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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第6章 華姫祭編

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第17幕 欠点

 虎織との手合わせを終え、汗をぬぐっていると近衛がこちらを見て口を開く。その様はまるで遊園地に来た子供のような無邪気さとでもいうのだろうか?楽しそうに、待ちきれないというように。


 「なぁ、俺とも手合わせしねェか?」

 「今日はパス、流石に虎織との激戦の後に近衛とやりあうのはオーバーワーク過ぎるんだよ……てか今日はもう三人と戦ってるんだぜ?」

 「あ?あぁ、本家で揉めたか。あと一人は?」

 「雪だ」

 「刀鍛冶か。アイツ戦えんのか?」

 「対策されてたとはいえ魔術アリで完敗だった……」

 「そりゃ斬りやすい刃物とか作れるワケだ。納得した」

 「てなワケでこれ以上の手合わせは勘弁願いたい」

 「じゃあ将鷹と私、二人で剣薙さんの相手するのは?」


 虎織が台所から冷えたお茶を持って縁側へ帰ってきてそう言った。

 

 「お、いいなそれ。たまには多対一やっとかねェと訛っちまうしな。何よりお前ら二人ならウォーミングアップ無しで思いっきり、加減無しでやれるだろ?」

 「……虎織が一緒ならいいか。流石に我輩一人じゃ勝てないけど、虎織となら圧勝だろ」

 「言ったな?」

 「あぁ、言った!」

 「じゃあさっさと構えろ」


 近衛は楽しそうにどこからか持ってきたサーベルを二本引き抜き、一本は前に突き出し、もう一本は掲げるように高く構える。この構え方、我輩がさっき使った構えか……  


 「なぁ近衛、そのサーベルって初めて見るけどどこで仕入れたんだ?」

 「美術館で贋作認定されたヤツを俺が買い取った」

 「マジかよ……強度とか大丈夫だろうな……」

 「心配の必要はねェよ。一回の手合わせで折れる程じゃない、はずだ」

 「ちょっと怖いけど手を抜ける相手でも無いし……加減はしないからな」

 「どうせお前寸止めできんだから問題ねェだろ」


 会話中も一切構えがブレない、あの構え腕を斜め上に上げたままだから疲れるし腕ぷるぷるするんだよなぁ……やっぱコイツすごいな。

 感心しながらも白虎を抜き正眼で構えて虎織の方に視線を移す。虎織は姿勢を低くして霞の構えで横目でこちらを見て我輩の動きを待っている。なら、我輩から動くとしますか。一つ頷くと虎織も頷く。

 我輩と近衛の手合わせは試合開始の合図なんてない、お互い構えたらその時点で始まる。

 地面を蹴り正眼のまま、切っ先を近衛に向けて突っ込む。 近衛は前に出したサーベルで切っ先を逸らそうとする。それとほぼ同時に上に振り上げたサーベルが我輩に向かって空を走る。一人なら防御なりなんなりしに行かないといけないが虎織が居る。予想通り虎織が迫るサーベルを受け止め、火花が散り鉄のぶつかる音が響く。

 少し遅れて我輩の刀と近衛のサーベルがぶつかる。あまりにもパワーが違う、サーベルの背で巻き上げられ、我輩の刀と腕が持ち上がる。これは想定していた。

 体勢が崩れて後ろに倒れそうになった瞬間、力を込めて身体と共に刃を前へと振り下ろしサーベルにぶち当てる。鉄のぶつかる音が響いた瞬間刃を引く。迎撃しようとした近衛の刃は空を切るのを確認してから近衛の足元に足を滑り込ませる。


 「虎織!」

 「任せて!」


 掛け声と共に虎織が近衛の刃を押し返す。一瞬近衛が驚いたように目を丸くする。その隙に足を引っ掛けようとしてみたがすぐに気づかれ脚を上げ、そのままバックステップで距離を空けられ対処されてしまう。我輩と虎織は刀を構え直し近衛の動きを見る。


「まさか押し返されるとは思ってなかったがおもしれェ!」


 ニヤリと笑い近衛は我輩の方へ距離を詰め斬りかかる。右からの横薙ぎは刃で弾き、次に来る上からの攻撃は柄頭で受ける。

 

「やっぱお前のその対応力、おもしれェ!」


 近衛はさっきと同じ構えをしてから突き出した刃を縦に振り身体を捻りながら掲げられた刃の一撃に体重を乗せ斬りかかってくる。

 最初の一撃ですら腕が痺れる。次に迫る一撃を防ぐのはキツい……かと言って今から後ろに跳び退くのは手遅れ……でも。

 火花が散る。虎織の刃が重たい一撃を受け止めてくれた。今なら近衛の隙をつける。刃を突き出し近衛の首元へと切っ先を向ける。


「流石にお前ら二人相手だと呆気なくやられちまうか」

「まぁ我輩と虎織だしな」

「えへへへ」

「でもよ、まだまだ息が合ってねェんじゃねェか?少なくとも俺にはそう見えた。お互い遠慮がちっていうかお互いの強味を活かしきれてないな」

「もう少し詳しく教えてもらっても?」

「そうだな、その前に二人に質問だ。まず将鷹、なんで真っ正面に刀構えた?」


 近衛は鋭い視線を我輩に向ける。ただ単純に目つきが悪いからそう見えるだけで声のトーンはいつも通りだ。粗探しして指摘してやろうなんてことも無い。

 

「正眼なら虎織に合わせやすいからな」

「なら虎織、なんで将鷹に先陣切らせた?」

「将鷹に合わせる為かな」

「やっぱお互い合わせることしか考えてねェってワケだ。お互い尊重すンのはいいけどよ、戦いにおいてはどちらかが多少なりとも我を通していいとは思うが。特にさっきの初手、虎織が先に突きなりなんなりで防御取らせて将鷹が横から斬ればそれで終わりだった」

「なるほど……確かに言われてみればそうか」


 的確な指摘だ。あの場面ならそうするべきだったかもしれないな。

 

「それに将鷹は突っ込んで来るなら得意な八相で強気に攻めるべきだな。合わせて貰えるなら一番自分にあった得意技で攻めるべきだ」

「やっぱ近衛の言うことは勉強になるな……」

「戦ったからこそ見える欠点ってモンだ。俺の今言った事は参考程度、ああだこうだとは言ったが状況によっちゃさっきのお前らが正しい場面だってある。そこは忘れンなよ」


 何となくバツが悪そうに近衛は最後に我輩達をフォローしてくれる。近衛の気遣いだろう。和ませるためになんか言っとくか、そう思って口から出たものは明日の朝食当番の話だった。

 

「そうだな。てか勝負には我輩達が勝ったから明日の朝飯当番近衛な!!」

「ま、元からそのつもりだったしかまわねェよ。そもそも明日の当番俺だしな」

「賭けで勝ってたら誰かにパスできるし負けてもそのまま、運良ければ他の賭けに負けたヤツに回せるワケだ……ズルくない!?」

「賭けってのは如何にリスクを小さくするかだ」

「ごもっとも……!」


 次の日の朝は何故かタコスだった。やたらと気合いが入ってる……まぁ近衛の作る飯はだいたいは気合い入ってるんだけど……

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