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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第6章 華姫祭編
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第14幕 隠し扉

 変わらない廊下に見知らぬ鷹と龍の水墨画。数ある(ふすま)の一つをおっちゃんが開く。黒檀(こくたん)の仏壇がぽつんと一つど真ん中にあるだけの和室だった。

 仏壇の扉を開くと写真があるワケでもない、あるのは達筆というか我輩には読めない小さな掛け軸、(りん)とその台、蝋燭(ろうそく)。なんというか本当に必要最低限だ。


「おっちゃん、マッチって引き出しに入ってる?」

「それ鳴らしゃ火ぃつくからマッチなんぞいらんぞ」

「ハイテクというか味気ないというか……」

「親父が面倒くさがりやったからな」

「そんなにだっけ」

「お前は知らんやろな、親父は俺が子供の頃は休みは寝てるか飯食ってるか、仕事も適当にこなして帰ってくるみたいなもんだったからな」

「マジか……想像できねぇ……」

「やろな、お前ら産まれてからは真面目言うんはちょっと違うかもやけどそれなりに魔術道具作ったり魔術式の研究しよったからな」

「なんか転機があったとかそういうのか……」


 会話を切るようにおっちゃんが仏壇の鈴を鳴らす。見た目からは想像できないような重厚な音、これは鈴というより……


「ドラ!?」


 我輩より先に虎織がツッコミを入れた。あまりにもドラだった。しかも結構デカイ音の。

 

「運がいいな。一パーセント引いたぞ」

「ソシャゲのガチャか何かかよ!?」

「十回くらい鳴らしたろか?」


 そう言っておっちゃんは鈴の形をした何かを高速で叩いていく。色んな音混ざって解りにくいんだけど!?

 

「まとも!トライアングル!鉄琴!鉄琴!ビブラスラップ!?ティンパニー!?ドラム!ドラ!ドラ!バグパイプ!!??」


 虎織が音全部言い当てた……!というか打楽器だけだと思ったけどなんでバグパイプの音が鳴るんだよ!?管楽器だろあれ!?しかもなんでこれだけちゃんとスコットランドザブレイブが演奏されるんだよ!?まだ鳴ってるのは何!?どういう仕組み!?


「三分以内に十一回叩くとコレが鳴るようになっとる。どこの国の曲か知らんがおもろいよな。何で鈴から笛の音すんねんってな」

「他の音が鳴るとこもツッコミ所じゃ……普通の鈴からはチーンって音しか鳴らんのよ……」


 アリサもめちゃくちゃ困惑してるじゃん……関西とエセ広島のミックスみたいになってる……

 

「親父の趣味とセンスは解らんわ。ただおもろい事が好きなんはよーわかるわ」

「せやなー」


 もう一度おっちゃんが鈴を鳴らすと普通の音が鳴った。目を瞑って手を合わせる。

 残響が聞こえなくなったところで目を開けて立ち上がる。さて、こっからが本題だな。


「案内頼むわ」


 そう言った瞬間、アリサが目を細め口を開く。

 

「お兄ちゃん、多分この部屋に何かあるよ……」

「マジ?いや、確かにこんだけ広い和室に仏壇だけってのは怪しいけどさ、おっちゃんなんかあんのこの部屋?」

「いや、ワシの記憶ではここには無かったとは思うんやが……」

「そっか。アリサ、なんとなーくでどこら辺か解るか?」

「仏壇の後ろ辺りかな……」

「オッケー。じゃあこの付近の畳か、なっ!」


 仏壇の後ろの畳を強めに踏みつけると畳が三つ、藁を落としながら直立する。下には床下収納のような扉がつけられていた。爺ちゃんこういうの好きだよなぁ……我輩も好きだけどさ。


「さっすがアリサ!ビンゴ!」

「ほんとにあるとは思ってなかったけぇウチもびっくりじゃ……」

「なんぞ!?ワシ調べた時そんなギミックなかったぞ!?そもそも何の変哲もない畳やろそれ!?」

「一箇所をきっちり踏まないと作動しない仕掛けだったんだろな」

「畳の(ふち)に仕掛けあるとかわからんわ……縁踏むとかせんからな……」

「なんか制約的な?」

「境界は踏むな、昔はそう教えられてきたんでな」

「へぇ……なるほど、それなら納得だわ。とりあえず開けてもいいか?」


 多分爺様はそこを利用したんだろな……おっちゃんに開かせるのを躊躇ったのか?それとも違う意図なのか、いや、そもそも爺様なんも考えてないかもしれないな……

 

「えぇぞ。魔術道具は入っとらんはずやが何かしらあるかもしれんからな」

「そんじゃ遠慮なく」


 鉄製の取っ手に手をかけ扉を開く。中身は、真っ黒。とにかく黒い。暗いと表現するべきかもしれない。携帯のライトを当てて見ると梯子はあれどそれ以外見えない。


「梯子以外なんにも見えないねー」

「下降りるにも何あるか解らないから探索はまた今度の方がいいかもな」

「ならお前らいつ休みや?」

「おっ、まさか待ってもらえるとは思ってなかった」

「人手はあった方がえぇやろうからな。それに変な番人でもおったらかなわんからな……」

「あーそれは確かに。じゃ、三日後都合つけれる?」

「わかった。空けとく」

「そんじゃこっちはそん時、隠し部屋の扉の方連れてってくれる?」

「こっちや」


 おっちゃんに連れられまた襖の多い廊下と部屋を進んでいく。廊下だけならまだしもたまに部屋入って右に左に、とにかくややこしい……!


「ここや」


 しばらくぐるぐるしてやっと着いた部屋はフローリングに洋風な部屋。この家的に似合わない部屋ではあるし奥の扉には鎖とおっちゃんの言っていた特殊な鍵があった。話の通りの長方形……なんか適当な木箱で開きそうなんだけどな……


「おっちゃん、これ長方形の木箱かなんか作ってはめたら開くんじゃない……?」

「やってない思うか?」

「だよなぁ……」


 考え込んでいるとアリサが鍵穴を見ながら何か呟いていた。心当たりがあるのかたまに鍵穴を指で枠を作ってそれを半分の大きさに縮めてみたりと色々としている。


「アリサ、何か心当たりでも?」

「いやーウチにはさっぱりじゃー」


 アリサは必死に解らないなぁという顔をしてはいるがこれ解ってるな……後で聞くべきかどうかだな。


「なら鎖ごと斬ったりするのはどうかなー?」


 虎織はそう言って腰に差している虎徹に手をかけて腰を低くする。


「斬れたら既に斬っとる」

「じゃあやっぱり鍵探すしかないかー」

「そうだな。今からじゃ遅いし三日後に探索ついでに鍵探すかぁ」

「そか、ならメシはどうするんや?食うてくか?」

「気持ちはありがたいけど今日はみんなで食べようと思っててな」

「そかそか。じゃあ三日後やな」

「じゃ、玄関まで案内よろしく」


 こうしてまたややこしい道のりを経て玄関に戻ってきた。そしておっちゃんに別れを告げ竹林を抜ける。帰りは問題無くまっすぐ短い道だ。良かった……


「ふたりとも、晩御飯何がいい?」

「本家の近くならウチお好み焼きがえぇんじゃけど虎姉大丈夫?」

「いいよー!アレでしょ?将鷹がたまに話してる昔よく食べてたお好み焼き屋さん!」

「そうそう!その店じゃ!」

「なら行くかー!」


 さて、そうは言ったものの財布の中身が怖いからとりあえずコンビニ寄ってから店行くか……

 店でアリサから色々と聞かせてもらうとしようかな。

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