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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第5章 国無シ島編
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咲風 幕拾参第

 「流れ着いた島でガスにやられて倒れてらっしゃった同胞を助けた。それでここまでやってきた、ざっくりとした説明ですが納得して頂けますか?」


 上官さまには悪いけど刀は首に当てたまま話を聞いて貰った。正直さっき襲ってきた奴らには勝てる気がしないし話の最中に襲われたらたまったもんじゃない。話終えたし刀は首から離して鞘に納める。その瞬間上官さまはニヤリと笑い号令をかける


 「逆賊を殺せぇぇ!」


 まずい!?さすがに人間信じ過ぎたか・・・!刀の柄に手をかけ腰を低くして応戦する意志を見せる。だが一向に襲ってくる気配も殺気も無い。でも警戒はしておかないと


 「おい!何故誰も動かない!?」

 「大将、賊ならあんたの首さっきの命令の途中で斬られとる。やっけなんは解るがそこの奴ら連れ帰ってきおったんは事実、義理は通さんにゃならん」


 太眉の薩摩隼人がそう言って自らの上官をたしなめる。そしてこっちを向き頭を下げる


 「斬りかかったのは悪かった。そして同胞を助けてくれてありがとう」

 「たまたま通りかかったから助けたにすぎません」

 「左様か!そいでアンタ名前は?」


 風咲と名乗った方がいいのだろうか・・・?いや、風咲名乗った時点で結構厄介では?でも忠定を誘き寄せるにはちょうどいいのでは?


 「風咲将鷹と申します」

 「風咲ぃ・・・!?貴様まさかあの極悪魔術師の親族か!?」


 上官さまが顔を真っ赤にして我輩に掴みかかる勢いで迫ってくる。爺様何したんだよ・・・


 「極悪?いや、そんな悪い魔術師じゃないとは思うんですが?」

 「なーにをいうか!!あの男にどれだけ危険なものを作っているとおもっておる!?」


 ぐうの音も出ない正論だった。うん、危ないモンも結構有るしな。当然当然。我輩も知らない魔術道具とか色々本家の蔵に保管してるみたいだし


 「それはほんとに申し訳ないです・・・」

 「ふん。まぁ貴様が作っているわけでは無いから貴様に言ったとて変わるものでもない」

 「そんでその風咲のボンがなんでこげな島に流れ着いた?悪いことでもしたんか?」


 揶揄うようにそう聞いてきたのは筋骨隆々な槍使いの男だった。肩に獲物を担いではいるが警戒は解いてくれているのが雰囲気から解る。

 誤魔化すような素振りは見せず適当な理由をつけておかねば、そう思い頭を回転させる。思いついたのは在り来りなものだった


 「武者修行ですかね」

 「そういう事にしといたろか。そんで風咲のボンや言うてたけど証明できるんけ?御当主との続柄は?」


 御当主、ということは爺様か・・・孫が正しいんだけど甥辺りに・・・まて、爺様今何歳!?終戦が六十年前で爺様の享年が八十二で・・・亡くなったのが我輩が十六の頃で、二十九歳くらいか・・・なら従兄弟辺りが妥当か・・・?


 「兄さんとは従兄弟関係です」


 そんなに答えるのに時間はかかってない、はず


 「ふーん。なるほど?従兄弟ねぇ・・・雪城おるか?お前風咲の人間なら全員知っとるやろ?」


 筋骨隆々の男の呼び掛けで木造家屋から忠定らしき人物が出てくる。思っきり上官命令無視してるじゃん!?

 でも忠定がここで出てきてくれるのは助かるな、どさくさに紛れて手さえ触れれば・・・


 「おぉん?風咲?いやぁ、お前は見た事な・・・いや、お前か。なるほどなぁそうかそうか。久しいな」

 「・・・忠定、久しぶりだな」


 忠定が握手を求めてきたので歩みよりその手を握る。その瞬間身体が少し軽くなった気がすると同時に忠定がニヤリと口角をあげる


 「こいつは害なんて無いから気にするな。優しいやつだからな」

 「雪城がそういうんなら大丈夫やな」


 どうやら納得してくれたらしい。こう考えると忠定の影響力って結構あるんだな。それもそうか・・・名家の当主だもんなぁ


 「んじゃ、俺はもう一眠りしてくる」

 「さっきまで寝てたのかよ!?」

 「そりゃぁ俺の役割は夜の防衛だからな」


 あーそういうことか。てっきり我輩の中で寝てたのかと思った


 「しかしまぁ武者修行でこんな戦地に来るとはなぁ。なんでそんなに力求めてんの?」


 筋骨隆々な男が珍しいものを見るような目で我輩を見て問いかけてくる


 「護りたい人達を護る為です」

 「ふーん。今のまんまじゃいかんのか?結構強い思うけど」

 「じゃっどじゃっど!おいの一太刀躱す判断力に多対一で上手いこと立ち回っちょったのみっと十分強か」

 「まだ足りません」

 「かーっ!漢言うより武人やな!おもろいのが来たもんやで!でもな、ここは腕試しの場所でもなけりゃ修行するような場所ちゃうでな。そこわかっとんの?」

 「えぇ、ここは戦場、命の奪い合いの場ってのは解ってます」

 「ほな帰るなりなんなりした方がえぇで。君みたいな甘ちゃんが来てえぇ場所ちゃうねんここは」

 「・・・やらなきゃいけないことがあるんです」


 この人達全員を助けるなんておこがましい、我輩はただ我輩のやれることと儀式で必要なことをやるだけだ


 「その眼、えぇやん。守り人の眼ぇや、気に入った。須賀中将、入隊許可してくれるやんな」

 「こんな得体の知れん奴を我が軍に入れるなど言語道「えぇやんな?なぁ、中将様?」

 「ひっ・・・わ、わかった!入隊を許可する!だが何かおかしな行動をしたら解っているな!?入隊を促したお前も責任を取るということを忘れるなよ西園寺!」

 「えぇ、解っとります。この子が裏切ろうもんならぶっ殺してから切腹でもなんでもしますよ。ほな、行こか風咲のボン、兵舎案内したるわ」


 西園寺と呼ばれる筋骨隆々の男に連れられ我輩は兵舎を案内してもらった。あんまり褒められた環境ではないのは解ってたけど想像以上だった・・・

 埋葬前の先人達が安置されている部屋や泥に塗れた武器等が収納されてる武器庫、地図とかが置いてあるおおよそ作戦司令部と思われる部屋、兵士達が雑魚寝している休憩室。どこもボロボロと言わざるをえない状態で兵士達も疲弊していた。だとしても我輩のやることは何一つ変わらない。ただどうやって忠定と接触してやりたいことを聞くかが直近の課題だ


 「そういえば今って何月何日ですか?」

 「漂流とかしとったならそりゃ日付け解らんようになるわな。今は確か八月の十三日やな」

 「八月十三!?」


 明日にはやることやってないとダメってことか!?マジかよ!?これは今日のうちに忠定に色々聞いとかないと詰むな・・・

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