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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第5章 国無シ島編
314/361

第24.5幕 月奈と和

 「足遅い」


 吉音先輩が走りながら淡々とそう言ってくる。かれこれもう7kmくらい走ってるぞ・・・キツイって・・・


 「吉音先輩・・・待って・・・もうむり・・・」

 「じゃあ休憩、ゆっくり歩いてから止まること」

 「はぁ・・・はぁ・・・なんすかこの修行?」

 「体力作りと魔術式でズルする練習」


 ゆっくり速度を落として止まる吉音先輩を横目に俺は早めに止まる。息きれてないのやばいだろこの人・・・てか魔術式でズルってなんだよ


 「魔術式で・・・?」

 「そう、筋力強化とかそういうの」

 「苦手分野っすね・・・」

 「なるほどね。だから将鷹は実戦練習ばっかり叩き込んでたのか・・・」

 「や、風咲先輩は多分そういうの抜きに体捌きの方で実戦練習だったんだと思います。よく右足が留守だとか突きの隙が大きいだの言われましたし」

 「将鷹から一本でも取れた?」

 「いえ・・・」


 今だに一本も取れていない。武器としては槍の俺の方が有利のはずなのに経験の差なのか惜しいとすら言えない状態なのが今だ


 「ふーん。じゃあ私もそっち側にって思ったけど加減出来ないと危ないしなぁ。基礎体力の向上とかの方がいいか・・・いや、でも私もちょっとは遊びたいしなぁ。よし決めた!来たルート走って戻ってそのあと対人の実戦練習!」


 鬼だ・・・もう体力も残ってないのにマジかよ


 「スパルタ過ぎませんか吉音先輩・・・」

 「これでも随分と優しくしてあげてるんだけど?将鷹に感謝しなよ。君に合わせて稽古つけてやれって言われてなかったら怪我のひとつやふたつじゃ済まなかったかもね」

 「こわっ・・・なんか自分悪いことしました?」

 「覚えてないかな?あの病院での不遜な態度。いいかな?将鷹があそこで助けなきゃ君死んでたんだよ?それなのに」


 目つきがキツくなって段々と早口でまくしたてるように迫ってくる


 「解ってます!解ってます!あの時は世間知らずでただのガキでした!申し訳ないと思ってます!」

 「まぁ心を入れ替えてるみたいだし、加減はするから安心していいよ」


 吉音先輩って風咲先輩のことになると結構ブレーキ壊れてるというか暴走する感じあるけどもしかして


 「ちょっと気になったんすけどいいですか?」

 「何かな?」

 「風咲先輩との付き合いってどれくらいなんですか」

 「十一年と十日だね」

 「最後にひとつ、風咲先輩の事好きなんですか」

 「君みたいな勘のいい後輩は嫌いだよ」


 背筋が凍りつくってこういう感覚か・・・ゾワッとして底知れない恐怖が俺の体を支配した。ただ忌々しいというように俺を横目で見る吉音先輩には恐怖以外の感情が抱けなかった


 「ってのは冗談、もう随分と前に諦めてるよ。なんせ私はヒロインレースのスタートラインにも立てなかったからね」


 たははと肩を竦めて笑っているが吉音先輩の目は笑っていなかった。でもなんだか踏ん切りがついているという雰囲気も感じられる


 「風咲先輩も隅におけないっすね。どんだけ職場の人間誑かしてんすか」

 「将鷹は長年居るほど良さというか頑張ってる所に出くわすから少なくとも嫌いになる人は居ないんじゃないかな。辻井君ですらなんだかんだ言いながらも将鷹の事結構慕ってるし、あーでも陰之伊兄妹と百合コンビにはあんまり好かれてないか」

 「その、かげのい?と百合コンビってまだ知らないんすけど」


 事務所で寝泊まりしてるけどそういった人とはまだ会ってないとおもう


 「そういえばまだ関わってない感じかぁ・・・陰之伊はインモラル兄妹、百合コンビはイチャついてるときに邪魔したら灰になるから気をつけなよ。っていっても陰之伊はほぼ職場に顔出さないから会うことは緊急事態の時くらいじゃないかな。百合コンビは茶髪の今風の子と緑髪の子だからすぐわかると思うよ」

 「こわっ!なんすか対策課はやばい人しか居ないんですか!?」


 インモラル兄妹!?近親相姦的な感じなのか!?それに邪魔したら灰にされるって何!?


 「そうだけど?さ、雑談もほどほどに戻るよ」

 「あっ!ちょっと待って!」


 ちょっとは体力も回復したけど!でも足痛いままなんだけど!

 少し休憩も挟みながらも何とか事務所付近に戻ってきた、けど何故か吉音先輩は大通りから神社の方へと曲がる。それに俺も着いていくことにした。バカみたいに長い石段を登りきると吉音先輩は居なくなっていた


 「あれ?吉音先輩?」

 「はい、お疲れ様。ほうじ茶持ってきたけど飲める?」

 「あ、ありがとうございます」


 氷がいっぱいに入ったコップとお茶が入った透明なピッチャーを手に持っていた。ここはもしかして


 「一応私が巫女やってる神社だから少しくらいだらけてもいいよ。十五分休憩してから手合わせね」

 「うっす!」


 もらったお茶を一気飲みして足を放り出して座り込み吉音先輩との手合わせに備えて体力を回復する。

 手合わせは夕方まで続き風咲先輩より容赦のない特訓だった・・・一本取れるとかそういう話じゃなくてもうやばかった。槍の使い方が俺とは全くの別次元、刃の方だけじゃなくて持ち手の方まで使うとか得るものは多かった。

 でももう少し加減してくれてもいいじゃないかと思ったりもした・・・明日もこの感じだと筋肉痛やばそうだな・・・

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