり太陽女からお前に御守りだ」


白い狐が尻尾を振ると我輩の手元に朱色の御守りが落ちて来た。引きこもり太陽女というと天照大御神だろうか? 神話で天岩戸に引きこもりはしてたけど割とアクティブなんだよなぁ。まぁ面倒だから言わないけど。

手元の御守りには金の刺繍で太陽が象られていた。アマテラスからの御守りに間違いないだろう。


「確かに受け取った。」

「うむ!ではオレは帰るぞ!縁があればまた会おう!」

「あぁ、次は深夜ではなくお昼に来てくれ」

「そうだな!そこの灰色の髪の女子も随分と御立腹のようだしな!」

「えぇ、深夜に起こされてしかも将鷹のベッドに毛玉が乗ってたら怒りますよ」


声のする方を見ると虎織が立っていた。叩き起こされた事に怒っているのだろう目付き悪い、とてつもなく悪い!


「こやつオレの事毛玉とか言いおったぞ!?」

「深夜に訪ねてくる非常識な神様は客人扱いする事もないですし何よりアリサちゃんにセクハラするような中身なら狐として可愛がる事も出来ませんから」


虎織から恐ろしい圧を感じる。漫画とかならゴゴゴゴゴと背景に書かれる程だ。


「こりゃあ恐ろしい!ではさっさと退散するとしよう!」


白い狐はくるりと宙返りするとその場から消えてしまっていた。残っていたのは無数の狐の抜け毛だけだった


「全く・・・騒ぐだけ騒いで帰っちゃったね」


虎織はやれやれと言いながら呆れていた。まぁ神様とは言え傍若無人過ぎるしなぁ


「じゃ、おやすみ。」


虎織は短くそう言ってその場に寝転がり寝てしまった。


「お兄ちゃん、布団出して」

「アリサもここで寝るのか・・・」

「うん。たまにはいいでしょ?」

「まぁいいけど」


我輩は立ち上がりふくらはぎの痛みを思い出してしまった。さっきまでは忘れていたがこむら返りを起こしていたのだった・・・

痛みに耐え布団を敷き虎織を乗せてから我輩もベッドに潜る。


「へっくしゅ!」


狐の抜け毛が鼻腔を刺激してくしゃみが出てきてしまう。朝に抜け毛処理すりゃいいかと思ったがそうもいかないようだ・・・

コロコロ何処に置いたっけ・・・というか粘着シートか・・・この付近ではコロコロで伝わるのだがどうやら他の地方に行くと伝わらないとか


どうでもいい事を考えながら毛玉をとり我輩は眠る

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