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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第4章 異端狩り編
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第40.5幕 剣薙近衛

 「いやぁ、近衛の好きなバンドのライブ凄かったね・・・まだ耳がキンキンするよぉ・・・」


 青髪のちんちくりん、彌守が耳を塞いだりしながら俺に話しかける。どうやら俺の好きなヘビメタはコイツには合わないらしい。ライブ中はポカーンとしてたりいまいち乗り切れなかったのも一因だろうが。まだコイツにヘビメタは早かったか?


 「この耳を劈くような爆音と重低音がいいんだがな」

 「にぃ様の趣味はよくわかりません・・・あんな下品な音楽・・・クラシックなど聴いたりしません?お父様が悲しみますよ」


 白髪の俺の妹、咲弥が苦い顔をして苦言を呈すが俺はアレが下品な音楽とは思わない。ヘビメタは歌詞だけじゃない、音楽を心で感じるもんだ


 「下品とはなんだ下品とは。あと親父なら多分よく分からん表情で笑ってんだろ。多分」

 「だって歌詞が・・・その・・・エッチではありませんか・・・?」

 「ん?あぁ、まぁそういう表現もあるがロックってのは魂で感じるもんでなぁ・・・てかお前ヘドバンしてたから理解出来てると思ったんだがな」

 「意味がわかりません・・・それにヘドバンとはなんですか・・・」

 「ヘドバンってのはなぁ、こう頭を前後に振ってだな。会場の奴らやってただろ?」

 「あー・・・やってましたね。超不気味でした」

 「だよねー。あれ絶対悪魔崇拝とかそういうやばい人達だって思ったもん」

 「不気味言うな。というか観客に失礼すぎるだろ・・・」


 そんな日常的な会話の中、似つかわしく無い感覚が迫る。それは殺気。随分とバレバレな、というより隠す気が無いな。それに堂々と真正面から来るとはいい度胸だ


 「にぃ様・・・」


 咲弥が震えながら俺の袖を掴み後ろに隠れる。華姫での一件以来俺をお兄様と呼んでいたあの凶暴な一面はなりを潜めて子供っぽい一面だけが表へと出ている。気に食わない緑髪の女は薬による錯乱状態だったから素はこっちだろうとか言ってたがぶっちゃけよく解らん。ただ妹の咲弥であることは変わりない、彌守同様に俺からすれば護るべきモノだ


 「大丈夫だ。すぐに片付けてやる。彌守、咲弥下がってろ」

 「おやぁ?やっぱり君は剣薙女史じゃないか!こんな所で逢えるなんて運命だと思わないかい?」


 銃声と共にそんな声が聞こえる。咄嗟の事かつ最近平和ボケで俺も少し鈍って居た。銃声が響いたと同時に刀を引き抜けば良かったがついポケットに入れていたさっきのライブでのペンライトで弾丸を防いでしまった。割れることは無かったがヒビが入ってしまっている。せっかくサインして貰えたペンラだったってのに


 「テメェ!よくもサイン入りペンラを!」

 「ほう。脱走者の被験体とその逃亡を手引きした用心棒もここにいるとは。君たちのせいでアルカンスィエルの内情はガタガタになってしまったんですよ。城ヶ崎も君たちが投獄したと聞きましたしどれだけの無垢なる社員を路頭に迷わせたかご存知ですか?」

 「ンなこと、知ったこっちゃねェよ!そんなモンよりペンラだペンラ!!どうしてくれんだよ!」

 「これは随分と薄情な人ですね。そんな君には死がお似合いだ」


 息が苦しくなる。なんだ・・・?なにかが俺の首を掴んでいる訳でもない。だが確かになにかされている。何らかの魔術式か?それなら、一個試したいモンがある。普段なら刀は黒鐡一本しか持ち歩かないが華姫の刀鍛冶から試して欲しいと一本預かっていた。それに手をかけた時


 「おっと、君より先にそこの被験体からにしましょうか。そして次は用心棒の君、そして咲弥女史は私と・・・ふふふっ・・・素晴らしい・・・!!」

 「にぃ様!コイツキモイです!なんなんですかこの人!!ゲスで変態です多分!!」

 「さぁ、串刺しの時間だ!臓物を撒き散らしながら死ぬがいい!」


 彌守の周囲に無数の槍が現れる。俺が手をかけた刀を少し引き抜くと槍はそこに何も無かったかのように消え失せる


 「バカな!貴様、一体何を!?」


 驚愕する男を無視して黒鐡を抜刀して男に斬りかかる。一太刀で十分だろうと思っていたがどうやら俺の見立ては甘かったらしい。刀は何かに阻まれ弾かれる


 「なんなんだ貴様のその刀は!私の能力で確かに折ったはず!!何故折れていない!?」

 「黒鐡が折れるわけねェだろ」


 もう一度刀を振りかざし振るうがどうにもヤツに刃が届かない。空間を歪めているのかと思ったがそうなると彌守に対して無数の槍を出したのが説明がつかない。まぁ何にしてもこいつを引き抜けば終わる


 「えぇい!貴様の刀がどれだけイレギュラーであっても貴様自身はただの人間!し・・・」


 言い切る前に刀鍛冶から預かった刀を鞘から出し振るう。さっきまで弾かれていたのが嘘だったかのように、まるで豆腐を斬るように刃はスルリと男を斬りつける


 「痛いぃぃぃ!何故だ!何故私に刃が!私に傷がつくなどありえない!そう私が思い描いたはず!なのに何故!?」

 「悪いが今からテメェがなんの目的でここに来たのか全部ゲロって貰うぜ。ンでゲロった後にペンラのケジメつけさせるから死ぬなよ?」


 刀を振りかざし男の首スレスレに刃を落とす。脅しにはこれくらいで丁度いい。やめてくれと懇願する男の姿は無様で見るに耐えなかったが得られた情報は大きかった。男の目的は華姫の長、綺姫琴葉の殺害及び俺達の始末、そして城ヶ崎の奪還だったそうだ。またアイツら厄介な事に巻き込まれてるのかと思いながら男にさらに脅しをかけるとどうやら近くで将鷹達が交戦しているらしい。アイツらの近くまで行ったらコイツ始末しないとめんどくさいだろうな。

 男の襟を掴み男の身体を引き摺りながら歩く。刀鍛冶から預かった刀が抜刀されている限り範囲内の魔術式は機能不全になるしコイツは抜き身のままで合流するか・・・

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