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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第4章 異端狩り編
233/361

第4.5幕 神と異形

 「邪魔をするなら女であろうと殺す。それにさっきの距離の詰め方、貴様は人から外れているな?」


 不気味な笑みを浮かべる仮面は黒髪の女にそう言い放つ。黒髪の女は不敵な笑みを浮かべ口を開く


 「仮面を着けたままとは随分と失礼な人間ですね」


 刹那、蒼い炎が仮面を焼き奥にある異形が顔を出す。刺々しい鱗が顔の半分を覆い黒く染った目をギョロりと動かす異形に対して驚く素振りも見せず女は言葉を続ける


 「力欲しさに龍の血でも飲みましたか。一説によれば力を使う度に内臓が焼けるような痛みに襲われると共に身体から刃のような鱗が皮膚を突き破り生えてくると聞き及んでいます。可哀想に・・・」

 「黙れ!貴様に哀れまれる程俺は落ちぶれていない!それに貴様ら異端を狩る為なら異形に身を落としてでも殺す、それが俺たちのやり方だ」

 「哀れを通り越して滑稽ですね。一瞬で済ませようかと思いましたがいいでしょう、貴方とは少々遊んであげましょう」


 女が言葉を言い終わる前にもう1人の仮面を着けたモノが襲いかかろうとやけに長い異形の腕を伸ばそうとしたその時、仮面を着けたモノは蒼の炎に包まれ一瞬にして焼け落ち炭となって崩れ去った。人の焼けた臭いすら残らないほどの一瞬の出来事だった


 「確認、忘れてましたね・・・私とした事が・・・ま、まぁ大丈夫、ですよね?明らかに人の骨じゃありませんし。それはそうとこの方が何かご存知で?」


 女は炭にならなかった硝子のように脆く本来人の骨格ならばありえないような形の骨を手に取りながら異形に問う


 「貴様は何だ・・・!?異端にしても高位、だが吸血鬼や悪魔などでは無い・・・貴様は一体何だというのだ!?」

 「質問はこちらがしているというのに・・・でも、答えてあげましょう。神ですよ。貴方達が最期に討ち滅ぼそうとしている目標、それの一端です」

 「神・・・はっ、はっはっはっはっはっ!随分と大層なモンが来たじゃないか!ただの鬼の娘一匹狩りに来ら神と逢うなんてなぁ!」


 男は今にも怖気付きそうな心を奮い立たせ戦闘態勢へと移行する。だが神は一切、その場から動こうともせず男を見るだけだった


 「逃げるなら今は見逃してあげますよ?」


 その言葉を受け男は走り出す。神に背を向け使命より自らの命を優先し全力で逃げる。きっと普通の人の身体であれば出せない車の如き速度、異様たる速度で風を切る


 「じゅーう、きゅーう、はーち」


 遠くにいるはずの神の声、それが男の耳元で響く。それは死へのカウントダウン、本能的に男は何処まで逃げても無駄だという事を理解していた。だが脚と本能が止まることを許さない。小さくなっていく数字に怯えながら走る


 「いーち、ぜーろっ」


 男は恐怖した。カウントダウンが聞こえなくなり自らが風を切る音だけが耳に入る。0のカウントから数秒、まだ何も起きていない。脚を止めよう、男がそう思った瞬間耳元で神が囁く


 「つーかまえた」


 その声と同時に目の前に赤い目の神が柔らかな笑顔を向けながら男の肩を掴む、がっちりとただ肩を掴まれただけだというのに身体が動かないほど強く。きっと男の心が折れたのも一因だろうがそれがなくとも動けなくなっていただろう


 「み、見逃してくれるんじゃないのか・・・?」


 男は情けなく、震えながら女に問う


 「言いましたね。でも少し遊ぶとも言いましたよね?それに私が神だと知ってしまっていると考えると少々私にとって貴方の存在は邪魔となってしまいますから排除しておかないと」

 「頼む!命だけは!」


 男の悲痛な命乞いを嘲笑うように神はにぃっと口角を上げてから言葉を紡ぐ


 「みっともない声で鳴きますね。もう貴方は逃げられない、覚悟を決めてください。それに貴方は異端だからという理由だけで命乞いをするモノ達を殺めてきたのでしょう?貴方の番が回ってきた、ただそれだけの事ですよ」


 神は異形の顔に手を伸ばし蒼炎を灯す。それは本来の蒼色、緑色の怪しい炎だった。男はもがきながら必死に神の手を振り払おうとする。神の腕には引っかき傷などが増えていくがそれを全く気にせず緑の炎は煌々と怪しく燃え光っていた

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