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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第5章 国無シ島編
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第45幕 彼の魔術

 「チェックメイト・・・そういうのは詰ませてから言うんだな!」


 忠定はそう言って笑う。苦し紛れのハッタリなんかじゃない。絶対的自信から来る笑いだ


 「ここに何も仕掛けてないと思ったか!?先に俺はこの場に居た。そして時間はたっぷりあった!!チェックをかけていたのはお前じゃない、俺の方だ。爆ぜろ轟雷!」


 身を焦がすような雷撃が四方八方から飛んでくる。避けるのは無理、確実に殺せるようにとこれはお手上げだ。避けも防ぎも出来ない


 「っぁ・・・!」


 雷撃が直撃して熱さとヒリつく痛みで声が出ない、そしてそのまま自分の身体が言うことを聞かず水面に倒れ込む。感電死はしなかったけど水面に触れているところが特に熱い。冷たい水面のはずなのに・・・息をするのもヒリヒリする。それに立てるかというとキツイ。立ち上がらないといけない。そんな思いとは裏腹に身体は言うことを聞かない。

 ここで終わり?終わっていいのか?自分に問いかける。

 答えなんて解ってる。否!虎織に会えなくなるのは嫌だ!

 虎吉さんにも死ぬほど電撃貰ったことあるんだ。ちょっとくらい耐性なりなんなりあってもいいだろうが・・・!どうでもいい理屈であっても今はソレを信じて思い込め!大丈夫!立てる!食らいつける!


 「おぉぉぉお!」


 気合いの雄叫びと共に立ち上がる。忠定は驚いたように、心底信じられないものを見る目でこちらを見つめて口を開けている。

 もうここまで来たら短期決戦、決め切れる技は思いつかない。と言いたい所だけど一つ、大技が今なら使えるかもしれない。我輩(アイツ)に出来て我輩に出来ないワケがない。

 若干痺れている腕で袖から風切を引き抜きヒリつく喉などお構い無しにその銘を叫ぶ


 「大倶利伽羅!!」


 鈍色を蒼炎が燃やし本来の刀身が姿を現す。

 刀身の蒼炎が少しだけ傷を癒してくれたのか痛みは少しだけ収まった


 「流石に人の道外れかけてないか?」

 「だとしても我輩はここで負けて終わりなんて嫌だ!虎織に行ってきますも言わずに出てきたんだ・・・!絶対にお前に勝って帰ってやる!」


 斬りかかってくる忠定を直感的に去なし、脳をフル回転させながら再現に必要な魔術式を組み合わせていく。

 アイツ程の規模は出せないし威力も出ないだろう。でも、やるしかない。

 我輩は熱い外気を大きく吸い込み、彼の魔術式の名を叫び即興の魔術式を使う


 「庭炎(ていえん)!彼岸花!!」


 我輩を中心にまばらに炎の彼岸花が咲き誇りそれに忠定が触れた瞬間業火が花開く。放射状に広がる炎の柱が天に登りながら燃え盛る。

 アザーズの継承時にここで戦った、あったかもしれない可能性の我輩、その一人が使った切り札にあたる魔術式だ。

 避け切れなかったのか少し(すす)を纏い忠定は足元の彼岸花に気を取られていた


 「まさかこんなのまで使ってくるとはな・・・」

 「悪いけどこっからは死にものぐるいで倒しに行かせてもらう」


 死にかけだしな。魔術はまだ使える。アドレナリンが出ているのか痛みは和らいでいる今のうちに決着をつけないといけない。

 袖から導火線のある竹筒を五本取り出すと同時に火をつけて放り投げる


 「どうせ何本かはブラフか閃光筒だろ!?なら爆発より速く斬ればいい!」


 足元の彼岸花を避けながら忠定はこちらに近付いて来る


 「全部ただの竹筒だ」


 片手で忠定の一太刀を受け止め片手で竹筒と共に取り出していた鉄粉と雪から貰った投げるための使い捨てナイフ三本を魔術式を込めて一本を手に握ったまま残りを落とす


 「連火!錬鉄!」


 魔術式が三つ連なり炎を吐き出しナイフを溶かす。西園寺さんが見せた魔術式を通すことで火力の上がる技の応用、魔術式から零れた鉄粉が火の粉となり舞う。我輩の次の手を見てまずいと思ったのか忠定は後ろに跳び退く


 「連火!炎壁!」


 忠定が跳び退く先にある彼岸花を媒介に炎の壁を作る。同時並行で燃やしている魔術式を水を汲み上げるものに変え熱い鉄を冷やし不格好な一振を作りあげ風と舞い散った鉄粉で刃を研ぐ。

 忠定は跳び退く距離を無理やり縮め、水面に着地する


 「クソっ!彼岸花を触媒に好きな炎の魔術式が使えるのか!!」


 その言葉に否定も肯定もしない。

 この沈黙すらも必要な駆け引きだ。そして炎の壁の後ろで轟音と炎を揺らす爆風。吹き飛ばされる形で、ヤケになったかのように忠定は刀を構えてこちらに向かって飛んで来る。我輩は魔術式を一つ起動させてからさっき作った不格好な一振を振るう。

 忠定の横薙ぎの一振、そして我輩の全身を使う水面に刃を叩きつける一振が交差する。火花なんて散らないし鉄のぶつかる音もしない


 「は?」


 忠定の間の抜けた理解出来ないという声が響く。

 刀とぶつかって止まるはずの身体がそのままの勢いで通過する。それどころか鉄を斬った感覚すらない。当たり前だ。だって忠定の一振は空振ったのだから。正確には当たりはしたがあまりにも抵抗なく刃が通ってしまったのだ。魔術式で赤熱した不格好な刃は持ち手となったナイフともう一本分の長さになっている。もう一本はさっき振った時に忠定の虎徹の鎬にくっついている


 「鉄を熱して・・・!?」


 そう、元々の材質なら忠定の思惑通りだっただろう。だがさっき、熱で溶かした時に鉄粉を混ぜて少し脆く、そして繋ぎ目は溶けやすくしてある。

 身体を大きく動かして刀を振ったのもこのため、いや、正確には次の手の布石。赤熱した刃は水面に触れ、冷えて黒く染まる。それと同時に忠定の足を引っ掛け水面に倒し、黒く染まった刃を忠定に突き立てる


 「がはっ・・・まさかあそこから逆転されるとか・・・情けねぇ・・・」

 「我輩の勝ちだ・・・」

 「あぁ。完璧に詰められた。流体化も無理、下手に動いたら彼岸花、それに決めきれなかった時のために袖に鎖・・・おおよそ逃げられた瞬間に鎖使って櫓落としでもする気だったんだろう?」

 「正解」


 気が抜けて身体が水面に倒れ込む。もう身体が動きたくないって言っている。目を閉じると倒れた感覚だったのが座っている感覚に変わる。身体のヒリつく痛みもない。

 目を開けると桜花さんが心配そうにしていた


 「少彦名命様!目を開けました!」

 「うむ。風咲将鷹、立ち上がれ」


 少彦名命様の言葉通り立ち上がると少彦名命様が我輩の前に立ち鋭いボディブローが我輩を襲う


 「ごはっ・・・!?な、なんでぇ!?」


 我輩は意味が解らないままそこに蹲るしか無かった

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