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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第4章 異端狩り編

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第35幕 風裂、風咲

 「椿我流、終ノ太刀」


 将鷹達が動き出す前に私は刀を小さく振り風を切りながら呟く


 「・・・始メ、風裂(かぜさき)


 無音の風が吹き抜け全ての音を奪い、吹き飛ばす。私の許した音以外は例外無く全て消え去る。私の音も、走り出した将鷹達の音も、今相対する相手の全ての音さえも今はただの気持ちの悪い静寂だ。

 相手の瞬間移動とも取れるあの高速移動、私の仮説が正しければ音を媒介にした物。今までのアイツの動きは必ず何か音の発生源への移動だ。刀を振って後ろに居るのも切っ先の始点が後ろだしアリサちゃんの発砲でそっちに消えた時は真後ろでも正面じゃなく排莢機構のある付近だったし、なによりさっきの空中からの蹴りもわざと声を出してその声を出した地点にアイツが現れた時にほぼ確信できた。そしてその証明の為に空中でアイツに斬りかかって切っ先のあった場所に対象を地面に叩きつける魔術式を置いてみたら案の定、引っかかった。

 ならここはこの無音の世界を作れる私が倒すのが適任だろうし、将鷹には琴葉ちゃんについて行ってもらった方が少しは休めるだろうからね


 男は何か言おうとしたけど残念ながら音なんて出ない。その現象に驚いたのか男は喉を触りながら叫ぶ。でも音は出ない。私はゆっくりと八相に構えゆっくりと近づく。男はと言うと後退りしながらも臨戦態勢を取り腕からは黒影の物と思われる黒い縄状の物が生え出てくる。

 それを私目掛け振るのを見て私は刀ではなく片腕を振るう。それと同時に黒影の部分は粉微塵になる。正直そこまでする必要はなかったけど相手の心を折るには良い手だと思いたい。

 それにこの音の無い世界では私の風の魔術式は何故か強化されるらしくいつもの出力でも別物と呼べる様になっている。

 相手は必死に何か叫んでいるみたいだけどここでは何も聞こえない。そして男は距離を取るつもりなのか2、3歩飛び退いて地面に手を触れる。すると地面が隆起し始めて視界の邪魔をしようとしてくる。そんな手で私が止まるとでも思われてるとしたらそれはそれでいっか。不意はつけるし。

 それにたまには使わないと練度下がっちゃうから将鷹には隠してるコレを使うのにちょうどいい機会かな。私は声にならない声で呟き走り出す


 「雷華(らいか)


 魔術式の発動と共に速度は加速する。私が使えることを秘匿している魔術式の属性、雷。使えると知ったら将鷹がもしもの時にリミッターを外してくれと頼んで来そうだったから使わない様にしていた。まぁもしかしたら将鷹なら知ってるかもしれないけど。何せ雷は雪城家の得意分野だしお父さんも多用してた魔術式だったし。

 隆起する地面を跳び越え男に一太刀浴びせる。軽く斬るだけで今は十分。

 男はふらりと態勢を崩しかけた所で雄叫びをあげる様な仕草の後に全身が黒影に覆われ黒い二足歩行の獣の姿に成り果てる


 「人を捨ててまで成したい願いって悲しい人。直ぐに終わらせてあげる」


 私の声はもう届かないのは解ってる。音を奪い、さっきの一太刀、過剰刃で聴覚を機能不全にした。わざわざ聴覚を奪ったのはこの風裂の弱点、次の一太刀を放つ瞬間に音が無い世界を併用出来なくなること。八相に構え神経を集中させ向かってくる化け物を睨む


 「椿我流、終ノ太刀・・・」


 風が鋭く刃を作り向かってくる化け物の攻撃を躱しカウンターになる形で私は袈裟斬りを放ち、斬ると共に私は走り抜け、お互い背を向ける様な形で立つ。生々しい感触が手に残る中叫ぶ


 「締メ、風咲!!」


 風の刃が化け物を切り刻む。風の刃に付く血は赤黒い彼岸花の様に咲く。

 これで一応終わり、もう化け物は動くこともない。あとは私も将鷹達に追いついて琴葉ちゃんを護るだけだ

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