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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第4章 異端狩り編
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第28幕 蒼凱

 地下へと続く小さな駅の入口。暗く狭い誰も居ないとさえ錯覚するそんな入口から下へと降りる。追ってはまだ来ないはず。

 ふとした拍子に思ってしまう。自分達がこの駅を使うことで民間人が巻き込まるのでは無いだろうか?

 だが歩いて進むにも遠すぎる・・・


 「琴葉ちゃん、時間かかってもいいか?」

 「いいわよ。それで貴方が消耗しないならね」


 我輩の意図を汲んで琴葉ちゃんは頷いてくれた


 「3人は?」

 「俺は異議なし。地下鉄に乗って襲撃されたらひとたまりもないし一般人に怪我されちゃ困るからな」

 「私も歩く方が性にあってるかな」

 「うちも賛成ー」

 「じゃあなるべく人通り少ない道選びながら進んでいくか!」


 とりあえずでっかい電波塔、武蔵天塔(むさしてんとう)を目指し進む事にしよう。あの近くに火野姫の拠点もあるしそこさえ目指してしまえば・・・

 そんな事を考えて地下鉄の駅を出た瞬間、視界の端にあった車が消し飛んだ。敵襲だ。しかもかなりの高火力持ち・・・

 煙る黒煙に紛れ人影が一つ。体格からして男だろうか?


 「よぉクソ鬼。狩らせて貰うぞ!」


 声と共に煙が微かに揺れる。琴葉ちゃんの前に金髪に大きなピアスの男、我輩と虎織を避けて高速で琴葉ちゃんを狙った!?いや、不自然だ・・・風が通り抜けることすらなかった・・・


 「っと、危ない危ない。首が飛ぶとこだったか」


 虎織の腕を掴みギリギリと握り潰そうとしている。頭に血が上る。刀を振り抜くのに躊躇はなかった。だが刃は止まる


 「おぉっと。危なかったな?」

 「てめぇ・・・」


 虎織が盾にされた。ギリっと奥歯を噛み締め怒りを少し我慢するとすぐに銃声が響く。すると虎織を掴んでいた男は消える様にアリサの方へと移動している。速いなんてもんじゃない、瞬間移動と呼ぶべきモノだ


 「お兄ちゃん!」


 アリサが引き離したから何か手を打てと言う表情をして我輩を呼ぶ。期待されたからにはやるしかない。袖から白鎖を出し捕縛を狙いながら背負っているガンケースの鎖を解く。ケースが開き解いた鎖を握り中のHK-416とマガジンを絡め取るとケースが地面へ落ちる。

 その瞬間、白鎖は軌道を変え我輩の方へと向かう


 「白鎖!?」

 「聡い鎖ってのは厄介だな」


 耳元でその声が響いた時には背中に硬いものが勢いよく突き立てられていた。ナイフだ。羽織部分で助かったが打撃としてはめっちゃ痛い。刺さらなかったのは幸運だったけどさ・・・


 「なんだよ防刃繊維の癖に刺突にも耐性あんのかよ」

 「君たち、お姉さんが加勢してあげよう」


 知らない声がする。そっちを向く暇なんてない今はこいつを仕留めるのが先だ。袖から短刀を出し後ろを向くと同時に空を斬る。おかしい。さっきまでここに居たのに。まさかとは思うがさっき声のした方向に?そう思い声のした方を向くと案の定そこに敵は居た。そして東雲色の長い髪に緑の瞳、知っている様で知らない女性の姿がそこにある


 「やぁ、私は蒼凱(そうがい)(つるぎ)、君たちには東雲(しののめ)剣と言えばわかりやすいだろうか?」

 「雪のお母さん!?」


 真っ先に反応したのは虎織だった。確かに似ている・・・巨大な何かを持っている辺りもなんだか似ている・・・!でも握られているのは刀ではなく無骨なただの鉄パイプだった


 「鉄パイプっていいよねぇ。喧嘩してるって感じがする!」


 雪のような雰囲気で凶悪に鉄パイプを振り回す剣さんはなんだかスケバンの様だった


 「ババアはお呼びじゃないんだけどな」

 「お姉さんね!」

 「20歳越えたらババアなんだよ!」

 「ロリコン野郎だね君!」


 楽しそうな剣さんと苦しそうにその攻撃を避ける男。何故あいつは瞬間移動を使わない?今は使えないのか?


 「うっせぇババア!」

 「仏の顔も三度までって言葉知ってるかな?」


 剣さんの雰囲気が一変する。そして持っていた巨大な箱型の何かを蹴るとガシャンと箱はふたつに割れるように口を開け、その口に剣さんは鉄パイプを突っ込み開いた片方を荒々しく蹴り閉じる。するとバチンと大きな音とモーターの様な音が鳴り渡り火花を散らす


 「こっからはぶっ殺しにかかるからな。君たちは手出し不要で黙って見てな」


 剣さんはこちらにそう声をかけてから鉄パイプを握り直し箱を蹴る。箱から出てきたのは箱に入っていた部分が潰れ、薄く広がった鉄パイプ。その様はまるで刀だ・・・

 その鉄パイプでの一振でアスファルトの地面が綺麗に裁断される


 「これは分が悪いし相性も最悪か。じゃ、ここで退散するとしよう」

 「待て!まだお姉さんをババア呼びした事許してないんだけど!」

 「知るかババア!」


 男は煙玉で煙幕を張ると何かを別方向に投げ消えていった。煙幕が一瞬薄れて見えたがそれが何か鍵になるだろうか?


 「・・・逃げられちゃったねぇ。まぁいっか。目的は果たせたし。それじゃ改めてお姉さんは剣、娘がお世話になってるみたいね」

 「風咲です。娘さんと旦那さんにはお世話になりっぱなしで・・・」

 「ふふぅん?君が将鷹君ね、じゃあそこの綺麗な灰髪の子が虎織ちゃんで、赤髪の子が琴葉ちゃんで、金髪の子がアリサちゃんで、そこのイケメンは?」

 「薬師寺蓮と申します」

 「あら、ご丁寧にどうも。その名前、薬屋さんね!」


 コクリと頷く蓮。その後に我輩は疑問を投げる


 「それで何故雪のお母さんが武蔵に?」

 「旦那に頼まれたのよ。道案内くらいは必要でしょ?」

 「なるほど。助かります。ちなみに何故蒼凱って苗字をあの場で名乗ったんですか?」

 「喧嘩する時は東雲じゃ東雲家の印象悪いでしょ?だから旧姓の蒼凱って名乗ってるの。どうせ無茶苦茶やった苗字だし」

 「な、なるほど・・・」


 そっちの印象悪くなってもいいんだ・・・


 「とりあえず家に来て貰えるかしら?話したいこともあるし。鉄パイプも補充しておかないとだしね」


 そう言って剣さんは薄くなった鉄パイプを眺めて言う。アレで地面斬り裂いたって相当の技量だけど雪の母親となると謎の納得感がある


 「んー?鉄パイプなんてまじまじ見てどうしたの?」

 「その潰れた鉄パイプでどうやって地面斬ったのかが気になるんだよね?」


 虎織が我輩の疑問点を言い当てる


 「そう、そこが気になって」

 「あーそっか、普通見ないもんねこんなの」


 剣さんはトントンと箱型の何かをつま先で蹴りながら言う。そして説明を始めてくれる


 「こいつはね、鉄パイプを刀にする装置だよ。鉄パイプを突っ込んで蹴って閉じてやったら鉄パイプが潰れて箱の中の研削機が刃を作ってくれるってやつ。ホローグラインドって刃付けらしいけどお姉さんにはよくわかんないんだけどね」


 なるほど。潰して削って即席の刃物を作れるってかなりいい機械だな。しかも薄刃で斬れ味良くしてるっては凄い、欠点としてはすぐに鈍になるくらいだしその欠点も鉄パイプって量産の効く素材だから欠陥という程のものでもない


 「すごい・・・」


 出た言葉はこの感嘆の一言だけだった


 「感動してるところ悪いけど移動始めるよ。次厄介なのが来たら面倒だし」

 「はい」


 こうして我輩達は剣さんに着いて行くことになった

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