表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第5章 国無シ島編
296/361

第8幕 宇迦之御魂神

 「おにーちゃーん!朝じゃよー!さっきからずーっとアラーム鳴っちょる!」


 身体をぐわんぐわんとゆらされ起こされる。アリサか・・・あ?アリサが制服着てる・・・?


 「今何時・・・?」

 「もう七時半じゃ!」

 「今日非番だか・・・あっ・・・」


 非番だからそんな時間に起こさなくてもと言おうとしたら昨日寝る前にアリサに朝起こしてくれと頼んでいたのだ


 「思い出した?今日は挨拶回りだから起こしてくれっていっちょったけぇ起こしに来たのに」

 「ごめんごめん・・・普通に忘れてた」

 「それじゃウチは学校行くけぇなー」

 「あぁ、気をつけてな」


 ベッドの上からアリサを見送り欠伸をひとつ。軽く伸びをしてからベッドを出てから洗面所へ赴く


 「あっ、忘れてた」


 そう呟いて我輩は自分の部屋に戻り敷布団代わりにしていたタオルを回収して今度こそ洗面所へと赴く。洗濯機にタオルを放り込み顔を洗って歯を磨き居間へと向かう。するとそこには珍しいお客が来ていた


 「やぁ、風咲の坊や。お邪魔しているよ」


 八重歯をチラリと覗かせて狐耳をピコピコと動かし笑う狐色の髪でギラリと輝く金色の眼の女性、というか女神の宇迦之御魂神が居間でお茶を飲んでいる


 「宇迦様、おはようございます」

 「うむ、おはよう」

 「ご用件は?」

 「なーに。坊やがオレ達に挨拶しに来るみたいな話を聞きつけてな。先に顔を出したのだ」

 「あー・・・それはお手数お掛けしました」

 「よいよい」


 優しい声色のあと空気が凍りつき押し潰されるような重苦しく威厳のある声色へと変わる


 「それで、死にに行くつもりではなかろうな?」

 「そんなつもりはありませんよ」

 「では何故日照の所にまで顔を出して借りを精算しようとする?」

 「死ぬ可能性があるかもしれませんから、もしそうなるなら悔いはなく死にたいじゃないですか。あと日照様のをそろそろ精算しないと何されるか解りませんから」


 前半も本音ではあるがだいたいは後半がメインである。貸し三、そして支払うべき契約での一日。前に貸し六くらいで精算した時の屈辱といったら・・・思い出したくないな・・・そもそもあの神様に頼るな、という話なのだがそうもいかない・・・


 「そうだな。うむ、この前も随分と好き放題されたと天照から聞いているよ。そうだ、どうせならオレも連れて行ってはくれぬか?そうすれば日照も下手な事はできまい。それにオレが日照の所までの近道を繋いであげよう。悪い話ではないだろう?んん?」

 「あっ、えっ?来ます・・・?」


 宇迦様まともだし多分大丈夫だろ・・・それに日照様の所行く時は虎織も居るし、何より近道は助かる。電車に乗って行くの面倒だし


 「では行くとしようか。虎織を起こしてくるといい。オレはこの一杯を飲み終えたら準備に取り掛かるとする」

 「お願いします。あっ、油揚げ焼きますけど食べま「いただこう!」


 すごい食いつきだ・・・耳めっちゃ動いてるし普段隠してる尻尾がブンブン揺れてる・・・


 「味の方は?」

 「砂糖醤油で!甘辛く頼む!」

 「はい」


 我輩と虎織の分の朝ごはんと共に宇迦様への献上品にあたる油揚げを用意する。さすがに油揚げだけじゃ味気ないしみぞれおろしみたいな感じにして、その上にネギをふりかけて割り箸と共に宇迦様の前へと持っていく


 「ほほう。これは中々!油揚げ単品で来ると思ったら大根おろしと小ネギまでついてくるとは、感心感心。坊やは国守を辞めて料理人にでもなったらどうだ?オレが雇ってやるぞ?」

 「これくらいはやって当然です。それに我輩は国守に誇りを持ってるんで引退までは辞めませんよ」


 そんな他愛もない会話をしているととたとたと足音が聞こえて彌守ちゃんが居間にやってきた


 「あーさっきーがまた女の人連れ込んでるー!」

 「彌守ちゃん、おはよう。連れ込んでないからね?お客様だから・・・」


 この子無邪気なのはいいけどドラマとかで変な言葉覚えちゃうんだよなぁ・・・小さい子ってそういうもんなんだろうけどさ!


 「さっきーおはよー!あと狐のお姉ちゃんもおはよう!!」

 「はっはっはっ!朝から元気がいい童だな!おはよう!」

 「お姉ちゃんは妖怪ってやつ?」

 「オレはまぁ・・・妖怪と言えば妖怪かもしれんがな、神様というやつだ」

 「すっごい人じゃん!さっきー神様と友達なの!?」

 「友達というかなんというか・・・」


 反応に困るな・・・友達というのはちょっと不敬な気がしなくもないしマジで困る!


 「オレと坊やは友達だろう!?」

 「いやぁ不敬かなって思って・・・」

 「それはそうだがな?傷つくぞ・・・?天照とは親友と言っているというのに」

 「す、すみません・・・」

 「よいよい。敬意を表されるのも悪くないからな」

 「おはよー・・・」


 虎織もどうやら目が覚めたらしい。話して手が止まってるし朝ごはん作る続きしないとだな


 「おはよう虎織」

 「虎姉おはよー!」

 「やぁ虎織。寝巻きが彼シャツ(それ)とは中々攻めているね」

 「宇迦様ぁ!?なんで家に居るんですか!?」


 ギョッとしながら虎織は宇迦様の方に目を向ける。何時も通り過ぎて感覚麻痺ってるけどそうだよなぁ、彼シャツなんだよなぁ・・・


 「そういえば彌守ちゃん、近衛と咲弥ちゃんは?」

 「まだ寝てるー」

 「ありがと、彌守ちゃんは何食べたい?」

 「ホットケーキ!!」

 「はいよー」


 これは今の料理を置いてホットケーキ作んないとだな。

 バタバタと料理をしながら朝の時間は過ぎ去っていく。楽しいんだけど忙しい、悪くない時間だよなぁ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ