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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第4章 異端狩り編
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第11幕 呪殺師

 「雪城忠定・・・!」


 虎織が怒りに満ちたと声で髪の色が褪せた将鷹へと掴みかかる。その髪は将鷹とは対照的に黒く染まり虎織の怒りとか殺意が表れていた。あまりの気迫にさっきまでの私なんて居なければなんて思考は一時的に保留せざるを得なくなってしまった。自分を責めるのは後、今はこの状況をどうにかしないといけないかもしれない


 「待て待て虎吉の娘。俺だって好きで表に出てるわけじゃない。土地が土地だから仕方ない、そう割り切っちゃあくれないかな?」


 飄々と将鷹らしくない雰囲気を纏い忠定は提案する。もちろんそんなものを聞く虎織では無いのは明白だ


 「ふざけないで!貴方が居なければ将鷹は・・・!」

 「炎の魔術が使えてて倒れることも少なかったってか?」

 「えぇ・・・!」

 「勘違いすんなよ嬢ちゃん、こいつは炎が使えようが結局は今のまんまだ。自分の力量を測り間違えて他者を傷付けるのが怖い、それに何より自分の命が惜しい、だから結局は加減して実力据え置きだ」


 忠定の言葉は冷たいという程には冷えきっておらず尖ってもいない。子供の戯言を小馬鹿にするという表現が一番近いかもしれない


 「そんなことない!将鷹は何時だって全力だった!必死だった!」

 「じゃあなんで今回の戦いで土地神から賜った力を使わなかった?知ってるんだろ、どんな能力でどれほど強大な力か」


 土地神さまから?私は特に報告受けてないのだけれど。将鷹としては使いたくない能力、使ってはいけない能力というモノなのかそれとも単純にいざとなった時の切り札として報告してこなかったのだろうか


 「それは・・・」

 「ちょうどお客さんも来たことだし見せてやるよ。本当のこいつの力を」


 私達に敵襲を告げ忠定は首を左右に揺らし首の骨を鳴らす。そして一度目を閉じてから大きく開く


 「多元観測、情報整理」


 忠定の周りに水鏡が3つ作られ隙間からなにかが見える。不敵に笑っている血塗れな私?自分の姿を見ても血なんてついていない、じゃああの鏡に映っているのは?

 そんな疑問に思考を巡らせる中、艦が大きく揺れる


 「殲滅対象はっけぇぇん。ここのヤツらも皆殺しぃ?」


 首を斜めに傾けふたつに別れた舌にピアスをして黒の革ジャンを直に羽織った赤紫色の髪の女が軽快に艦に乗り移って来た。見た目18歳よりも下な感じがするけどその危うさすら感じる若さが怖い。何をするのか全く読めない


 「雪城、今アイツはなんかよくわからん魔術式使ってて無防備だ。あの状態で影朧が出てくるとも限らねぇ、守りきるぞ」


 薬師寺が面倒くさそうに虎織に声をかけて鉄扇と拳銃を取り出していつでも戦闘を始められるように構える


 「不本意ながら了解。アリサちゃん、琴葉ちゃんの事よろしくね」

 「がってんしょうち!」


 アリサに手を引かれ扉を盾にする形で私達は身を隠す。丸窓からはきっちり向こうが見える


 「あんたらあーしに勝てると思ってんのぉ?あーし最強だしぃ、弱いものいぢめとかぁ趣味じゃないしぃ。でも手始めにぃ発声練習でもしよっかなぁ?」


 にぃっと女は口角を上げてから海の方を向いて叫ぶ


 「死ねっ!」


 瞬間海から大量の魚の死骸が浮かび上がる。強制遂行とかじゃなくてこれは呪いだ。って事は抵抗とかできない・・・異端狩りはこんなやつがゴロゴロいるの・・・?


 「ちょっとどころかかなり分が悪いんじゃないこれ・・・」

 「鼓膜潰すか・・・?」

 「ふっふっふっ・・・ビビったぁ?ちなみに教えてあげるけどあーしのコレ、耳に作用してる訳じゃないしぃ」

 「呪いの類はそういうもんだろな」


 忠定が口を開く。随分と余裕そうに、打開策は既にあると言わんばかりの口ぶりだ


 「はぁ?なんか生意気ぃ。畏れ慄けってのぉ!」

 「恐るるに足りず。それになんだそのハレンチな服は。最近の子はみんなこう・・・ではなさそうだな」

 「は、ハレンチぃ!?あーしのこれはオシャレだしぃ!死ねっ!」


 やばい、呪いが広がる。それを感じる。だけど私達はまだ動ける


 「なんで・・・!なんであーしの呪いが効かないのぉ!?」

 「死因保留、呪いだろうが外傷による死だろうがいかなる死も俺の手の上だ」

 「ふざけんなぁ!死ねっ!死ねっ!死ねっ!」

 「無駄だってわかんないか?」


 少しづつ忠定は距離を詰めていく。女は忠定に向けて呪いを吐き続けるがそれをものともせずただ歩いていく。後退りする女と距離が縮まらないと思ったのか忠定は呟く


 「闊歩する死者」


 その言葉に呼応してさっき見えていた煤けたモノ、部位が無いモノ達が女に群がる様に歩き出す。女の後ろからもそいつらは現れ簡単に女は掴まれ持ち上げられる


 「キモイってのぉ!やめろぉ!離せぇ!死ねっ!死ねっ!なんでこいつら死なないのぉ!」


 ジタバタと暴れることに気を取られることなく忠定は女の肩を掴む。そして言葉を吐き出す


 「死人に死ねって言っても死ねるわけないだろ?死因断定、呪詛、焼死、失血死、内臓破裂、溺死。死因転嫁」

 「や、やめ・・・」


 女が耳をつんざくような悲鳴を上げながら血走った目を見開き目と口、鼻から血がゆっくりと流れ出る。身体は動いているけど口から血混じりの泡を吹き始め身体をビクビクと数回動かしてから動かなくなり口から黒い煙を吐いていた。それと共にこの地で死んで行ったモノ達は消えていった。いつの間にか砲撃も止み敵艦も見えなくなっている


 「悪いな。こういう殺し方しかできなくて。でもまぁ本当ならもっと具体的な死因で殺すべきだったんだろうけど、どうも女相手じゃそういう気にならん」

 「本当に酷い殺し方だな」


 薬師寺が死体の目を閉じさせる。身体は血や体液で汚れているだけで外傷もなく綺麗なままなのがまだ救いだとでも言うのだろうか・・・

 虎織は口元を拭ってから忠定を殴りつける。その後も数発感情に任せて涙を流しながら忠定を殴り続ける


 「綾寧、もう少し速度上げてくれ。このままここの海域に留まれば俺は殴り殺されそうだ」

 「久しぶりに合って第一声がそれでありますか。雪城殿、どうか拳を収めて欲しいのであります。好いた男の身体で好き勝手されたから怒るのは分かるのでありますがその身体は風咲殿のものであります」

 「・・・許せないのはあんな酷い殺し方した事です。もっと楽な殺し方があったはずです・・・なのに・・・!」

 「俺は言ったよな?本当の力を見せてやるって。少々俺の力でズルはしたが死因保留や断定はあったかもしれないコイツの力だ、それを行使したに過ぎない」

 「あったかもしれない・・・?」


 忠定はため息をつきながら説明がめんどくさいと言わんばかりに座り込み語り始める

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