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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第4章 異端狩り編
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第31幕 龍面影朧

 「椿我流、七彩!」


 炎が避けられないなら中和するしかない。そう思い白虎を振るうが思ったよりも水分量が少なく自分の身体を濡らすので精一杯だ。空気が焼けるように熱い中濡れた身体が乾く前にシイロを空へと投げ炎へと飛び込む。

 身体が焼けてヒリヒリする。いやな臭いもするが気にしてなんかられない。空へと投げたシイロを鎖で絡め取り竜に向けて発砲するが全弾外れる。肩を噛まれて抉られたため射撃の反動すら痛い。思考も足を止めている暇なんてない、明らかな格上を相手にどう立ち回るか、何が有効打になるかを考えて走れ。そう自分に言い聞かせながら足を動かし倉庫の陰へと隠れる


 「影朧、治療できるか?」


 影朧にそう問うと魔力がごっそりと減る感覚をおぼえ、我輩の影がひとりでに動き出す。

 竜は翼を広げ雄叫びをあげながら我輩の姿を探しているようだ。早めに会話を終わらせないと


 「出来なくもないが一回死ぬか俺の依代用意するかだな」

 「このままじゃだめか?」

 「無理無理。影じゃ禁厭の炎もただの影になっちまう」

 「依代って何使えばいいんだよ」

 「そうだな、じゃあお前の持ってる少彦名命の龍面なんてどうだ?」


 被るなと言われていたあの龍面か・・・使っても怒られないよな?そんなくだらないこと考えずに覚悟しないと今死ぬ。なら選択肢はない。我輩が龍面を袖から取り出した瞬間影朧が言う


 「そいつに魔力を乗せて投げて俺の名を呼べ!」

 「影朧!」


 我輩の声に呼応するように蒼炎が渦巻き影朧が姿を現す。それと同時に我輩の方へ蒼炎の鮫が食らいつき通り過ぎる。蒼炎に焼かれた身体は元通りに傷も痛みも消し去り消えていく。我輩の髪と眼を色彩反転させたような姿の影朧、ちゃんと目にするのは初めてだ


 「リボルバーと短刀寄越せ。今回は一緒に戦ってやるよ」

 「おう、それじゃあよろしく頼む!」


 短刀とRSH-12を影朧に投げる。竜の咆哮と共に炎が吐かれる。さっきよりも火力が高いように思う


 「俺が何とかするからお前はアイツの側面を攻めろ」


 我輩は頷き炎の来ない範囲に退避しながら倉庫に隠れながら進んでいく。蒼の火の粉がパチパチと赤い炎を燃やし尽くし、喰らい尽くす


 「お前、だれだ?」

 「俺か?俺は影朧。お前を殺す名だ、覚えとけ」


 やたらかっこいい漫画チックな言葉を吐きながら影朧は竜と対峙する。今のうちにマガジンを交換しながら側面を取るとしよう


 「風咲将鷹は何処へ行った」

 「答える義理はねぇよ」

 「そうか。ならば死ね!」


 ジェット機のような轟音が耳をキーンとさせる。さっきのがアイツの最大速度の移動か?だとしたらまだ大丈夫、眼で追える。でもそれ以上だとちょっときついな。

 竜は影朧を貫き上半身を吹っ飛ばす。だが影朧は蒼炎を散らし揺れるだけですぐに元に戻る。もしかして無敵かよ影朧・・・

 てか側面取りしようと動いたら遠くなったんだけど!


 「影朧、作戦変更してもいいか?」


 我輩と影朧は繋がっているからか我輩の声は影朧に届くしその逆も然りだ


 「やりたいようにやれ」

 「オッケェ!」


 テンション高めに、声を張り上げながら倉庫の上に飛び乗り竜に向けて銃弾をフルオートで浴びせる。弾かれる弾も有れば直撃して血が吹き出す部分もある。竜化しているとはいえ鱗の隙間があると考えるべきか


 「ぐっ・・・風咲将鷹ぉ!殺してやる!」


 飛び込んで来る竜を寸前で躱し鎖を翼に巻き付ける


 「影朧、鎖で引っ張ってくれ!」

 「そういうのは先に言えって!」


 蒼炎の鎖が紡がれ竜を縛りあげ竜をこちらに引き寄せる。我輩はつま先で軽く地面を二回蹴ってから構え、翼の鎖目掛けて中段蹴りを放つ。靴裏の火薬が発火し巻いていた鎖が誘爆し竜の片翼をボロボロにする。

 そして竜は蒼炎の鎖に繋がれた影朧の方へと向かい影朧は脚に炎を纏いながら竜の顔面へと回し蹴りで吹き飛ばす。竜は倉庫にぶつかり止まったがまだまだ動けるようだ


 「いくぞ」


 我輩は声と共に走り、魔術式を足場に空を駆けながらシイロで弾丸を浴びせていく。

 影朧もそれに合わせ銃弾を浴びせていくが弾数が合わない。改造して6発装填にしてるとはいえそれ以上撃ってないか!?

 でも今それを気にしても仕方ない、次の攻撃に移らないと。それなりに近くなった所でシイロを鎖で背中に括り付け魔術式の足場を飛び降り白虎を構えながら叫ぶ


 「椿我流、七彩!変化、圧水刃!」


 白虎に水を纏わせてその水をできる限り風で圧縮し刀を振りながら解き放つ。細かい水は霧を作りながら竜を両断する。そして影朧が短刀に蒼炎を灯し振るうと轟音が響き自由落下しているを我輩空へと押し戻す程の爆風と爆炎を生む。工場地帯のアスファルトが溶け倉庫が吹き飛ぶ。その吹き飛んで行くものの中に竜の破片もみえる。爆風が収まると蒼炎が我輩を包み手に龍面があった。影朧の時間切れらしい。この攻撃で竜を始末できていなかったらと考えると少々怖い


 「よくも、よくもよくもよくもよくもよくも!」


 厄介なことにあれだけの爆発の中心に居たのに生きてた・・・だが白煙から覗くその姿は竜ではなく不死の化け物と戦った時に居た女化学者と同じ様な見た目の何本も腕が生えた怪物だった


 「お前も実験体か何かなのか?」


 怪物はこちらの問には答えない。ただ怒りを露にしながら奇声をあげこちらに向かってくるだけだった。

 手向けの言葉も必要ない。決着をつけるため、刀を肩に置き腰を落としてから一歩で距離を詰め、袈裟斬りにする。まだ動く、刃を返し横一文字で斬り裂くと怪物は断末魔をあげ、身体は黒いタールのようにその場にバシャリと溶け落ち広がる。竜化の薬を飲んだ者の末路は泥となるだったか。今回のやつは純粋な竜種に近かった。どんだけ薬飲んだのやら・・・それにストックとか言ってたっけ・・・

 そんな思考の中ハッとする。アイツの能力はまさか色んな物を取り込むとかなのか?カマキリだったりライオン頭だったのもそれなら頷ける。ということはさっきの人間の腕とか生えてたのって・・・

 これ以上考えるのはやめよう。気が滅入るだけだ・・・

 とりあえず今から琴葉ちゃん達と合流するとしよう

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