表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第1章 先代鬼姫編
28/361

第23幕 久野宮と和煎

我輩達は水浸しになった階段を登っていく。

日々喜さんの情報だと人間モドキはもう居ないはずだ。


「こっからは慎重に進まないとな」


あと1つ階段を登れば天守閣だ。

確か屋根裏に刑部姫という妖怪が住んでいたとかは聞いたことあるな。

今はそんなことどうでもいいことなのだが。


くだらない事を考えていると天守閣へとたどり着く。


「あのー上がってきて早々申し訳ないんですけど降ろして貰えませんか?」


日々喜さんが逆さに吊るされながらブランブランと揺れている。

しかも縄での縛り方がアニメでよく見かける全身に縄をグルグル巻にしているあれだ。

そんな光景を目の当たりにすると笑いが出てくる。こんなの現実世界であるのかよ

よく見ると額に私は悪い子ですと書いてある。

多分あれは油性ペンだろうな。綺麗な丸文字なのもまた・・・


「風咲君。笑うの辞めないとはっ倒しますよ」

「だってそんなアニメでしか見たことないミノムシ状態で吊られてるとかもう・・・ブフッ・・・しかも額に私は悪い子ですって・・・ダメだ・・・」


思わず吹き出してしまった。だめだ・・・笑いが堪えられない・・・

ふと虎織の方へ目を向けると我輩の羽織をぎゅっと掴んでプルプルと笑いを堪えていた。

そりゃそうだろこんなの笑うしかない


「あとで殺す。絶対に殺す。というかさっき殺しておけばよかった・・・百歩譲って虎織ちゃんはいいですけど風咲君は殺します。」


日々喜さんが物騒な事を言いながらブランブランと揺れているのがさらに笑いを誘う。やめてくれ・・・それ以上は我輩の腹筋に効く・・・


「日々喜、そう暴れるでない。今降ろしてやるからな」


久野宮さんが笑いながら日々喜さんを吊っている縄を解こうとした時暗がりから声が聞こえた。


「日々喜の縄は解かぬ方が良いぞ?日々喜には今死ぬほど恥ずかしい服を着せておるからなぁ」

「仄様、いつの間に?」

「縄で括って目を瞑らせたあとじゃな」

「なるほど。下着だけで吊られてるかと思ってました」

「男子が多く攻め込んで来ておるのに娘のようなお前の下着姿など晒せるものか」


日々喜さんと先代は楽しそうに話している。

そもそも敵に情報流してたからそこに吊ってるのでは?もしかして違う?

てか下着姿はダメとか言いながら死ぬほど恥ずかしい服着せてるとか言ってるけどそれはそれでどうかと思う。


「仄様、お久しぶりでございます」

「久野宮、か・・・お前の顔はもう見とうない。出来れば帰れと言いたいがまた妾の首を取りに来たのであろう?」

「ワタシは貴方様を殺してなどおりません!」


久野宮さんの力強い声が響く。今まで聞いたことの無い程その声には力強さがあった。


「殺したではないか!妾の首を落として!不敵に笑っておったではないか!痛かった!苦しかった!もっとも信用しておったお主に殴られ、首をもがれた時胸が張り裂けそうな程辛かった!それがなんじゃ!開口一番言い訳か!?ふざけるな!」


暗闇でも分かるほど先代の髪は紅く、燃え上がる炎のように朱く色付いていく。


「信じてはもらえませんか・・・しかし真実なのです!それにあの事件の2日前から1週間、仄様直々に美作への出張を命じたではありませんか!」

「はぁ?そんなこと妾は指示しておらん!」

「そんなはずはありません!」


言った言わないの口論状態だ。なんというかその夫婦喧嘩みたいだなと思ってしまう。


「どうでもいいんですけど早く縄解いてください。さすがに連続して逆さ吊りはキツイので」


日々喜さんは呆れ気味に言った。昔から2人はこうだったのだろうか?


縄を短刀で斬り虎織に日々喜さんをキャッチしてもらった。斬った時に縄が緩んだのか黒地に白のフリルが付いた服、アニメや漫画でよく見かけるメイド服が着せられていた。


「メイド服だね・・・えっ?これって死ぬほど恥ずかしい?いやでも胸元とかガッツリ開いてるし確かに恥ずかしいかも・・・」


虎織が困惑しながら口を開く。


「うわぁ・・・仄様こういうご趣味で・・・」


日々喜さんはくるりと回ってみたり手鏡で自らの姿を確認していた。


「虎織こういうの似合いそうだよなぁ」


つい本音が出てしまった。ドン引きされそうだなぁ・・・


「検討してみる・・・」


予想とは反対方向の回答が来て少々驚いた。虎織は顔を赤らめながらそっぽを向いてしまう。

かわいいかよ。


「イチャつくのは勘弁してください。ただでさえあの二人もイチャついてるのに」


日々喜さんは呆れながら言う。あの二人というと久野宮さんと先代の事だろうか。そう思い2人の会話に耳を傾ける


「そもそもお主は昔からそうじゃ!妾が酒嫌いなのに馬鹿ほど日本酒買って市長室で酒盛りしおって!」

「それをしたのは白鷺と城ヶ崎でしょうが!ワタシはその酒を貰って事務しながら飲んでただけです!それに日本酒ではありません!あれは泡盛です!」

「そんなもの大差ないわ!てかお主、仕事しながら酒呑むなよ!」

「いいえ!泡盛と日本酒は違うんです!そしてあんなのは誤差です!飲んだうちにはいりません!」

「阿呆かお主は!」


思った以上に普通の内容で喧嘩してらっしゃる。


「あぁ!もうよい!ぶっ殺す!」

「仄様であっても手加減致しません!」

「なんでいきなりそうなる!?」

「「お前は引っ込んでろ!」」


何故か自然な形で戦闘が始まってしまったがこの状況、かなり異常である。

口論からの殺害はたまに事件としてあるが流石にここまで酷い物はないだろう。

そして止めに入った者のお約束、両方から殴られるを受けてしまった。

ちなみ殴り飛ばされたあと日々喜さんにも何故か殴られた。


「大丈夫?」

「平気、だと思いたい」


殴られ倒れ込んだ我輩の視界に虎織が写り声をかけてくれる。

身体を起こすと日々喜さんはその場から消えていた。


睨み合う2人、ドスンと地面を踏みしめる音が2人分鳴ると共に先代と久野宮さんの闘いの火蓋が切って落とされた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ