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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第6章 華姫祭編

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第16幕 ぶつかる刃

「今日は真剣使って手合わせにしないー?」


 帰ってきて縁側で涼んでいる時、私は将鷹に軽くそう言った。今まで真剣を使っての手合わせなんてしてこなかったけど剣薙さんとの手合わせに慣れてる。

 なんていうか、ちょっとした嫉妬だ。どんどん将鷹だけ強くなってるし私との手合わせだけじゃここまで強くなれなかったと思う。それに私とは楽しそうであっても剣薙さんに向けるような真っ直ぐな眼をしてくれない。

 

「いきなりだなぁ……まぁいいけどさ、どうしたんだ?」

「たまには木刀以外も使いたいなってだけだよー。特に蛮歌は木刀じゃ再現もできないし何より重さがないからね」


 蛮歌を使いたいっていうのも本音ではあるんだけどね。それに木刀じゃ緊張感も薄れて来ちゃったし。

 

「あの鉄板か、それもそうだな。じゃあ今日も本気でやんないとだな」

「気を抜いたら怪我しちゃうからねー」


 部屋に戻ってから汚れてもいい服に着替えて獲物を携え庭に向かう。虎徹を腰に差して背中には蛮歌。最初は少し重いかなとか思ってた蛮歌の重さも気にならない。

 先に用意のできていた将鷹はジャージに羽織り、腰に二本、鞘は両方同じ、柄糸は黒と紺。風切と白虎だ。流石に飾ってる虎徹は持って来ないよね。振るなって言われてるし……

 羽織を着てるから短刀もどこかで使ってくるかもしれない。手の内を知ってるからこそどれを使ってくるか解らない、その手札の多さが厄介なんだよね。

  

「おっ、面白そうなのが始まりそうじゃねェか。明日の朝飯当番でも賭けるか?」


 剣薙さんと彌守ちゃんが縁側にやってきた。多分戦いの雰囲気みたいなの嗅ぎつけて来たみたいな感じかな。そして自然と賭けをアリサちゃんとかに持ちかけてるし!?

 

「虎姉が勝つにウチは賭けるかな」

「なら俺は将鷹に賭けとくか」

「私もさっきー!」

「お前は賭けても仕方ないだろ……」

「勝負事に賭けはつきものよねぇ。麻緒さんはどっちだと思う?」

「女の子の方から並々ならぬやる気を感じるからそっち」

「確かに今日の虎織はいつも以上にやる気あるわね……じゃあ将鷹に」

「出揃った事だしお兄ちゃん達も準備いい?」

「こういう勝負で賭けして欲しくないんだけどなぁ!でも期待されてんならやるしかねぇな!我輩は準備いいぞ!」


 将鷹はいつもみたいに刀を八相で構えて私をまっすぐ見る。黒の柄糸、長めの刀身、風切だね。いつもより鋭い眼、本気で対峙するとこういう眼するんだ……隣からじゃ見れない眼、まだ知らない将鷹が目の前に居る。

 

「私もいいよ。全身全霊、ぶつかりにいくからね」


 蛮歌の布を解いて正眼で構えてアリサちゃんの合図を待ちながら考える。先制攻撃するかそれとも待ってカウンターを狙うか、どうせなら真正面からぶつかろう。八相は防御には向かない構えだし崩すならそこからだね。


「それじゃ、はじめ!」


 合図と共に蛮歌の背を肩に乗せ、体勢を低くして距離を詰める。将鷹もこっちと同じ考えだったらしく距離を詰めてくる。ただ、私と将鷹とで違いはあった。私は地面を蹴って走る、将鷹はひとっ跳びで距離を詰めて来た。

 ちょっと驚いたけど空に居るなら好都合、蛮歌の重さとか考慮して空中から体重乗せた攻撃するつもりだったんだろうけど空じゃ身動きは取れない。手首を曲げて蛮歌を肩から降ろして地面を削りながら斬りあげる。

 それに対して将鷹は蛮歌の平らな部分を刀で叩いて蛮歌と自分の軌道を変えて着地する。それと同時にすごい勢いで私の方へ体勢を低くして跳んで来きた。

 普通ならここで決着だっただろうけど蛮歌ならまだあの攻撃を防げる。蛮歌をニ刀に分割して片方を迎撃のために無理矢理振るう。火花が一瞬散って将鷹と私の距離がまた開く。


「流石に対応してくるか……!」

「木刀の時とは戦闘スタイル違うからびっくりしたよ」

「木刀だと重さが無くてさ、ちょっと取り回しがなぁ」

「そうだったんだ」


 お互い一瞬手を止め、会話をする。将鷹は楽しそうに笑いながら話してくれる。でもそんな時間もすぐに終わる。将鷹がまっすぐ、正眼で切っ先をこちらに向ける。それに合わせて私も蛮歌を一つに戻して同じく正眼で構えて待つ。

 静かな睨み合いは数秒、風の音と共に将鷹が動く。ジリジリと少しずつ間合いを詰め始める。間合いはこっちが有利だし、なにか考えがあって間合いを調整しているんだと思う。

 そろそろ私の間合い、ここで踏み出す?いや、動いちゃだめだ。将鷹がバックステップで避けられて振った瞬間を狙われる可能性だってある。

 将鷹の足を見て踏み出した瞬間、蛮歌を構え直して袈裟斬りを行う。踏み出してしまった隙からバックステップするにはギリギリ間に合わない、将鷹が取れる行動は防御ぐらい。

 将鷹は刀身を斜めにして一撃目を防いだ。でも、蛮歌は二撃目も叩き込める。振るう瞬間に二刀に分けてしまえばタイミングがズレて不意の二撃目が襲う。防ぎはされたけど上から押さえつける形の鍔迫り合いになる。こうなれば将鷹の動きは抑制できる。


「ぐっ……!まさか分割してたとは思わなかった……」

「そうだろうね、私も最近思いついた新技だし!」


 鍔迫り合いの中会話を交わしながら少しだけ体重を乗せて圧をかける。その瞬間、将鷹の手が風切から離れて蛮歌が地面について私の体勢が少し崩れた。でも、問題無い、次の一撃入れに来るにしてももう少し時間がかかるはず。

 構え直す時間くらいはある、そう思っていた。風を切る音と共に白虎に手をかけた将鷹が間合いを詰めてくる。蛮歌を持ったままじゃ対応できない。私も蛮歌を離して虎徹を抜刀して応戦するしかなった。将鷹の袈裟斬りを弾いて二撃目の逆袈裟も弾く。一瞬の隙、今なら突きが通る。

 切っ先を突き出した瞬間に気付いた、気付いてしまった。将鷹の口角が上がってる……これはちょっと焦り過ぎちゃったか……

 突きはバックステップで避けられ、ついでというように手を離した風切の鍔の穴に白虎の切っ先を引っ掛けて回収されてしまった。まだ二刀流はモノにできてないとはいえ手数を増やされるのは厄介……片方仕舞ってはくれないよねぇ……


「まさか突きを誘ってくるとは思わなかった……!」

「流石にあのまま撃ち合ってたら我輩が負けるからなぁ……アレも上手くいっただけだし」

「そっか。そろそろ決着つけないとヤバそうだね……」

「そうだな。楽しいけどこれ以上は流石にお互い熱くなりすぎそうだし、何より決着つけられないかもしれないしな」


 将鷹は風切を右手で前に突き出し、白虎を左手で角度をつけた八相に近い形で構える。初めて見るけど見覚えのある構え、二天一流の構えのアレンジ?今はこの既視感を気にしない方がいい。

 私は一番得意な霞の構えで将鷹をまっすぐ見る。身体を低く、私のできる最高速で将鷹へと突っ込む。

 

「椿我流、業喰改、理心無明剣!」


 一突き目は前に出された風切に軌道を変えられる。その瞬間刃を引き戻しすぐに二突き目を繰り出す。さっきの風切を振った遠心力を活かして将鷹は白虎での袈裟斬りで刀の軌道を変えながら勝負をつけに来た。

 思い出した。最初の構えは二天一流の構えじゃなくて椿流の源流、タイ捨流の手を前に出して牽制と片手での切りつけができるヤツだ。そりゃ見覚えあるよね。このままじゃ私の負け、でも、どうせなら引き分けには持っていきたい、その一心で刀同士がぶつかる前に刀を引き戻して将鷹の刀を避けるように三突き目を出して首元で止める。将鷹の刀も私の首元で止まる。


「勝負あり、引き分けじゃな」


 アリサちゃんが手合わせの終了を宣言する。何とか引き分けに持ち込めて良かった……

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