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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第6章 華姫祭編

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第11幕 交渉決裂

「なんでそんな判断をしたか聞いても?」

「簡単や。今後に備えて風咲本家の守りを固める。そっちの蔵に入っとる天穿ツ弓やら無間の鍵、変わらずの銀板他にも色々と必要になるわけや」

「守りを固めるって……何処と戦う気ですか」

「決まっとろう。左右偽陰(そうぎいん)、知っとるやろ?なんせお前らが()うた奴や」

「極秘事項だと思ってたんだけど何で知ってるんですかねぇ?」


 どっから情報仕入れたのやら……対策課から漏れるなんてことは無いだろうから他部署にパイプがあるワケなんだけど全く見当つかない。

 そこはまぁ置いとくとして蔵の中全部は困るけど適当に中身が紛失したってちょろまかして渡せばいい気もする。全部使うってワケじゃないし。ただ十の願い事だけは手放せないから交渉必須か。

 

「簡単や、風咲本家はお前らの持っとる情報は全部把握しとる。もちろん、お前がお前の父親と対峙して逃げられた事もな」


 一瞬袖から刀を出しかけた。一向にこれだけは、花影(はなかげ)と親子と言われるのだけは一瞬で頭に血が上ってしまう。悪い癖なのは解ってるけどこれだけはどうしようもない。アレと同族扱いされるのがたまらなく不快で不愉快だ。

 

「おーこわっ。人殺せん癖していっちょ前に人殺しの眼なんぞしおって。しかしまぁわからんでもないがな。ワシから見てもあれが少しでも親戚やったいうのが最悪な気分や」

「風咲ご当主様、僭越ながら一言よろしいですか?」


 虎織がかしこまった口調で静かに言う。

 

「あぁ、えぇぞ。しかしまぁ雪城家のご当主サマがワシに一言とはなぁ?」

「今の私は雪城家当主ではなく風咲将鷹の付き添い人でしかありませんよ。そして、言いたい事は将鷹に嫌がらせするならここで切り捨てます。それだけです」

「ほー、言うやんけ。コイツのどこがえぇんやか。ほんで将鷹、お前は親父の蔵を相続した身や一応聞いといたろ。こっちに大人しく蔵の中身全部渡すか、奪われるか、どっちがえぇんや?」


 クソみたいな二択だなぁ!?もう渡す気失せた!やるなら徹底的にやってやろうじゃねぇか。

 

「あー……そういう言い方されると渡す気失せましたわ。我輩にも多少なりともプライドっていうかそういうのありますし、多少ちょろまかしてある程度のモン渡そうかなとか思ってましたけど、鐚銭(びたせん)一文いや、道具の塵すら渡す気はありません!」

「一応お前にも聞いといたる、アリサ、蔵の魔術道具を本家にもって来んか?」

「お兄ちゃんが渡さん言うたらウチの意見もおんなじじゃ。それにおっちゃんの言い方が気に入らん!」

「ほな交渉決裂やな。力づくではい言わせたるわ」

「やるしかないならこっちも本気でやらせてもらいます。言っときますけど引くなら今のうち、おっちゃんがどんだけ強かろうと怪我はしますからね?」

「お前みたいな青二才が俺に怪我させれる思うなよ。さっさ刀抜いたらどうや?」


 おっちゃんはそう言いながらどこからか現れた銀の鞘に納まった刀を取り出し居合抜きをするかのように手をかけ姿勢を低くする。

 我輩は袖の魔術式に手を入れグリップを握りながらリボルバー、ラッシュを引き抜き撃鉄を起こして構える。

 

「おいおいそりゃせこいんとちゃうか?」

「はぁ……流石に爺ちゃんの遺してくれたモンに手をだそうってんなら容赦の必要はありませんしさっき言いましたよね。怪我するって」


 銃身を少し下に向けて引き金を引く。響く轟音と煙を吐く銃口。確かに弾は放たれた。だが標的は傷もなくただ刃を鞘に納める。弾丸を斬られた。早すぎる居合、正直眼では黒い何かが見えただけだった。


「なんや、弾斬るいうのも簡単なもんやな。飛び道具使って剣士に勝てんとか笑うしかないわな」

「確かに笑うしかないですわ」


 明らかな煽り、逆上して間合いに踏み込んだ時点で斬られるんだろうな。解りきった手を使われると何か裏があると感じる。だが間合いに飛び込む方が確実に危ないのは明白、ならどうする?弾丸は斬られる。しかも普通の弾丸じゃなくガンケースと同じタングステンと同じ強度の弾丸。つまり、それよりやばい硬度の刃、それか一番相手をしたくない刃。なんであれ近付くのは悪手でしかない。


「でも、諦めは悪いんでね。アリサ、デザートイーグル貸してくれるか?」


 少し離れた場所にいるアリサに声をかける。今はデザートイーグルに入っている弾丸が必要だと感じた。

 

「お兄ちゃん、受け取って!」


 空を舞う大型の黒い銃とそのマガジン。両方を受け取り手早くセットとコッキングを行う。チャンバーチェックなんてやってる暇はない。構えて横の竹林に銃口を向けて引き金を引く。いつもよりも火薬量の多い薬莢を使っている銃に耐えられず腕が跳ね上がる。


「どこ撃っとんねん。それに扱い慣れとらんみたいやな」

「ここですよ」


 煽るような笑顔で右手で指鉄砲を作り、人差し指でこめかみを指す。意図に気付いたおっちゃんはすぐに刀を振り抜く。竹に当たり跳弾したゴム弾がおっちゃんの頭目掛けて飛来する。ゴム弾を斬る一瞬、きっちりとその刀身を捉えられた。刀を抜かなくて良かった、そう思わざるをえない。

 真っ黒な、しかしどこか鉱石のような光を放つ刃、爺様が好んで使っていたと提督が教えてくれたなんでも切り裂ける刃、黒転だ。

 しかし我輩が使った黒転と大きく違う点がある。それは刀身が鉄ではなくそのまま黒曜石で形成され、折れる事もなく弾丸を切り裂き、さらには一回切ればダメになると言われていた黒転を二回も振るっている。

 高速の抜刀と斬れ味が落ちず壊れない黒転、あまりにも相性が悪い相手だな……

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