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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第6章 華姫祭編
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第10幕 呼び出し

「お兄ちゃん!大変じゃ!」


 家に帰ると金髪に空色の目、整った顔立ちの我輩の従妹、アリサが電話の受話器を置いてから走って我輩と虎織を出迎えてくれる。

 かなりの焦り様からただ事ではないのは察しがつくが一体どんな厄介事なのか……


「どうした……?」

「本家からうちらに呼び出しかかった……!おっちゃんめっちゃ機嫌悪ぅてすぐ来いって言うちょる!」

「えぇ……!?なんかやらかしたか……!?」

「解らん……!」


 風咲本家現当主、風咲國重から直々にお呼び出しとは正直驚きだ。爺様が死んでからあの人と会話する事などなかった。お互い不干渉、なんなら本家に集まるのも爺様が死んで以降声も掛かっていない。そういえば集まりもこの時期だったな。まさかそれか……?でもそれなら事前に連絡なりなんなりあっただろうに。


「とりあえず行くしかない。虎織、留守を頼んだ」

「私も……って言いたいとこだけど話拗れるか……」

「……やっぱ一緒に行こう。虎織が居てくれた方が心強い。近衛ー!居るかー?」

「ンだよ騒がしい」


 壁がくるりと回り隠し部屋から白髪の目つきの悪い男、剣薙近衛が出てくる。

 

「悪いんだけど今日の晩飯みんなに各自で食ってくれって伝えといて貰えるか?」

「わーッた。お前らは」

「今からちょっとウチの本家に顔出しに行かなきゃでな……」

「そうか。気をつけて行ってこいよ」

「おう。じゃあ行ってくる」

「てらー」


 三人とも急ぎ足で竹林を抜ける。そして路面電車の停留所まで走り息を整えて電車へと乗り込む。久しく使ってない停留所、何時もとは違う方向へと景色は進む。

 

「今更なんだけどホントに私居てもいいの?」

「本当に今更だなぁ……我輩達だけで来いとは言われてないし。それに何かあったら我輩とアリサだけじゃどうにもなんないかもしれないしな」

「そうじゃー。それにそのうち風咲家の名字になるんじゃけぇ屁理屈は通るじゃろ?」

「それもそうだな。筋さえ通せばおっちゃんもどうのこうの言わないだろうし」

「それで通るんだ……」

「そりゃ家族だからな」


 しばらく他愛もない話をして目的の停留所を待つ。会話の中でも何故呼ばれたのかという疑問は払拭はされず宙に浮いたまま漂ってはいるが直接聞けば解る話だ。

 電車を降り停留所から少し進むと我輩の住む家の前にあるのと似たような竹林が現れる。これも多分爺様が外敵避けで作ったモノだろう。

 竹林へと足を踏み入れる。するとさっきまで見えていた正面の出口が消えた。どうやら歓迎されてないらしい……

 しかも踏み入れた途端二人とはぐれた。もしかしたら二人はそのまま出られたのかもしれない、というかそうであって欲しい。

 魔術式の解析は自分の家のでやってるしもし同じモノかつアップデートされてないなら抜けるのは簡単、まぁ対策されてたら出る手段を模索しないとだけど。

 太い竹に足をかけ、つま先に体重を乗せ、空へ向かい竹を足場に走り出す。空はひたすらに遠く竹も終わりが見えない、上から抜けるのは対策済か。それなら、入った時に出口が見えた反対側、入口であろう方に竹を蹴って跳ぶ。

 竹がしなり予想より加速が付いた。そして竹林から抜け出したのを確認する。本来なら竹より高い場所に来ている状況だったがあの竹林は範囲内に居ればあの竹林の思うがまま彷徨うことになる。突破手段は空から竹林を無視して直進する事!これも対策されてたらどうしようもない。最短で行くなら力技で突き進むしかなくなる。

 空に足場となる魔術式を置き、跳んでいる勢いのままその魔術式を蹴って風を切って竹林の上を通り抜け、竹林の出口から少し離れた所に降り立つ。

 出口では心配そうに竹林の出口を見る虎織とアリサが居た。


「ごめん、心配かけた」

「うぇっ!?後ろ!?」

「お兄ちゃん!?どうやって……ってかなんで後ろから?」

「入口からカッ跳んできた!」

「ほぉ……そないな手あるんやったらもう少し考えなアカンな」

「意外と簡単だったし……おっちゃん!?」


 白髪混じりの顔の堀が深い男性、我輩の叔父でありこの風咲本家の当主、風咲國重が竹林の方へと歩いてきた。

 

「久しいな。親父死んでからやから八年振りかいな」

「お久しぶりです。随分と機嫌悪く電話されていたと聞いておりますが?」

「あー?機嫌悪ぅ……あぁ、電話出たんアリサやったな。悪いなぁ俺の使うこっちの言葉は汚いけん電話越しやとキレとるみたいに聞こえる時あるだけや」 

「でもいてこますとか……」

「おーっと、ちょいそれはダメちゃいますか?」

「しゃーないやろお前ら縁切りみたいに電話番号変えよってからに」

「変えてないですが?」

「はぁ!?んなわけあるかいな!こっちとら毎年毎年かける度ちゃうとこに繋がんねんぞ!?」

「電話機壊れてるんじゃ……」

「親父が作ったもんやぞ?壊れる訳ないやろ」

「爺様への信頼が強い……!てか爺様が作ったってんなら三十年くらい前のやつでは?」

「せやな。もうそんくらいになる」

「魔術式あるとはいえ……ごめんなさい。全面的にこっちが悪いです……!」


 魔術式を介した電話はこっちの電話には繋がらない……!そういう魔術式を爺様が施してたの忘れてた!!

 

「せやろせやろ!どうせなんか変なモン入らんようにプロテクトかなんか掛けとんやろ!……いや、それが普通やな……」


 アンタまで冷静になるんかい!とツッコミを入れたかったんだけど流石にやめといた。めんどくさいからね。


「で、今回何かしらの要因で繋がったと」

「スマホにしてな。こっからなら着拒されとんやったらかいくぐれるおもてな。そんで繋がらんかったら諦めや」

「なるほど……それで要件は」

「親父の魔術道具、お前ん所にあるの全部こっちの蔵に移す。これは風咲本家の当主の決定や。拒否は許さん。それにお前が普段持ち歩いとる十の願い事もな」


 厄介なことになったな……蔵の魔術道具はこっちも仕事で持ち出すこと有るし本家置きになると不便だし勝手に持っていけないしで困る……

 かと言ってこっちが反論しようが多分この人は意見を曲げない。何より厄介なのは我輩が十の願い事を持ってるのバレてるし魔術道具のだいたいの所在把握しているであろう事だ……

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