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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第1章 先代鬼姫編

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第28幕 赤鬼

「赤鬼・・・さしずめ仄様の中の鬼か」

「厄介事が増える一方ですね。どうにかならないもんですかね・・・?」

「俺が何とかしてやろうか?」


聞き覚えのある女性の声、昨日聞いたばかりの声だ。


「菊姫命、どうにかできるなら頼みます」


声の主、菊姫命にお願いをすると我輩の影から井戸が現れた。

そこから腕組をした菊姫命がゆっくりとドヤ顔で上がってきた。

我輩が特撮好きなのを知ってのこの登場のしかたなのだろう。神は神でもそれはネタ枠兼便利な感じの神なんだよなぁとは思ったがツッコミはしない


「おうよ。5分やるからそれまでに赤鬼は処理しろよ。あと月奈、その気色悪い符術士は逃しとけ、お前も手伝わないと5分じゃ終わらないだろうからな」


菊姫命は腕を横に大きく振る。すると鬼に縄が巻き付き動きを止めた。多分だがあの縄は長くは持たないだろう。


「でも・・・」


月奈は口篭る。

間髪入れず菊姫命は言葉を紡ぐ


「でもじゃない。そいつはここでは殺せない。なんたってただの式神だからな。」


式神って言うと陰陽師とかが使役するやつか。

魔術師も分身を作る奴とかいるし符術士も分身を作れたりするだろうな。


「なんとなんと、バレてしまいましたか。ですがですが、私を逃がして良いのですか?」

「お前は神降ろししか出来ないからな。一応俺も神の端くれだしそれぐらいは見て分かる」

「ではでは、お言葉に甘えてここは撤退させていただきます」


城ヶ崎が後ろへ跳ぶと着地点に井戸があった。


「おやおや、これは嵌められてしまいましたか」

「無限井戸、水無月。底は有るから安心するといい」


その井戸に吸い込まれる様に城ヶ崎は井戸へと落ちていく。数秒後ベチャッ、ゴキッっと気持ちの悪い音が響き少量の血が井戸から飛び出した


「ここから出せ!何だこの網は!」


名無しの神はいつの間にか網のかかった井戸の中に閉じ込められていた


「お菊井戸、現行。その網は特別製だからな。そうそう破れるものでは無いぞ。さぁ風咲、5分という制限時間はあるが気ままに鬼退治をするといい。おっと、そういえば久那からこれを頼まれていたな」


菊姫命は我輩と虎織の背中に御札を貼る。

急に身体が怠さに襲われ力が抜けていく。


「何これ・・・」

「魔力を共有する為の札だ。お嬢が起きるまでは貼っておけ。中途半端じゃお嬢もしんどいだろうからな」

「了解・・・」


めちゃくちゃしんどいが虎織の為、いや、自分の為だな。我慢しよう。

それにしても力が抜けていくのはどうもきつい。体温が上がり、熱があるような感じだ。


「うぅ・・・んっ・・・」


虎織は深い眠りから浅い眠りになってきた様だ。寝返りをうち、身を縮めながら我輩の羽織に包まる。

可愛い・・・しんどさとかどうでも良くなってきた。


「おい、お嬢が好きなのは分かるが見蕩れてないであの鬼倒してこい。俺は井戸の維持で忙しいからサポートできないからな!」

「了解!月奈はもしもの時の為にそこの井戸の前で待機しておいてくれ」

「そっちは手伝わなくて大丈夫?」


月奈は少々不安げにそう言った。


「大丈夫だ。鬼とやり合ってる最中にそこの名無しの神が出てくる方が面倒だし」

「わかった。それじゃあここの番は私が請け負う。」

「任せた!久野宮さんは我輩と一緒に鬼を倒してください」

「あい、わかった。それでどう倒すつもりだ?ここにはヒイラギもイワシと七輪もないぞ」

「物理で倒すしかないんで久野宮さんの殺人的な威力の八極拳を叩き込むしかないですね」


他にもいくつか方法はあるがそれをする為の道具が入った羽織を虎織にかけてしまっている。すやすやと眠っている虎織から羽織を取り起こしてしまうのは申し訳ない。


「もっと難しい事を要求してくるかと思ったがそれぐらいなら問題ない。ワシが言うのもなんだが随分と脳筋な作戦だなっ!」


言うが早いか、走るが速いか。久野宮さんは走り出す。

それと同時に鬼を縛っていた縄が解ける。

鬼の大振りな一撃、多分久野宮さんなら避けられるだろうがその素振りが見えない。

魔術式を展開して鎖を鬼の腕に巻き付け動きを止める。

さらに最後の鎖の入った魔術式を展開して脚に括り付け引っ張り体制を崩す。


「もう少し右に寄せたら殴りやすいかな!」


鬼の巨体を鎖で引っ張る。思いのほか力は必要なく直ぐに動いた。

あの巨体でこの軽さはおかしい。

そう思った瞬間風船を割るような音が鳴り響く。

久野宮さんの一撃が鬼を捉え、撃ち貫き、鬼はその場から消え失せた


「ただのハリボテだなこれは。音も含め風船を割ったような感触だ」


鬼が居た場所には細く白い腕が落ちていた。確証はないがあれが鬼の元になった物だろう。

あれをどうにかすればこの鬼はもう出てこないはずだ。

どうやって処分したものか。

腕を拾いに行きながら考える。燃やせない、刻めない、封印なんて難しい事は我輩達にはできない。


「月奈、今から腕投げるから槍で貫いてくれるか?」

「おっけー!」


地面に落ちている腕を拾う。ドクンドクンとまだ動いている気がするが気の所為ということにしておこう。

その腕を月奈に向かって全力で投げる


腕は月奈が構えていた槍の穂先に当たりその瞬間に塵となり消えた


「よし、鬼倒したならもうあれを井戸から出してもいいな。月奈、ここまで戻ってこい」


月奈が我輩達の近くまで来たのを確認し菊姫命はやれやれと言いながら柏手をひとつ。すると井戸は消え、中に居た名無しの神だけがそこに存在していた。


名無しの神は七支刀を高く掲げており今にも振り下ろさんばかりの勢いだった。

鎖はさっき使い切ってしまった。あの振り下ろしは防げない。どうする。何か対処法はないのか?


悩み、考えたがその答えは出ないまま七支刀は振り下ろされた

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