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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第6章 華姫祭編
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第9幕 対面

「琴葉ちゃん、魔女さん連れてきたぞー」

「あれ?将鷹と虎織帰ってきたんだ」


 対策課に入ると共にそういうと月奈が和とゲームしながらこちらを向く。それと共に和が叫ぶ。

 

「なんでよそ見した所狙ったのに的確にカウンターしてくるんだよぉ!?」

「カウンター技置いてから目を離すに決まってるじゃん。

 受付け長いからねコレ」

「ずるいっすよ!ってか直帰するじゃなかったんすか先輩」

「ま、お客様連れて帰って来たからな。あと予定より早く調査終わったら勤務時間内で書類片さないと後が大変だからな」

「書類っすか……」

「そういう和は進んでるのか?」

「見ての通り現実逃避中っすよ。吉音先輩は今日分終わったらしいっすけど」


 和はゲーム機を片手で持ち上げて横に降る。月奈はもう終わってるってやっぱすごいな……我輩の分も手伝ってくれないかな……

 

「私は計画的だからね。二、三日休んでも間に合うくらいかな」

「流石対策課きっての優等生兼仕事ができる人……!」


 書類も調査完璧にこなせるし黒影でも人間相手でもかなり強いし頼りになりすぎるんだよなぁ……欠点はまぁ、怒るとブレーキ壊れるぐらいか……

 

「将鷹ー、お喋りより魔女さん連れてくのが先だよー」

「おぉ、そうだな」


 魔女さんに対策課の中に入ってきてもらい市長室へと向かう。一応ノックはして入るか。

 

「あの人が魔女……?思ったよりぽわぽわしてないっすか?」


 和は小声で言ったつもりだろうけど聞こえてるぞ……!まぁ当の魔女さんは物珍しそうに対策課を見回して聞こえてないっぽいけどさ。

 ノックしても返事ないな……寝てないよな……?寝てても問題はないんだけど起こすの気が引けるだよなぁ。

 もう一度ノックしたけど返事は無い。二回ノックしたし入るか。


「琴葉ちゃーん?」


 市長室に入るとヘッドホンをつけて書類仕事をしている琴葉ちゃんがそこにいた。寝てるんじゃないかとか思ってごめん……


「あら?二人とも戻ってきたのね。それに……麻緒さん……?」


 琴葉ちゃんがびっくりしたというように立ち上がりながらヘッドホンを外す。そして魔女さんを見た瞬間に手に持ったヘッドホンを呆気に取られたように落とし嬉しそうに涙を浮かべて頬を緩める。

 

「誰?」


 その一言で琴葉ちゃんの表情が再会の嬉しさから困惑へと変わり、瞳を潤ませた涙の意味が変わる。

 

「……覚えてない?昔遊んで貰った琴葉」

「ごめん、懐かしい気はするけど気がするだけ。今の私は貴方とは初対面よ」


 魔女さんは淡々とそう答える。どちらも嘘を言っていないのがとてつもなくタチが悪い。琴葉ちゃんは魂の輪郭と色が見える、だからこの魔女さんは古二階麻緒さんで間違いはない。そして古二階さんの声からは困惑と引け目を感じる。

 

「そう……それじゃあお名前は……?」

「……今は無いわ」


 やっぱりあの時名前を聞いても答えなかったのは答えられなかったからか……死にたくないが故に魔法で自らの名前も記憶も焚べてしまったのだろう。いや、自分から進んで名前を捨ててしまったのかもしれないな……


「じゃあ今は古二階麻緒と名乗って貰ってもいいかしら……?その、名前が無いと困るから……」

「……そ、そうね。仕方ないから古二階麻緒と名乗ってあげるわ」


 ぎこちない会話が続く。一応危険人物ってワケじゃないとは言え二人っきりにするには不安要素が多い。二人っきりにしたい気持ちはあるんだけどな……


「虎織、琴葉ちゃんの事頼んだ。我輩はお茶淹れてくる」

「任されたよー」


 虎織に琴葉ちゃんの事を任せて我輩は市長室を出て客用の紙コップと自分たちのコップを出してお盆に乗せ、急須に茶葉を入れてウォーターサーバーの熱湯を注いで蓋をする。


「先輩がお茶淹れてんの新鮮っすね。いっつも珈琲ばっかりじゃないっすか」


 和がキーボードを叩きながらそんな声を我輩にかけてくる。

 

「そんなに珈琲のイメージあるか?結構お茶とか紅茶の日もある気がするんだけど」

「一日一回は珈琲でしょ。ほかのはたまにって感じっすから」

「意外にも見られてんだなぁ」

「先輩達の背中を見て後輩は成長するってモンですよ。お陰でギャンブルとかそういうの以外の遊びも覚えちゃったんすけどね」


 随分といい方に転がってくれたもんだ。最初は心配だったがもう心配の必要は無いかもしれない。

 

「善きかな良きかな。随分と角も取れたけど頼りにもなるようになってきたし先輩としては嬉しい限りだ。なぁ月奈」

「そうだね。研鑽は必要だけど最初の生意気なクソガキからは随分マシ、口の利き方も良くなったし及第点かな」

「手厳しい評価っすね……」

「最低限高校卒業前の将鷹より強くなってもらわないと花丸はあげられないってだけだよ」

「先輩、どんぐらいの強さだったんすか?」

「刀はそこそこ、本気出せば黒影四匹一気に相手できるくらいかな」

「無理ゲー!」

「大丈夫、高校卒業前の将鷹は今より随分と弱かったから!私相手に七分持てば頑張ってる方だったし」

「な、七分……!?」

「逃げて不意打ちしてたからな……」

「汚い!先輩思った以上に戦法が汚い!」

「椿流の気質が薄まって来た今じゃ考えられないよね。使えるものは全部使うし闇討ちだろうが確実に仕留められるなら良し、そういう剣だったし」

「好んでそういう手使わないだけで今も必要ならやるけどな」

「そんな戦法使う相手なんて早々出て来そうにないだろうけどね。剣薙さんと遊ぶようになってから剣術の技量上がりまくりだしさ」

「アイツの剣からは色々学べるとこあるからな」

「へぇ……一回稽古つけて「悪いこと言わないからやめとけ……!死ぬぞ……?」

「そんなに!?」


 マジで死ぬ。アイツは多分真剣普通に使うし思わぬ動作で事故って斬られる可能性もあるしな……


「近衛には勝負挑まない方がいいぞ。っとそろそろお茶もではじめた頃だし市長室に戻るとするか」


 雑談はここまでと打ち切り各々自らの作業に戻っていく。我輩は市長室に戻りお茶を淹れてみんなに配り虎織と共に市長室のソファで話している琴葉ちゃんと古二階さんを眺める。二人ともなんだか打ち解けているように見えてきた。記憶はなくとも二人を繋いだなにかがそうさせているんだろうとかちょっとロマンチックな事を考えたり。

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