第19幕結 孤軍奮闘、一騎当千
「おいおい、さっきより数増えて来てないか!?」
振り向くとローズは門に寄りかかり疲れ果て眠っていた。魔術の使い過ぎが祟ったのだろう。これは仕方ない。
信号弾を使うか?いや、しかし強敵との戦いの最中でよそ見は禁物だ。少しでもこちらに気を取られたならそれは致命傷になりうる。
ならばどうするか。独りで戦うのみだ。
「正しく孤軍奮闘か。まぁ守る者が居る男ってのは強いもんだし、むしろ今の俺は無敵か・・・」
無敵という事はない。しかし自らにそう言い聞かせて己を鼓舞する。
こんな有象無象共には俺はやられない。必ずこの門を死守してやる。
刹那、目の前の人間モドキ達が糸の切れた人形の様に崩れ落ちていった。
というか人型を保てず灰となった。
「間に合って良かった。ヴァンさん、虎織達とは別行動?」
肩まで伸びた黒髪の女が目の前に立っていた。吉音月奈。華姫において最凶とも言える人間であり魔術師としては最高峰、武術も華姫では一、二を争う程の槍術の使い手だ。
悪人には手加減を一切しない様はまさに冷酷無慈悲と言ってもいいだろう。
俺としてはこいつは怖いの一言に尽きる。
「吉音か、助かった。あいつらとは今は別行動だ。」
「そっか。じゃあここのヤツら速攻片付けて合流しようか」
吉音はそう言うと走り出し人間モドキ達に1本の槍で立ち向かう。
槍の穂先に触れた人間モドキはたちまち灰になっていく。
この吉音の姿を表すなら一騎当千そのものである
「これは下手に突っ込むと死ぬな・・・」
俺は立ち尽くすしかない己の無力さに拳を握る他なかった




