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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第5章 国無シ島編
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第15幕 宇迦と将鷹

 「やぁ坊や」

 「宇迦様?」


 寝惚けた脳で聞こえた声に反応する。アレ?我輩寝てたんだっけ?少し脳を起こして記憶を整理する。確か対策課に和と九重向かわせて、そんで虎織といつも通りCDショップ寄って、そこから帰って・・・


 「あー無理に起きなくて良いぞ。オレがここに来たことはどうせ朝起きれば忘れてしまう故。目を瞑ってただオレの思い出話を聞いてくれればいい」


 その言葉で我輩は考えるのを中断して開いていない瞼をまた閉じる。忘れるならそこまで重要なことでも無いだろう


 「坊やが初めて社に来た時のことを覚えておるか?」


 いつだっけ?


 「あれはまだ坊やが七つになる前だったかな。幸三郎が連れてきた時は生意気そうな餓鬼が来たなと思ったものだよ。話してみると割と普通で可愛気があってね、それで嬉しそうに誰かを助けるヒーローの話を聞かせてくれたものだよ」


 そんなこともあったっけ。そもそも爺様と一緒に社に遊びに行ってたのか。いや、多分遊びに行ってたのは我輩だけか。爺様は多分挨拶とかのつもりだったんだろうな


 「坊やが鬼姫を失ってから久那に頼み込んで禁厭の使い方を覚えて直ぐに魔術と共に使い方を忘れてしまっていてな。記憶は変わっておるがいつも通りなのが酷く恐ろしくてな、色々と探ってみれば土地神が小細工したらしいと。正直イラッとしたとも。せっかく久那が禁厭で有り余る魔力を押さえつけ、なおかつ魔術も使える様になってきたというのにその全てを奪っていったのだからな」


 あの狂気的な少年時代の事か。琴葉ちゃんが連れていかれて無力さに嘆いていたあの頃、ただ力が欲しかった、身の丈に合わずとも誰かを助けるためならと考えていたあの頃、実はまだきっちりと自分の記憶として認識出来ていない。土地神さまの記憶改竄はきっちりと今も生きているのか見せられたあの光景でしか認識出来ていない


 「魔力は空、でも坊やはヒーローになるのを諦めなかった。いや、正確にはヒーローは諦めていたが目の前の誰かを助けるという物だけは諦めなかったというのが正しい表現だろう。大したものだよ。だから俺は坊やを気に入って加護と呪いを授けた。命なんて賭けられなくなるような代償の不当化と幸運、それと食に困らぬ様にとな」


 代償の不当化は前に聞いた事はあるがまさかその加護の部分が幸運と食とは・・・

 戦いに関連する加護では無いのは宇迦様の優しさだろう


 「坊やはまだ目の前の誰かを助けたいと思っているかい?」


 この問いには声を出して応えなければならない。そんな気がした


 「はい」

 「そうか、では忠定と久那を頼んだぞ。オレの大切な友達なんだ。語れば長くなるだろうから聞きたければ久那に聞くといい。眠っている所すまなかったな。今夜だけでもあの地へ行かぬ様に祈っておくぞ」


 その言葉と鈴の音を残し宇迦様の気配は消えた。それと同時に我輩の意識も眠りの海へと深く潜っていった

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