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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第4章 異端狩り編

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第26幕 千景

 「虎織、蓮は琴葉ちゃんの警護よろしく、アリサは我輩のサポート」

 「サポートって言ってもうち何やったらいいん!?」


 虎織と蓮は静かに頷き、アリサは驚きながらも銃に手をかける


 「もしもの時に弾丸叩き込んでくれ」

 「わ、わかった!」


 おどおどしつつも銃の基本確認は怠らない、いいことだ。魔女はこちらに向かいながら杖を振るう。すると魔術式の顕現もなく鋭い氷の柱が我輩を囲い刺し貫こうと生えてくる。魔術式の顕現が無いということは魔法か?魔法だと言うなら何かを犠牲にして使っているということになる。代償なしに魔法の行使はできないし魔術師がそれを使うなんて事基本ありえない。魔女の正体は異国の人間か?そんな予想を立てるが何処まで合っているのか分からない。それに今対処すべきは既に放たれた攻撃だ。

 身体強化の魔術式を使い前方の氷を砕き魔女目掛けて走り距離を詰める。もう拳が届く、気絶狙いで鳩尾に一撃を加えるために構え、腰を低くして踏み込んだその時だった


 「っ・・・!貴方は・・・」


 この魔女は我輩を知っている?黒いローブからは顔が伺えない、華奢で小さいことと声から女性なのは分かるがそれ以外は全くだ。そしてこの距離でやっと視認できるということは随分と目が悪いらしい。そんな知り合いは居ないしそもそも魔法を使う人間なんて周りでは稀有だ。聞きたいことも出来たし気絶させると時間がもったいない。

 行き場を失った拳を相手の頭付近を掠める様に放ち頭にかかっているローブを風圧で外す。

 出てきた顔は知らない顔だった。翡翠色のボサボサの髪に瑠璃色の瞳、あどけないまだ子供のような輪郭。その瞳をカッと開きすぐに閉じばたんと倒れてしまった。手に持った杖だけは離さずに持ったまま気絶してしまったらしい


 「えぇ……!?気絶した!?」

 「はぁ!?こいつオレが殴っても気絶しなかったのになんでだよ!? 」


 虎織に似た少女は驚きながらこちらに近付いてくる。近くで見ると髪色は若干異なるが本当によく似ている


 「ワリぃな師匠。手間かけさせちまった」

 「師匠ってのは我輩の事か?」

 「・・・あっ、ワリぃ!ついついオレの師匠に似てたもんだからそう呼んじまった!なぁ。ついでってのもアレだけどさなんか縛るモンあるか?こいつはちょっと連れて帰んなきゃでさ」


 雰囲気的に悪い子ではなさそうだしなんだか親近感があるからいいか・・・


 「鎖で良ければ」

 「サンキュー!変わんないなぁ・・・」

 「その師匠って人とか?」

 「あぁ!」


 元気で明るいしその師匠を慕っているのがよく分かる。魔女を縛った所で虎織が不思議そうに少女の元にやってくる


 「貴女名前は?」

 「千景(ちかげ)ってんだ!いい名前だろ?」


 にひっと少女は可愛らしく満面の笑みで無邪気に笑う


 「そうだね。うん、すごくいい名前だね!私は虎織っていうんだ」

 「じゃあ虎姐だ!」

 「うん、好きに呼んでね。千景はなんだか私に似てる感じがあるけど血縁者だったり?」

 「あっ、えっとなぁ!そのー!アレだ!多分似てるだけだ!」


 一瞬凄い戸惑っていたのを見ると何かを隠しているのは明白だが初対面だし聞くのは野暮な気がしなくもない


 「そっかぁ。じゃあ今回誰かに頼まれてその子捕まえに来たの?」

 「まぁそんな感じだな・・・!」

 「その人って中性的なお兄さん?」

 「・・・黙秘で頼む!」

 「へぇ、じゃあその子は引き渡せないかなぁ?」

 「むぅ・・・そうだよ」

 「そっか。じゃあまた何処かで会うかもね」

 「まぁそうだな。必ずオレと虎姐は出逢うことになるさ」

 「じゃあその時までさよならだね」

 「あぁ、またな虎姐!それに師匠!」


 そう言って千景と名乗った少女は鎖に巻かれた少女を抱えてからつま先で地面に2回叩き歩き出し手を振りビル街へと消えていった


 「なんか嵐みたいな子だったね」

 「元気でいい子でもな」

 「千景、いい名前だよね」

 「そうだな」


 虎織と少し話しながらあの子について少し考える。一つ仮説の様な結論は出たがこの胸にそっとしまっておこう。虎織がそうしているように


 「悪い琴葉ちゃん。時間取らせた」

 「いいのよ。それにしても随分と虎織に似た子だったわね。仕草はどこか将鷹に似てたしもしかして隠し子?」


 琴葉ちゃんはそう言って我輩達を揶揄う


 「あの子が私達の隠し子だったら少学生くらいの頃に出産してることになるよ?」

 「有り得ない話じゃないのが怖いわね・・・」

 「なんでだよ!?」

 「にしてもマジでお前らそっくりでびっくりしたわ」


 蓮は不思議そうに棒状のチョコ菓子を咥えながら言う。まぁうん。似てるしな、仕方ない


 「虎姉に似て美人じゃったねぇ。あっ、蓮さんそれ一本ちょうだい」

 「ほれ」

 「なんか渡し方タバコっぽい」

 「ガキの頃の憧れだったからな。まぁ健康に悪ぃから吸わないけどな」


 何気に初めて聞く意外な一面に内心びっくりしながらも我輩も袖から小分けのチョコレートを取り出し虎織と琴葉ちゃんに投げてから自分の分の包み紙を剥き食べる。小休止が済んだらまた歩き出さないとな。駅に着くまでにコンビニでもあればいいんだけどな・・・

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