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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第4章 異端狩り編
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第13幕 嫉妬

 「胸の件は後でもいいか・・・いや、良くないけど・・・その姿って事は今鬼化してるんだよな?」


 将鷹は真面目な表情を崩さず言う。ついでに言い終わってから敵が居ないか周りを見渡して敵が居ない事を確認すると私に向き直る


 「えぇ。不思議と意識はきっちりあるわ。筋力はよく分からないけど体調も悪くない」

 「そっかぁ、良かった。蓮、状況の説明よろしく」

 「私に聞かないんだ・・・」


 将鷹の言葉に虎織はすこし寂しそうにすると将鷹が口を開く


 「いつもならそうするけど虎織は我輩に都合悪い事は隠すだろ?」

 「私の事信用してないの?」

 「信用してるからこそだな」


 虎織の優しさを分かっているからこそ、状況をきっちり把握する為に俯瞰で物を見れる薬師寺に説明を要求する。自分や忠定の問題全て背負い込む将鷹らしいと言うべきだろうか。虎織が将鷹の言葉に納得して数秒の間を置いて薬師寺が口を開く


 「じゃあざっくり話すが国無シ島の海域内でお前は雪城忠定だっけか?そいつに乗っ取られてすぐに死ねって言ったらなんでも殺せる女が船を強襲してきた。それでお前が隠してたアザーズって術式を使用して俺達を守りながら敵を殺害、あとは俺らにアザーズの説明を軽くしてからそこの巫女さん呼びつけてお前が帰ってきた、そんな感じだ」


 薬師寺は忠定が人を殺したというのもきっちり伝えた。虎織ならきっと隠していたか適当に誤魔化していただろうこの事実をなんの躊躇いもなくただ淡々と伝えた。きっと将鷹は重く受け止めるだろうと思ったけど険しい顔はすれど冷静だった


 「なるほど。琴葉ちゃんの鬼化はいつ頃?」

 「数分前だな。忠定にキレて掴みかかった、それがトリガーになったのかは分からないが掴みかかった時には既に鬼化してたな」

 「把握できた。ちょっと部屋で頭ん中整理でもしようかねぇ・・・」


 将鷹はそう言って甲板の柵に肘を付く。部屋で考えをまとめたいみたいだけど何故か甲板から動かない、それが何となく気になった


 「綺姫、アリサ、提督と巫女さん含めて色々聞きたい事がある。提督、執務室で聞き取りしたいんだけど良いよな?」

 「良いのでありますよ」

 「なら着いてきてくれ」


 薬師寺はそう言ってそそくさとその場を離れるように執務室へと向かう。アリサが私の手を取り言う


 「ささっ、うちらも行こ」

 「えっ、あっ、ちょっと・・・!」


 有無を言わさずアリサに手を引っ張られる。ラッタルを降りる時の感覚が今の姿だとよく分からずゆっくりと歩くことになったけどアリサはそれを分かってか私のペースに合わせてくれた。だけどその手は少々強引に私を引っ張っていた気がしなくもない。まるで将鷹と虎織から引き離したいと言わんばかりに


 「アリサ、少し強引過ぎないかしら?」

 「ごめんね琴葉ちゃん、あのままだとあの場に居座ってただろうから・・・ちょっと強めに引っ張っちゃったかな・・・?」

 「いえ、大丈夫よ」


 確かに将鷹の事が気になってあのままあの場に残っていたかもしれない。そう思うとアリサの選択は正しかった。執務室に入ると私たち以外は全員揃っていた。提督と久那さんは明らかに後ろに居たと思ったのだけれど・・・


 「全員揃ったな。まぁ聞き取りってのはぶっちゃけ嘘だ。聞きたいことはあるがそんなもんどうでもいい様なもんだし。察しはついてるだろうが将鷹は多分凹んでる。だから何時も通り接してやってくれ」

 「そんなメンタルでこの先やって行けるのでありますか?」


 提督が腕を組み怪訝そうな顔で薬師寺に問う。確かに外のあまり将鷹の事を知らない人からすれば心配な所だろう、でも


 「大丈夫です。あいつは引き摺りはすれどきっちり折り合いを付ける男ですから」

 「久那、そうなのでありますか?」

 「えぇ、彼はそういう人間です。それに虎織がついているからきっといつもより立ち直りが早いですよ。きっとあと一時間もすればまともになるぐらいには戻るんじゃないですかね」

 「魔術師としては甘々ですな」

 「そこが彼の良さですよ」


 私は提督の言葉に返す


 「支え合える仲間が居るとはいいものでありますな」

 「そうですね。まるで昔の幸三郎達を思い出しますね」

 「そういえばお2人は顔見知りでしたか」

 「えぇ、忠定と幸三郎、それに私に綾寧あと・・・」

 「昔の話は辞めてみんなの今までを聞かせてはくれませんか」


 提督は久那さんの言葉を遮るように言う。あまり深く聞くのはやめた方がよさそうな雰囲気に流され私達は今までの華姫で起きた事件などを話す。提督は楽しそうにそれに耳を傾ける。まぁ私は資料で読んだ範囲でしかみんなの活躍を知らないのだけど・・・

 虎織がこの場に居ればきっと全部当事者目線で話せたんだろうなぁと思うとなんだか胸が苦しくなる。虎織は将鷹の隣でいつも彼の手助けができた。なのに私は・・・後ろ向きな思考がぐるぐると回り始める。こんなこと考えるのはやめよう、無理矢理思考を楽しい方へとシフトする。でもそう上手くはいかないものだ。少し寝て気分をスッキリさせよう


 「ちょっと疲れたから部屋に戻って眠るわ」

 「あぁ、ゆっくり休め。部屋までは俺とアリサで護衛した方がいいな。船内とはいえ油断はできないし」

 「そうね」


 3人で部屋まで行くと部屋で泣きそうな声とそれをなだめるような優しい声がする。あぁ、羨ましい。私だって将鷹を助けたいのに・・・

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