表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第4章 異端狩り編
240/361

第10.5幕 綺姫

 「将鷹達は大丈夫かしら・・・」


 2人を信用してないわけじゃない。でも心配にはなるのが人の性というものだと思う


 「心配要らねぇだろ。華姫でコンビ組ませりゃ右に出るやつ居ないコンビだぜ?あの2人相手だったらリミッター外した全力の吉音でも勝てねぇっての」

 「そうそう、お兄ちゃんと虎姉は最高のコンビじゃけぇ心配ないって!」


 薬師寺とアリサが言う通り2人揃えば華姫最強と言ってもいい、でもこの艦が首里に近づいて行く程に将鷹の魂の色が少し変わっていくように見える。ふとした拍子に時々見えるだけだから気の所為かもしれない。気の所為だ、そう思いたい。もし気の所為じゃないなら将鷹が報告書に書いていた炎の魔術式を使う度に魂が雪城家のある男に寄っていくというのが炎の魔術式を使わずに起きている事になる。そう思うと胸がぎゅっと締め付けられる。だって知らないうちに将鷹が知らない人になってしまうなんて・・・私には耐えられない。だから・・・


 「狙われてるのは私だし軽率なのも、足でまといになるのもわかってる。でも・・・」

 「わかった、俺が責任持って綺姫を護る。だから俺らの大将がそんな泣きそうな顔すんな」


 薬師寺が困った様に頭を掻き、鉄扇を握る


 「アリサはどうする。俺は綺姫を優先的に護るからお前は護ってやれない、それだけは言っとく」

 「うちは自分の身は自分で護るから着いてくよ。それに2人居た方が護衛しやすいでしょ?」

 「違いねぇな。怒られる覚悟なんてしたくはねぇけど腹括っていくか!」


 薬師寺を先頭に外へと向かう急勾配な階段の近くになると外の剣戟の音が聞こえてくる。確実に戦っている。将鷹は多分大丈夫、でもこの眼で確かめないと・・・


 「行くぞ。いいな?」

 「えぇ」


 外に出るなり視界に映ってはいけないモノ達が蠢いている。黒く焦げた人だったもの、それが海を漂っていた。半分焦げたモノや皮膚が溶けたモノ、一部が欠損しているモノ、骨が見えているモノ。普通の人が見ればトラウマ確実なモノばかりだ。かくいう私も平静を装うのがやっとで気持ち悪い


 「薬師寺、海面に黒焦げの人間見える?」


 気づいていない振りをしながら私は小さな声で尋ねる。意図を察してくれたのか薬師寺はほんの少しだけ首を横に振る


 「ここ、まさかとは思うが国無シ島付近じゃねぇよな」


 薬師寺の小さな呟きで私はハッとした。ここは将鷹にとって危険だ、きっとさまよっている魂が将鷹を変えてしまう


 「将鷹!」


 思わず叫んでしまった。鎧武者と戦っている最中チラリとこちらに視線を向けて鎧武者へと一撃を加える。その一撃が効いたのか鎧武者はその場から飛び退き海へと消えて行った。それを確認してから将鷹と虎織がこちらに向かってくる、その途中で将鷹がばたりと倒れてしまう。虎織が焦りながら将鷹に声をかけ身体を揺する、薬師寺と私、アリサは倒れた将鷹に向かって走る


 「脈が無い・・・!?心臓も動いてない・・・雪城!心臓マッサージするから俺がやれって言ったタイミングで人工呼吸!」


 死んでいる・・・?将鷹が・・・嘘でしょ・・・?さっきまで戦ってたのに・・・?

 ありえない、ありえないありえないありえないありえないありえない!なにかの冗談よね?そうでしょ・・・?

 ぴくりと将鷹の身体が動く。生きてた・・・良かった・・・将鷹はそのまま起き上がり口を開く


 「久しぶりに起きてみたがこの海域、死地か」


 将鷹じゃない。嘘・・・魂の色も違う、全くの別物だ。雪城家の人間に乗っ取られた・・・?

 ズンと身体が重くなる、気付けば私は膝から崩れ落ちていた。私のせいだ・・・私が居たから・・・私が鬼の血なんて引いてたから・・・私が生きていたから将鷹はこの艦でここに・・・後ろ向きな思考が私の頭に渦巻く


 「そう、私が生きているから彼はこの場に居合わせた。全部私が悪いの」


 もう1人の私が私を責める。本当にその通りだ私さえ居なければ・・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ