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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第1章 先代鬼姫編
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第32幕 最後の戦い

「終わったのか・・・これで良かったんだよな・・・」


久野宮さんの死を見て本当にこれで良かったのだろうか、もっとなにかあったのではないかと。しかし進んでしまった道を後悔しても仕方ない。

心中を渡す時に覚悟があるかと問うた自分が覚悟が無かったとは笑い話にもならない


「将鷹。気を落とさないで。久野宮さんは自分の意思でアレを使ったんだから」


そんな声を掛けてくれたのは月奈だった。優しい言葉ではあるが今はそっとしておいて欲しいと身勝手にも思ってしまう。


「それでも我輩が久野宮さんを殺した事に変わりはない」

「すぐネガティブになるのは将鷹の悪い所だよね。まぁ将鷹らしいっちゃらしいけど。でもね、久野宮さんを殺したと思うなら前を向いてそれを背負って前を向いて」

「月奈、今はそっとしておいてあげて」


月奈の言葉を遮る様に虎織が言う。

顔に出ていたのかそれとも長年一緒に居るからそこら辺が分かってしまったのか・・・


「もしかしてお節介だったかな・・・?」


困ったという様な顔で月奈は我輩の顔を覗き込む。


「気にしないでくれ。しばらくすれば少しは気も晴れるから」


ふと胸騒ぎがした。臨戦態勢を崩すな。直感がそういう。

その時だった


「全員気を緩めるな!まだアレの気配が残っているぞ!」


菊姫命が声を張り上げる。さらに付近にあった塵が集まり1つの形を作り固まる

それは人間の骨格、理科室に置いてあるような骸骨そのものだった。

骸骨は口を動かすが声などあるはずもなくただカタカタと骨がぶつかる音のみが響く


「気味が悪いな。だがアイツ自身神としての位はかなり低くなってやがるから今のうちに倒すのがいいかもしれないぞ」


菊姫命は井戸の上に座ったまま動かずそう言った。

神は必要以上に特定の人間に加担しないだったか。まぁそれは例外が多いルールな訳だが。


「菊姫命、広い所まで連れて行ってくれますか?」

「願いを叶えてやってもいいがまた酒持ってこいよ。俺の死んだ井戸があるとこでいいか?あと連れて行けるのはあの神とお前と虎織だけだ」

「虎織、付き合ってくれるか?」

「もちろん!将鷹と私は一蓮托生だからね!」

「それじゃ菊姫命、頼みます」


菊姫命は柏手を打ち井戸を我輩の影から現出させる。

あの名無しの神がまだ存在しているのなら我輩が責任を持って屠るのが我輩なりのケジメだ。虎織も巻き込んでしまうのは申し訳ないが・・・


「井戸を使った移動、俺しか出来ない井動ってやつを見せてやるよ!」


骸骨は井戸へと引き摺り込まれ、我輩と虎織も井戸へと入る。

一瞬視界が暗転しそして月明かりが見える。

気づけば白鷺城の敷地内にあるお菊井戸の真横に立っていた。


「よし、ここなら刀も存分に振るえるな」


袖から虎徹を引き抜き、正眼に構え立つ。


「そうだね。ここからは私達2人だけで神様を倒さないとだけど」

「我輩達2人なら不可能はない!」

「一緒に討ち取るよ!」


虎織が霞の構えをした瞬間に我輩は走り出し骸骨へと一撃を加えに行く


我輩が骸骨の目の前まで来た瞬間に我輩は後ろへと跳ね退き、虎織は跳ねるように骸骨との距離を詰める


「椿流、()の番、已己巳己(いこみき)!」


已己巳己は肩、太腿、右胸、頭の4箇所を瞬時に突く技だ。椿流の中で体得が難しく我輩はこれを使えない。

そもそも人間離れした速さがないと使えない様な技なのだ。虎織に教えてもらおうとしたが内緒と笑って返されたものだ。

骸骨の腕が上がり七支刀を顕現させたのを見て我輩は虎織のお腹に鎖を巻き付け引っ張り我輩が前へと出る。


「椿流、奥義が1つ・・・」


我輩は骸骨の頭を掴み、鎖で骸骨の身動きを封じる。

それと同時に虎織が風で作った壁を2つ用意し、柏手を打つ。


壁を足で蹴り壁に骸骨をぶつけながら2つの壁を交互に蹴り、空へと駆け上がる


(やぐら)落とし!」


我輩は空から勢いよく落下しながら骸骨の鎖を解き地面へと骸骨を叩きつける。


「まだなにか足りないな」


落下の勢いを殺し、ふわりと地面へと着地する。

この技はまだ我輩の中では未完成なのだ。先生のはもっと地面にクレーターができるほどの威力だったが我輩の一撃はただ骨を飛び散らせるだけしか出来なかった


「確かに先生のよりは威力出てないよね」

「威力が全てとは言わないけどやっぱり物足りないんだよなぁ」


カタカタカタカタカタ。骨が当たる音がする。

音のする方向を見ると飛び散った骨が形を成し七支刀を構え立っていた。

流石しぶとい。そもそもさっきので倒せるとは思ってないしな


骸骨が七支刀を振り上げた瞬間、七支刀はひび割れ始め砕け散り、骸骨は崩れるように元あった塵へと戻った。


「さっきの櫓落としが効いたのかな?」

「それならいいんだけどな」


井戸からひょこりと菊姫命が顔を出す。


「お前らおつかれ。さっきまでいた神の気配一切無くなったぞ。多分その七支刀が本体だったのかもしれないな」


どうやら呆気なく、だが大きな犠牲を払いながら名無しの神を討ち取り1つの事件が幕を閉じることになった。

しかし、まだこの事件は分かっていない事が多い為幕引きとは言えないのかもしれない。

先代に化けて久野宮さんを華姫の外へと追いやった者、久野宮さんに化けて先代を殺した者。

まだ名前の分かっていない拾弐本刀の1人、それに左右偽陰という者の存在。


そして城ヶ崎が先代を被検体3号と呼んでいた辺りまだ城ヶ崎は手駒を持っているのだろう。

左右偽陰と城ヶ崎に繋がりはあるのだろうか。

考えていると眠気が襲ってきた。少し目を閉じよう。


我輩は微睡み深い眠りへと落ちていった

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