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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第4章 異端狩り編
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第18幕 決闘開始

 潮風が灰の髪を揺らす。黒に映える綺麗な銀の様な灰色。髪を束ねたリボンを一度解いてからキュッと結び直すその様に我輩は見惚れていた


 「緊張してる?」

 「いや、大丈夫」

 「そっか、今回どういう作戦で行くべきかなぁ」

 「うーん。とりあえず2人揃ってるわけだから相手のペース崩していくのは当然として相手が未知数だから臨機応変にその場に合わせて戦うしかないよな」

 「そういえば鴻江がどういう手を使ってくるかも分かってないもんね」

 「そうなんだよな、片方でも手の内分かってればどうにかなるかもだったんだけどな」

 「それに相手は刃物とか銃使ってくる可能性もあるし。こっちは木刀2本ずつ、ただ殺傷武器使ってきてくれたら初撃さえ防げばこっちのもんって所はあるよね」

 「どうなんだろな、相手も魔術使うかもしれないしなんなら日ノ元の領域出た瞬間に魔術使用不可って話もあるしそこ狙われたらアウトだな」

 「確かにそこ突かれると痛いね」

 「お二人共、準備はいいのでありますか?」


 提督が大小二本ずつ木刀を抱えてやってくる。新品なのか傷一つ無い綺麗な状態だ。正直使い古されてた方が壊しても気が楽なんだけど


 「えぇ、問題ないです」

 「ではお気を付けて。この艦の一番腕の立つ者が相手ですので。それと、頭に血が上りやすい者ですから万が一がありますのでそこを加味して立ち回っていただければ」

 「なんでそういう相手を選んだんですか?」

 「実力的に一番強い者を呼ばねば2人には勝てないと踏んでいるのでありますよ。ただその一番強い者が暴れ馬なのであります……」

 「そうですか。悪意がないなら問題ないです」

 「すみませんがよろしくお願いするのであります」

 「それじゃ、行きますか」


 我輩は大小2本の木刀を受け取りテープで囲われた中に入り相手を待つ。今回は動きやすい様にズボンに長袖Tシャツで戦いに挑む。もちろん羽織は無しだ。魔術無しだしなんなら癖で刀を抜きかねない。もし魔術が解禁されたらアリサがこっちに羽織を投げてくれる手筈になっているから安心だ。虎織も見慣れたパーカーにホットパンツという動きやすいいつもの服で来てるから連携速度は上がるだろう。我輩は小さい木刀はズボンのベルトを通す穴に差して大きい木刀は左手に持ち構えず持つ。少し待ちはしたが相手が甲板へと躍り出る。一人は言わずもがな大河、もう1人は身長2m程の屈強な大男。大男は人相が悪いという感じでぶっちゃけ関わりたくない怖さがあるし凶暴性が雰囲気から伝わってくる


 「あんちゃん達が今回の俺様の相手か、死なねぇ様に気をつけてくれよ」


 大男が握手を求めて来た為我輩はそれに応じ握手をする


 「あぁ、よろしく頼む」


 刹那、景色が高速で流れ天を仰ぐ。手を掴まれたまま投げられたか。最近こういうの多いなぁと思いながら手を振りほどこうとしたがどうやらがっつり掴まれて逃げられないらしい。仕方なく足を曲げ身体が地面へと直撃しない様に工夫して衝撃を待つ。足の痺れる様な痛み、それを堪えて平静を装い立つ


 「手痛い歓迎だな」

 「そうだろう?」


 左ストレートが飛んでくる。右手は掴まれたままだから左手ので木刀で受けるのがいいんだろうけど下手に食らう訳にはいかない。そもそも木刀を粉砕しそうな威力を持ってそうだしそういうのは避けるに限る。拳を躱し懐に潜り込もうとした瞬間膝蹴りが迫りくる。ここまでは予測されているか・・・バックステップで後ろに避けようとした時身体がグンと引き寄せられ腹に膝蹴りを食らってしまった。肺の空気が全て抜ける程の衝撃と痛み、掴まれた右手を引っ張られた衝撃も相まって肩まで痛い


 「どうした?少しは楽しませてくれよ」


 大男は笑う。アリを踏み潰す無邪気な子供のような残酷な笑み、普段ならそれに震え上がってしまいそうだが今は痛みの方が強い。掴まれた右手のギリギリと握り潰されていく痛みに耐えながら打開策を考える。虎織は?と気にする余裕すら無い程に現状は最悪、拳だけならまだしも足も出てくるとなると不利にも程がある。右手を掴まれ続けているため距離をとることすら叶わない、そして左手に木刀があるだけで他に使える手札はほとんどない


 「どうした?もうギブアップか?んん?」


 煽る言葉を無視して木刀を強く握る。今やれる事は木刀による応戦、ただそれだけだ。右手と距離さえあれば打てる手も広がる、そう思い相手の手首に狙いを定め突きを繰り出す。当たった瞬間相手の掴む力が緩んだ、その隙に手を解き後ろへ退る。拳も大太刀の刃も届かない距離、飛び道具の間合いへと身を置きすぐに相手の顔目掛けて木刀を投擲する


 「この程度で俺様に傷を付けられると思うなよ!」


 全力で投擲した木刀は拳を振って打ち払われた。だがその一瞬が命取りだ


 「もとからそれは囮だっての。椿流・・・」

 「なっ・・・!はやっ・・・」


 踏み込み


 「天打(あまつう)ち!!」


 叫ぶ。拳を相手の鳩尾へとめり込ませ地面から足を浮かせる。本来は刀の柄で対空及び相手の足を地面から浮かせるものとして使うのだが今回は拳で十分だ。それに


 「椿我流」


 次の技に繋ぐのには拳じゃないと隙が大きい。左の握った拳を広げ、全ての指の第一、二関節を折り曲げる


 「ひが「将鷹危ない!」


 今まさに掌底を繰り出そうとした瞬間虎織の声が響く。向かってくるのは四角く薄い鉄の板。下手に迎撃するのは良くない、動かしかけた腕を引っ込め後ろへ跳び退くと大男に鉄の板が刺さる


 「大河・・・てめぇ・・・!俺様に攻撃するなんていい度胸じゃねぇか!」

 「それはお前がそこに居たからだろ?それに年功序列、俺には敬語つかえよタコ」


 は?こいつ年下なの?えぇ・・・三十後半だと思ってた。なんか申し訳ない気持ちになるんだけど!


 「次は避けるなよ風咲!」

 「ただの鉄の板なんて当たるかよ!虎織、デカブツの方頼んだ!」

 「うん!任せて!あいつギリ殺傷能力無い飛び道具と体術使うから気をつけてね!」

 「有益な情報ありがと!アイツは怪力だから気をつけろ」


 お互い交差するように違う相手へと突っ込む。虎織の背を狙って大河は鉄の板を投げるが腰の木刀を引き抜き弾く。正面切って一撃ぶちかましてやる!

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