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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第6章 華姫祭編

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第4幕 厄介事

 「あー……やっと終わったぁ……腰いてぇ……」


 何とか剥がした辺りのレンガの敷き直しと道具の片付けが終わった。時間はだいたいお昼前か。お昼からは散歩、というより無法区の見回りかな?


 「お疲れ様ー。思ったより早く終わったねー」


 虎織と雪が水道で軽く顔を洗ってこちらに戻ってくる。首にタオルを掛けているからか運動部の部活終わりみたいな感じだ。


 「二人が手伝ってくれたからな。ありがとな」

 「いいよいいよ。僕も新人君が帰ってくるまで暇だったし」

 「私も書類仕事疲れたしたまにはこういうのも悪くないかなって」

 「何はともあれ助かった」

 「にしても将鷹のあの地面剥がしって結構簡単にやってるけどどういう原理なの?僕も採掘とかで楽かなってやろうとした事あったけど壁作るの無理だったし」

 「あれは魔術式二個使ってるからな。まずは地面を隆起、剥がす魔術式を使ってる引っ張るだろ?」

 「うん」

 「そこにギュッと土を固める魔術式を使ってやると……できるんだ」


 危うく地面をまた剥がすところだった……もう直すのは嫌だからな……


 「今一瞬剥がして実演しようとしてなかった!?」

 「危なかったけどセーフ!」

 「流石に二回目は手伝わないからねー」

 「我輩ももう直すのは嫌だわ。これ敷いてくれた人達には感謝だ……」

 「だねー。そういえばこの後どうする?散歩行く?」

 「書類を区切りいいとこまでやって無法区の散歩かな」

 「なら着いていかないと、だねー。お目付け役なわけだし」

 「風咲先輩ー!俺のお客さんってどこに……そのオレンジ髪の人?」


 どうやら(かず)月奈(つきな)が帰ってきたみたいだ。二回の窓から金髪に黒のメッシュを入れた男、和が顔を出して雪の方に目線をやる。あれ?初対面だっけ?でも雪は和の戦闘スタイルを見て薙刀用意したんだよな……?


 「すぐ上行くから対策課で待ってろー」

 「了解っす!」

 「初対面だったっけ……?」

 「うん。見てたと言っても通りがかった時に木の上からね!」


 なるほど……それでか。よくよく考えたら雪が我輩と和の手合わせ見てた事なんて記憶上存在していない。それにしても木の上!?


 「木の上ってなんでそんなとこに?」

 「僕の身長的にちゃんと見るなら木の上とかの方がいいからね。それに俯瞰のほうが見えないものもあるからさ」

 「それでか」


 我輩達は話ながら対策課の部屋へと向かう。しかし雪には驚かされる事が多い。一回手合わせ見ただけで和の戦いの癖とかそういうのを見抜くとか凄すぎる。

 階段を上ると黒髪ロングの眼鏡をかけた女性、経理課の神代(かみしろ)が立っていた。


 「うわっ……」


 思わず顔を顰めて声を出してしまう。絶対めんどくさいじゃん。レンガ剥がしたりもしたし……


 「あまり外部の方を役所内連れ回すのは関心しませんよ。機密情報も多い役所なのはおわかりですか?」

 「ごもっともなんですが雪は協力者ですしご容赦いただきたい」

 「たかが鍛冶屋の小娘が協力者?笑わせないでください」

 「たかが?雪の刃物とか見た事ないんでしょうね……」

 「ありますよ?あなたのヘボ刀がそうでしょう?」

 「なんだとてめぇ!?」


 こいつ雪の刀バカにしやがった!!今すぐぶん殴ってやろうか!?

 脚を半歩前に出した瞬間、雪の手が我輩の前に出されて動きを止めざるを得ない。


 「はいストップ。煽り合いに付き合う必要はないよ。この人の言ってる事は正しいよ。僕は正式な職員じゃないからね。ただまぁ、僕の刀をヘボ刀呼ばわりするのは誹謗中傷だよね?関心しないなぁ。華姫市を守る機関の人間が市民を愚弄して、守るのに必要な武器にケチつけるなんてさ」


 そう言いながら雪はポケットから役所の黒影対策課所属のネームカードを取り出して神代に見せる。持ってたんだそれ……


 「これでいいよね?人事課と資料課から正式に発行してもらったやつ」

 「……失礼しました」


 神代はそう言って階段を降りて経理課の方へと向かっていった。


 「ごめんね雪。あぁいう人で私たちの事目の敵にして噛み付いてくるんだ……」

 「そういう人も居るから仕方ないよ。ま、あの人のおかげで臨時役員証発行して貰えたんだけどね」


 虎織の謝罪に雪は笑顔で返す。


 「まさかネームカード持ってるなんて思わなかったよー」

 「人事課の胡蝶(こちょう)さんが出入り多いとめんどくさいのに絡まれるからって作ってくれたんだ」


 胡蝶蘭丸(こちょうらんまる)、人事課の課長兼会議のまとめ役の人だ。頭はキレるし仕事は早い、出来ないのは戦闘と料理だけ、そう言われるくらいには優秀な人だ。


 「蘭丸のおっちゃんが……意外、では無いか。あの人も神代にはあんまりいい印象持ってなかったし」

 「まぁ会議でヒステリックになることも多いからねぇ……」


 対策課の扉を開け中に入ると月奈と和が携帯ゲームをやっている。仕事中だぞー?と茶化そうかと思ったが我輩達も人の事を言える立場では無い。それと黒影討伐後だし遊んでても別に問題ないしな。


 「よっし!私勝ちぃ!」

 「吉音先輩、ハメ技は狡いっすよ!」

 「どうせ今しか見れない、堪能出来ないコンボだしじっくり食らっておきなよ」

 「なにやってんの……」

 「将鷹もどう?今日発売の格ゲー」

 「いや、我輩はいいや。てか今日発売って事は黒影倒した後買いに行ってたな!?」

 「いやー吉音先輩がどうしてもっていうから、それにほら、楽しいって聞いたらやりたくなるじゃないっすか」

 「それはそうなんだけどな……って、待て!?月奈、お前速攻でハメ技を!?」

 「二回やって一回目で繋がりそうだなぁっておもったら繋がって、そこから十割行けちゃっただけ」

 「理不尽!?」

 「あっ、それで俺宛の荷物って?」

 「はい、黒影対策課の仲間入りおめでとう。僕は東雲雪、刀工と雑貨の加工やってる協力者とでも覚えておいてね」


 雪が布に包まれた箱を部屋の角から持ってきて自己紹介しながら和に渡す。


 「結城和です。宜しくお願いします。これ開けても?」

 「どうぞ。君に合った武器が入ってるよ」


 和が布を解き箱を空けると赤い柄に金色の装飾が入った薙刀が姿を現す。刃には革っぽい鞘が被せられ、それを取ると真っ白な刃が輝く。


 「薙刀……?」

 「今の君の戦い方ならこれが最適かなって。まぁこだわる必要はないけど使ってみて」

 「ありがとうございます!!」


 和は頭を下げ雪に礼を言う。少し前の和からは考えられない姿に成長を感じながら自分の席に戻り資料に目を通しながら机に置いてある珈琲に手を伸ばす。

 炭酸の抜けたコーラだった……どうやら琴葉ちゃんのイタズラらしい。後でお説教だな。

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