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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第2章不死殺し編
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第2幕 1人でいざ狩りに

虎織が戻って来たので我輩達は東雲雑貨を後にし神社へと向かう事にした。久那さんに先代との戦いで消失してしまった妖刀心中の件を話さなくてはならない



「久那さーん」

「はーい。今行きます!」


黒く長い髪を靡かせる女性、久那さんが下駄をカラコロと鳴らし急ぎ足でこちら向かってくる。


「将鷹さん、それに虎織さんこんにちは!」

「こんにちは」


虎織が短く挨拶をしてから我輩も挨拶をして本題を切り出す。


「こんにちは。今日は妖刀心中の件で話をしに来ました」

「菊姫命から大まかな内容は聞いていますよ。大変でしたね。それにすごく覚悟の要る決断だったでしょう。後悔してもしきれぬほどの重い物を背負ってしまった事でしょう・・・」

「怒らないんですか」

「正直いつかはこうなるかもしれないとは思っていました。そう思いながらも渡したのですから私に怒る権利なんてないんですよ。それに砕けて消えたというのなら問題はありません。私はあの刀が悪用されないようにと将鷹さんに渡したのですから」


あぁ、やっぱりか・・・久那さんも


「でもまぁそうですね、怒りはしませんが罰は与えておきます。ちょうどこの付近で黒影が1匹現れているのでそれの討伐をお願いします。それと今回は魔術と体術のみで倒してください」


久那さんは我輩の事を思ってかなかなかな無茶振りをしてきた。しかし、少しだけ気が楽だ


「わかりました」


我輩は頷き山へと歩き出す


「虎織さんはここで待機してくださいね。お話がありますから」

「でも・・・」

「でも?虎織さんは将鷹さんを信用出来ないと?」

「・・・わかりました。将鷹、行ってらっしゃい」

「あぁ、行ってきます」


さて、どうしたものか。短刀は持ち歩いているが使えない。そして今日は羽織がないから拳銃もない。

使えるのは魔術だけだが魔術で倒せるのだろうか?

考えても仕方がない。我輩は我輩なりに戦うしかないな。


歩いて山の中腹まで来た。未だに黒影は見えず手がかりさえない。

どうするか。携帯に着信も何もないという事は黒影の討伐はまだされていない。そもそも戦闘が起きればド派手な音がするだろう。というか今日は奄守(えんじゅ)田都(たみや)の百合コンビだから出くわしたくはない。田都はまだマシだが奄守は2人の時間を邪魔するなと言いながら足元を爆発させるようなやつだし。


考えながら歩いているとガサガサと植物達が揺れ始める。どうやらお出ましのようだ。

現れた黒影は蛇の頭に鹿のような胴体、四肢は狼が如く毛深く爪は鋭い、カマキリのような鎌が首元に生えている。恐ろしく気持ち悪い見た目をしていた。

マジでなんなのこれ。流石にここまで混じったやつは初めて見るぞ。


「さっさと片付けるとしようか」


我輩は独り言を呟き魔術式を展開する。攻撃的な魔術は不得手だが魔術でしか倒せないだろう。

風が吹き黒影の鎌が飛ぶ。ただのかまいたち現象を引き起こすだけの魔術式だがどこかを切り飛ばすにはちょうどいい。

次の魔術式を展開する最中黒影はこちらに向かって火を吐く。コイツも魔術を行使できるようだ。最近こういう変異種が増えたのか・・・?

魔術式を展開し土壁を地面から出現させる。

まるで防空壕に隠れて火炎放射器を避けるような状態か・・・

何故こんな例えをしてしまったのだろうか。あぁ・・・なんだか気分が悪くなってきた・・・



我輩は赤い炎が怖いのか?奏さんの言葉を思い出し考える。何故怖いんだ・・・?熱いから?いや、それなら家で料理も出来ないだろ。分からない。我輩が分からない・・・


考え込んでいるうちに土壁が吹き飛び目の前に黒影が現れ我輩に飛びかかろうとしていた。

咄嗟に魔術式を展開しながら独り言を呟く


「間に合うか・・・?」


あと数cmで噛まれる、魔術式が間一髪起動し目の前で鋭い土の杭が乱立し黒影を串刺しにする。

完全に動きは止まっているがまだ消えていないという事は倒せていない。

今使える最大威力の魔術式を使うしないか。魔力消費が激しいし制御が難しいからあまり使いたくはないが仕方ない。

魔術式を3つ展開すると風が吹き荒ぶ。

風は我輩と黒影の周りを回りながら段々と距離を縮めていきその最中土を巻き上げその土に含まれている砂鉄で鉄の塊を構成していく。


我輩の真横まで風が迫ると鉄の塊は大きくなり、まるで黒い鉄球のようになっていた。

十分殺せる大きさになったしそろそろ頃合かな。

柏手を1つ大きく鳴らすと風は我輩の周りを回るのでは無く空へと上り鉄球は空で静止する。

そして動けない黒影を見つめながら我輩は後ろへと下がり4つ目の魔術式を展開する。


「砲撃準備完了。放て!」


我輩の掛け声と共に鉄球は勢い良く黒影へと飛んでいく。轟音と共に鉄球が地面へとぶつかりクレーターを作り出し、鉄球の形が崩れただの砂鉄へと姿を変える。

黒影はその砂鉄に紛れる様に霧散し消え失せて行った。


「風咲先輩何やってるんですか。非番でしょ。何黒影狩ってるんですか」


茶髪の今風の女の子とでも言うべきか今最も会いたくない仕事場の後輩が後ろに立っていた。


「奄守か・・・ちとこっちの事情で始末してただけだ」

「へぇー。どうでもいいっすわ。せっかく翔子と2人っきりのデートだってのに野郎が居るとか気分悪いんでさっさと帰ってください」

「理由を聞いておいてそれかよ!」

「陽花ちゃん、先輩に失礼だよ」


緑色の髪の女の子、奄守陽花のパートナーである田都翔子が奄守にめっ!っと言いながら窘める


「先輩、すみません・・・陽花ちゃんちょっと今日機嫌悪くて・・・その、出来れば早めにこの場から離れていただければ・・・」


丁寧に言っているがまぁ意味的には奄守と言っていることは大差ない。田都は奄守の手を握り、指を絡めて行く。

このままこの場に居ると食い殺されそうだからさっさと退散するとしよう


「じゃあな」


我輩は一言そう言って魔術式を足場に空へと駆け上がり山を降り神社まで戻る。

最初からこれで登れば早かったなと思いつつ神社の鳥居の前まで帰ってきた。


「おかえり。待ってたよ」

「ただいま。待たせたな」


鳥居の向こうで虎織が待っていてくれた。出迎えてくれるのはやっぱりいいな。頑張ったって感じがする。


「怪我とかはない?疲れてない?」

「ないよ。心配無用ってやつだよ」

「そっか。じゃあ久那さんに挨拶してデートの続きしよ?」


で、デート・・・!?いやまぁ、そう言う表現も女の子の間じゃよくあるもんな!うん!勘違いするな我輩!


「そうだな、次は商店街でも回るとしようか」

「うん!」


我輩と虎織は久那さんに討伐した事を伝えに本殿へと入る


「お疲れ様です。これで心中の件は不問とします。せっかくのデートを邪魔してしまってすみません。これから楽しんでくださいね」


久那さんはにかりと笑い我輩達を見送ってくれた。

太陽は真上に居るから正午ぐらいか。太陽と言えばあの神様元気にしてるのかな・・・

どうでもいい事を考えながら虎織と共に商店街の方へと歩き出す

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