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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第1章 先代鬼姫編
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第3幕 事件発生?

「特に補足する事項はないかしらね」琴葉(ことは)ちゃんは1口お茶を(すす)り、お茶菓子である小さいバームクーヘンに手を伸ばし「今からはお仕事と言うか華姫市全体に関わる話だからよく聞いておいて」


静かに、真剣な面持ちでバームクーヘンの封を切る。


「と言うと?」


我輩はいつになく真剣な琴葉ちゃんを見てただ事ではないのだろうと推測する。

黒影が大量発生でもするのだろうか?

それとも街中で何かあったのだろうか?


琴葉ちゃんは1口サイズのバームクーヘンを口に放り込み、味わってからお茶を飲む。

至福と言わんばかりに頬が緩んでいたが食べ終わってから先程の真剣な面持ちへと戻る


「先代様が生きてるかもしれないわ。確固たる証拠はまだないのだけれども市民の目撃情報とか解像度は悪いけど写真も撮れてるわ」


そう言って琴葉ちゃんは手元に置いてあった資料類から1枚の写真を取り出し我輩達の手元に置く。


先代様、先代鬼姫である和煎仄(わせんほのか)である。死んだ人間が生き返るか・・・正直な所有り得ない話じゃないし、もしも本当に生き返っていると言うのなら早めにこの事態を片付けなければ・・・


「結構遠くから撮ったみたいだね。ちなみにこれは誰が撮った写真か分かったりする?」


虎織(とらおり)は目を細め写真をながめながら写真の提供者を問う。ズーム最大で撮影したのだろう。写真はもはやドット絵と言っていいほど画質が悪い


日々喜(ひびき)よ。城付近の店の屋根から撮ったものらしいわ」

「なるほど。日々喜ちゃん的にはこの人は本物の先代様なのかな?」


虎織が上を向くと天井に黒髪の女性が立っていた。


「本物ですかね。(かんざし)の造形、綺麗な白髪、佇まいどれをとっても先代様と言ってもいいと思います」


天井に立っている女性、黒鉄(くろがね)日々喜(ひびき)はそう言うと共に天井から足を離しくるりと半回転してから地面に降り立つ。

正直この部屋のどこかには居るとは思っていたがまさか真上とは・・・


「あの、その人は・・・?」


アリサが唖然とした顔で日々喜を見る。そりゃそうなるわ。

てかそもそもアリサはさっきからの先代様の話置いてけぼりくらってるのでは?


「申し遅れました。わたしは黒鉄日々喜。琴葉様の身辺(しんぺん)警護(けいご)およびお世話をしております。平たくいえば・・・都合のいい奴隷でしょうか?」


日々喜は恐ろしい冗談を真顔で放つ。


「えっ・・・琴葉ちゃんそういう趣味が・・・?いや、うちがとやかく言うのはあれなんだけど・・・」


日々喜さんが真顔で言うからアリサが真に受けてしまった。まぁ仕方ないね!


「違うの!日々喜は普通に身辺警護してくれてるだけよ!奴隷だなんて思ったことも無いし!」


凄い勢いで琴葉ちゃんはアリサの誤解を解こうとしている。ここで日々喜を責めない辺り琴葉ちゃんらしい。


「ははは、冗談ですよアンダーソンさん。そこまで真に受けるとは。」


遊びがいがありますねと小声で一言・・・


「日々喜さん、アリサで遊ばないでくださいよ。」

「おや、聞こえてましたか。それは置いておいて脱線した話を戻しましょうか」


誰が脱線させたと思っているんだと言いたいが早く話を進める為に言わないことにする


「その写真は昨日の亥の刻に白鷺城の門付近を撮ったものです。あまり近づくと気配などでバレますので画質が悪くなっています」


亥の刻というと21時から23時だったはずだ。時間感覚ざっくりし過ぎではなかろうか


「結論から申しますとわたしから見た彼女は100パーセント仄様です。」


日々喜さんが断言するなら本物なのだろう。何せ、日々喜さんは先代様に拾われ育てられたのだ。


数年間とは言え毎日顔を合わせていたのだろうし間違う事などあるのだろうか?きっとこの人は恩人の顔を忘れはしないだろうし間違う事もない。


「そう。ならここからは先代様が本物という仮定で話を進めるわ。将鷹(しょうよう)、虎織、貴方達は彼女の目的とどうして今になって現れたのか。それを調べてちょうだい。あと町を歩いて情報収集するのならアリサもつれて歩くように」

「了解。それでお仕事は今日から取り掛かればいいのかな?」


虎織が右側にいつもつけている蒼い髪留めを触りながら言う。これは何かが不安や心配な時にする仕草だ。付き合いが長いからこそ分かることなのだがどうすればいいかは全く分からない・・・


「出来れば今夜から取り掛かってくれるかしら?」

「なら、午後は聞き込み兼ねてちと散歩してくるよ。書類はある程度は片してるから残りは頼む。」


我輩は虎織の手をとり立ち上がる。気分転換に散歩をしよう。小声でそう言うと虎織がこくりと頷く。昔から何かあったら一緒に散歩をしながら他愛もない話をして気を紛らわしたものだ。


「アリサちゃんも散歩着いてきてね」


立ち上がった虎織が笑いながらアリサに声をかけたが当の本人は思考が追いついて来ていないようで少しキョトンとしてから「うん」と返事を立ち上がったその時、バタン!と勢いよくドアが開くき禍築(まがつき)が血相を変えてこう言った


黒縄山(こくじょうさん)に黒影が出現しました!数は5、急ぎ対処を!」


タイミングが悪過ぎる。しかも数がいつもより2匹ほど多いのが最悪すぎる。


「申し訳ないけど2人ともそっちの仕事を優先してちょうだい。桜花(おうか)さんも呼んでおくから現地で合流して人里に降りる前に狩りなさい。」


琴葉ちゃんもタイミングが悪いと言わんばかりに不機嫌な顔をしていた。


(とび)さん呼んどいてくれよ。時間が惜しいし」

「えぇ、呼んでおくわ」

「それじゃ、行ってきます」


こうして我輩と虎織、それとアリサは黒影が跋扈(ばっこ)する山へと向かう事になった

占いってやっぱり当たるもんだな・・・

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