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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第4章 異端狩り編

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第7幕 鴻江大河

 「いやぁ薬師寺殿には感謝でありますな」


 朝会のハードなトレーニングを乗り越え我輩達は提督執務室へと戻ってきた。虎織だけは何事も無かったようにケロッとしているが我輩含め残りの皆はもう満身創痍と言うべき程に体力が削られていた。蓮は壁に背中を預けエナジードリンクを飲み、アリサは少ししんどそうに提督の机に座っている。琴葉ちゃんに至ってはソファに両手足を投げ出し大の字で横になってるし、かくいう我輩も鎖を2つ張りその上にタイヤのついた遊具でくつろぐパンダのように身体を鎖に預けている訳だが


 「人間砲台なんて聞いてないですよ。せめてヤバいことやるなら言ってください。こっちとら自然な反応してもらう為に面倒くさい演技までしてたんですから。将鷹と雪城が起点効かせて対応してくれていたから海に落ちはしませんでしたけど、もしこいつらが鈍感だったら喧嘩じゃ済みませんでしたよ」


 蓮が提督へ長々と苦言を呈する。当然の反応だよなぁ


 「いやぁ言ってしまうと引き受けてくれないと思ったのでありますよ。それに人間砲台の時のあのリアルな反応は出せなかったのでありますし何より気付けなければこれからはやって行けないのであります」

 「はぁ・・・これは面倒な船に乗っちまったな」

 「まぁ快適な船旅は保証するのでありますよ」


 机に向かい両肘をつき手を組みながら首を傾げ提督は笑う。快適な船旅ねぇ・・・旅なんて気楽なもんじゃないんだけどなぁ。そんな事を思っていたらドアをコンコンコンと叩く音が響く


 「大河でありますな。入室を許可するのでありますよ」


 提督の言葉の後にドアがゆっくりと開く。顔を出したのは旧友である鴻江大河だ


 「失礼します。客室の整備が終わりましたのでお客様を各部屋へとお連れします」

 「ご苦労さまなのであります。ではご客人方は大河に軽く船内を案内してもらうのであります」

 「では、こちらへ」


 大河は我輩の事は覚えていないのだろう。そりゃそうか、随分と昔の事だもんなぁと少し寂しくなりながらも執務室を出ようと鎖を仕舞い歩き出す。そんな時虎織も大河に気づいたのか我輩に小声で声をかける


 「アレって将鷹が昔仲良くしてた人じゃなかったっけ・・・?」

 「そうだな。向こうは覚えてなさそうだからこっちからは不干渉でいこう」

 「なんかそれ悲しいね・・・」

 「仕方ないって、昔の事だし」


 全員が提督執務室を出て扉がバタリと閉まると大河が口を開く


 「ひっさしぶりだな!2人とも俺のこと覚えてるか!?」


 我輩と虎織の間に入り肩を組むようにして本当に嬉しそうに笑顔で大河は我輩達に問う。当たり前だと答えたかったが先に出た言葉は


 「我輩達のこと覚えてたのか!?」


 というなんとも言えない間抜けな物だった


 「あぁ!そりゃそうだろ!風咲将鷹に雪城虎織、俺たち遊んだ期間は短くても友達なんだからさ!」

 「流石に私まで覚えられてるとは思ってなかったなぁ。あと将鷹と私の肩から手を退けてもらってもいいかな?」


 虎織はなんだか複雑そうな表情を浮かべながら普段なら言い方に棘があってもおかしくないセリフをやんわりとした口調で言ってくれている


 「おっと、悪い悪い!将鷹より印象に残るぜ雪城は!なんせ将鷹にベッタリくっついてもし将鷹と2人で遊びに行こうとしたらめっちゃ睨まれたからな!超怖かったんだぜ?まぁ今は随分と柔らかくなったみたいだけどな!」

 「朝会終わりになんにも言ってこないから気付かれてないと思ったけどなぁ・・・」


 これまた複雑そうな表情で虎織が言葉を紡ぐ。おおよそ昔の事を懐かしみながらも少々恥ずかしさがあるみたいな感じだろうか


 「提督に目ぇ付けられたらどうすんだよ。提督おっかねぇんだぜ?」


 大河は気にして無いかもしれないけどこのセリフは提督に聞かれてたらヤバいよなぁ・・・


 「何処がおっかないか言ってみるのでありますよ?」


 どうやら提督が静かに扉を開き執務室から出てきていたようだ。琴葉ちゃん達は少し気まずそうに立っているが我輩達は特に不味くはない気がするが?


 「えっとですねぇ・・・そのー、ご客人方に釘でも刺しておこうかと」

 「要らぬことはしなくても良いのでありますよ?別に釘を刺さずともアリサが居れば大丈夫でありますし」

 「これは出過ぎた真似を・・・」

 「あと友達ならば先に報告しておくのでありますよ。今回運良く同年代ということで大河を選出しましたが本当に運が良かっただけなのでありますよ」

 「はい」

 「分かれば良いのであります。では客室へと案内をしてあげるのですよ、立ち話では疲れてしまうのであります」

 「了解です!じゃあ話は客室でということで」

 「あぁ」


 こうして我輩達は大広間というべきかみんなで集まれる部屋と個々の部屋が貸し与えられた。部屋数の問題で我輩と虎織、琴葉ちゃんは同じ部屋らしい。せめて我輩は蓮と同じ部屋の方がいいんじゃないか?と思って大河に聞いてみると男色禁制という理由らしい。まぁ納得な理由だよなぁ・・・

 部屋自体は割と広めでトイレとシャワー完備されている。しかし水は限られてるだろうからあんまり気軽に使えないよな。そして一番の問題は


 「大河ぁ?なんで我輩達の部屋ベッドひとつなんだよ!?」

 「あぁ、悪い。手配が間に合わなくてな。首里でひとつ搬入するらしいからそれまで我慢してくれ」


 そっかぁ・・・仕方ないよなぁ・・・いや、仕方なく無いよなぁ!?これはしばらく床で寝ることになるな・・・

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