第24.7幕 出立の後
朝起きたら将鷹は既に出発していた。
将鷹が居ない部屋、でもアサルトライフルのシイロの入ったケースとか羽織が部屋に残っている。なんだかすごい違和感があって落ち着かない。万全の準備って訳じゃない・・・?いや、でも将鷹が敢えて置いていったってことは何かあるのかな・・・
単純に忘れた可能性も・・・それはないか
「虎姉、お兄ちゃん、おはよぉーご飯できたよーってお兄ちゃんもしかしてもうでちゃった・・・?」
アリサちゃんが私と既に居ない将鷹を起こしに来てくれた。そういえば今日の朝ご飯の当番はアリサちゃんだったっけ
「おはよ、アリサちゃん。気付いたらもうでちゃったみたいなんだよね。一声かけてくれたっていいのにね」
「まぁお兄ちゃんのことだから、気持ちよさそうに寝てる虎織を起こすのは気が引ける。とかそんな事思ってたんじゃない?」
アリサちゃんは声を低くして将鷹の真似をしてそういった。声は似てないんだけど要所要所でなんか特徴捉えてるというか・・・それでなんだか笑えてきた
「ちょっ、笑わんでよ虎姉!」
「ごめんごめん・・・特徴捉えてるなぁって」
「そう?ならモノマネした甲斐があったってもんじゃねぇ」
「そういえば将鷹がシイロ連れて行ってないんだけどなんでか解ったりする?」
部屋を出てからアリサちゃんにシイロが部屋に残されている理由に心当たりがないか聞いてみる。アリサちゃんは少し考えてから口を開く
「多分弾の規格かな?今と昔じゃ使える弾が違うし、ロックとラッシュ持っていってるとしたらそれで事足りる、それに大きさもあると思う」
「銃弾って今と昔で違うんだ・・・」
「虎姉って銃とか使わないもんね」
「使えない呪いみたいなのあるからねー。なんか弾が仲間に飛んでくし」
「そうなんだ。虎姉弓とか似合うと思ったんじゃけどね」
「弓かぁ・・・そういえば私まだ弓使った事なかった気がする。試して見るのもいいかもしれないね」
「弓を射る虎姉とかお兄ちゃん見とれるじゃろなぁ」
居間に入ると山盛りのサラダと卵焼き、鮭の切り身と味噌汁が置いてあった。アリサちゃん、いくらなんでもサラダ盛りすぎだよ・・・
「おう、雪城と将鷹が一緒じゃねェってことはアイツもう行ったのか」
新聞を読みながら剣薙さんがちらりとこちらを見てそういった。その新聞、上下反対では?そういう修行でもしてるのかな・・・
「剣薙さんおはよう。まぁそういう事だね」
「にぃ様、新聞が反対ですよ。そんなに風咲さんが心配ですか?」
剣薙さんの妹、咲弥ちゃんが苦笑いで剣薙さんに聞くけど少し間を空けて答える。まるで新聞の内容を噛み砕いて整理しているみたいだった
「・・・ちげェよ。逆さ文字読めるようにしてんだ。それにアイツならなんとかするだろうよ」
「へぇ、随分と風咲さんを信頼しているんですねお兄様?」
「咲弥・・・!?」
「なんですかにぃ様?そんなに大声出して?」
「い、いや、なんでもない」
一瞬だけ薬を打って戦わされた咲弥ちゃん出てきてた?
でも最近は前より年相応の話し方になってるし・・・よくわかんない状態だね。これは薬師寺君に少し話しておいた方がいいかもしれない
「おはよー・・・サラダが草超えてクリスマスツリーになってるわね」
あくびしながら琴葉ちゃんが居間にやってきた。独特な表現をしながらいつも将鷹が座っている位置、私の隣りに座る。確かにサラダリーフとかが山積みにされててっぺんとその山にミニトマトが点在してるから言われてみればクリスマスツリーだ
「真正面に綺姫が居るのはなんか新鮮だな」
「なんだか横が一人分空いてるのは気に食わないもの」
「なんだそりゃ・・・」
「ご飯の蒸らし時間も終わったし食べようかー」
お米を日本昔ばなし盛りにした茶碗達を持ってアリサちゃんが台所からやってきた。いつ見てもあっぱれな量だ・・・
「アリサちゃん、なんか今日は結構お米盛ってるね」
「そうかな?ま、今日はちょっとお腹すいてるし!」
なんだかいつもと違う空気だからかいつもよりも静かだ。将鷹が居ないからというよりみんななんだかんだ将鷹の心配をしているのかもしれない
「ご馳走様でした」
私はいち早くこの静寂から抜け出したくて急いでご飯を食べて食器を台所に持っていって洗う。
そして自分の部屋に戻るでもなく将鷹の部屋へと向かう。今日は琴葉ちゃんが休暇にしてくれてるから仕事はない、でも逆を言うと仕事で気が紛れないとも言える。
こういう時は将鷹の聴いてる音楽とかの方が気が紛れるのかな・・・確か右の本棚の裏が銃と音楽セットだったよね
「ここを押してクルッと回したら・・・あれ?ボルトアクションの銃がない?というか音楽セットも・・・」
あったのは魔術道具っぽい小物、それと・・・まぁ気にせず戻しとこう。反対側だったかぁ。反対側の本棚を回すと白のCDプレイヤーと大量のCDが収納されていた。いつも聴いている星座が描かれたCDケースとプレイヤーを手に取り音楽を再生する。
特徴的なイントロ、心を掴まれる歌詞と物語、歌詞カードを眺めて将鷹の見ていたであろう世界に浸る。私もこの音楽が好きだけど将鷹程ではなかった。歌詞カードを見て音楽を聴いてやっとその深さがわかった気がした。
テンポいいなって感じただけで物語には触れてはいなかった。何となくまたひとつ将鷹を知れた気がした。
意外と私も将鷹をちゃんと知らないのかもしれないなって思いながら物語と音楽に沈んで行った




