第41幕 いざ決戦
「近衛!?なんでお前が武蔵に!?」
現れた目付きの悪い男は剣薙近衛、華姫に来て縁あってこうして交友がある人間だ。今の我輩じゃ本気で戦っても勝てない追うべき背中である。近衛の他に妹の咲弥ちゃんと近衛が助け出した少女、彌守ちゃんが一緒に居る。それとさっきまで生きていたであろう人間だったもの。どうやら偶然異端狩りのやつがちょっかいかけたのが近衛だったんだろう。可哀想に
「ンだよ、俺が居ちゃ悪ぃかよ?ライブだライブ」
受け答えをしながら近衛は唐突に現れ不意打ちをしようとする機械兵を一太刀で両断する。我輩が声をかけなくても自動反撃かのようにそんな芸当を見せるとかやっぱコイツヤバいなぁ
「そうか、ライブかぁ。じゃあ出会い頭悪いけどこれも何かの縁だと思って手伝ってくんねぇかな?」
「あぁ、いいぜ。こっちとらペンラにヒビ入れられてムカついてんだ。コイツら派手にぶっ壊してもいいんだよな?」
わらわらと地面から現れる機械兵を見て余裕そうに笑い黒い刀身の刀を軽く振るう
「おう。ついでに琴葉ちゃんの事も頼むぜ!」
「おいおい俺は用心棒なんてガラじゃ……いや、そうだな。やってやるよ」
「ちょっ、将鷹が護ってくれるんじゃないの!?」
琴葉ちゃんが若干焦りながら我輩に問う。まぁそうしたいのは山々なんだけど
「近衛に任せた方が傷少なくて済むと思うんだけどなぁ」
「ふん。俺が護るってんなら傷なんて負わせるかよ」
一体、二体と機械兵を片付けながら心強い言葉を紡ぐ近衛に琴葉ちゃんを任せ我輩はスマホを眺めている相手にシイロの銃口を向けて虎織の方へ目線を向ける
「だそうだ。これで何も気にせず全力全開でぶっ飛ばせるな。いこう、虎織」
「うん!ここからは後先考えず全力出していいんだよね。枯れないでね?」
ニヤリと笑い虎織は刀を肩に担ぐように構え腰を低くして刀に風を纏わせていく。いきなり大技ぶち込んでそのまままた大技みたいなことをする気だろうか。まぁ魔力量は人より多い方だし問題ないと思いたい。まだ我輩の魔力から使っている感じはないからまだ自前の魔力で回しているのだろう
「大技連打は勘弁して欲しい、なっ!」
シイロのセレクターがフルオートになっているのを確認してトリガーを引きながら敵目掛けて走り出す。ドットサイトを覗きながら走るのが難しいが弾を一発でも多く当てるなら覗きながらの方がいいだろう。そんな事を思っていたがそもそも弾は当たらなかった。弾丸は全て銀色の何かにぶつかり火花を散らして消える
「やっぱそういうのだよな……!」
予想はついていた。機械兵の無尽蔵生成ができるならこんなの出来て当たり前だよな。でも
「椿流、結の太刀。風刃裂破!!」
虎織の声と共に風の刃が振り下ろされる。銀色の何かは真っ二つになり風が地面を抉る。だが男はスマホを見たままだ。何か魔術式の防御手段があるのか?
「椿我流、風炎葬禍!」
すかさず虎織が刃に纏わせた暴風に炎を添えて業火の渦を作る。紅蓮に燃える火柱は無情にもいとも容易く消し去られる
「アイツ何なの!?魔術ぜんっぜん!効かないんだけど!!」
虎織は不機嫌になりながらも次の技の溜め動作へと移っていた。霞の構えだから三段突きの無明剣か已己巳己だろうか
「弾も防がれるしなぁ」
シイロにスリングを通し背中に背負って袖からリボルバーのRSH-12、ラッシュを取り出し撃鉄を起こす
「貫け!」
言葉と共に引き金を引く。もう手に馴染んだ反動と轟音が響く。一発ずつ撃つ代わりにその一発に魔術式をきっちりとかけられる。さらに今は手元にないが蓮に貸したロックより威力が高い、だからこういう量より質が欲しい時には重宝するのだ。まぁ欲を言えば持ってきていないライフルの方がいいんだけどな。
ノールックで銀の壁が出来上がるがそんなものお構い無しに弾丸はそれを貫く
「はぁ・・・なんなんだよお前ら・・・本気出さなくても死んでくれるとは思ったんだけどな」
男はそう言うと指を琴葉ちゃんに向ける。すると槍や諸刃の剣が琴葉ちゃんを囲む
「近衛!!」
「大丈夫だ。奥の手がある」
そう言うと近衛は鞘に納められていたもう一本の刀の鯉口を切る。瞬間、琴葉ちゃんを囲んで居た刃物と近衛の近くに居た機械兵が消え失せる。まるで最初から存在しなかったかのように綺麗さっぱり消え失せた
「そんなもんあるならすぐ使えよ!?」
「切り札ってのは軽々しく切るモンじゃねェんだよ」
「ごもっともだけどさぁ!」
戦闘狂らしさが出てるというかなぁ……まぁ同意出来てしまう我輩も大概なんだろうけどさ
「ほんとなんなんだよお前ら・・・!」
七罪甲冑がワラワラと地面から湧き出す。おいおいマジかよ・・・厄介すぎるだろ・・・
「全て無に帰せ。鬼天還元」
琴葉ちゃんの声が我輩の真後ろから響く。その声と共に七罪甲冑達が全て塵になり風にさらわれていく。まさか・・・
「ねぇ、将鷹。そこのヤツ殺していいわよね?」
「お前、誰だ」
「酷いわね。綺姫琴葉よ?」
「なるほど。鬼の部分か。琴葉ちゃんはどうした」
「今はそんな事いいじゃない。今大事なのはそこのヤツを殺すかどうかよ?」
「殺さない。然るべき措置をとるのが最適だろ」
「そう」
そう言うと琴葉ちゃんは満足そうに笑って倒れるのを腕で抱きとめ脈を確認する。大丈夫、生きてる
「あーぁーなんだよマジで。能力使おうもんなら無力化されるしよぉ。もういい。お前ら全員ぶっ殺して最後にその鬼殺してやんよ」
「やれるもんならやってみやがれ!」
啖呵を切ったその瞬間、虎織がぶわっと勢いよく男の前へと踊り出て三段突を決める




