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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第1章 先代鬼姫編

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第19幕参 門前一戦

「ヴァンさん達大丈夫かな・・・」


西の丸から城本体へと続く道を走りながら独り呟く。


「何かあったら信号弾飛ばしてくれるしきっと大丈夫だよ。私達は目の前の目標に集中しよ」


虎織が我輩の独り言に反応する。

あの二人は強いけどやっぱり心配になる。でも虎織の言うことは正しいし前に進む他ない。


「ここの門は開くだろうか」


久野宮さんが門を開けようとしたがガタガタと音が鳴るだけだった。

そりゃそうだよな。攻めてくるの分かってたらそりゃ閉めるよ。


「致し方ない。ここの城壁を登る他無いか。」


なかなか恐ろしい事を言ってくれるな久野宮さん。

さっきの西の丸への道のりでも手裏剣のような何かや石が飛んできた。また何かしら飛んでくるのでは?

我輩はヴァンさんの様に問題点を指摘する


「久野宮さん、なにか飛んで来たら危ないんでそれは」

「他の手はあるのか?」


言い終わる前に久野宮さんは問いを投げてきた。


「1分ください」

「わかった」


とりあえずこういう門は木製の閂が使われているはずだ。なら振動を与えて行けばズレるのでは?と考えガタガタと久野宮さんと同じように門を揺らす。

試行錯誤してみるがなかなか落とせない。


するといきなり門が開く。勢い余って我輩は転けてしまった。


「そんなにガタガタしたら門傷んじゃうじゃないですか」


開いた門の先には不機嫌そうな顔をした日々喜さんだった。


「あーこんばんは。」

「はい、こんばんは。そしてさようなら」


日々喜さんの手元から手裏剣が飛んでくる。

転けた状態から身体を丸め前へと回避するが避けきれない。腕に手裏剣が刺さり激痛が走る。刺さった箇所は熱くなり鋭い痛みが襲ってくる。

その痛みに耐えながら体勢を立て直し、虎徹を鞘から引き抜き構える。


「頭に刺されば一撃だったんですけどね」


怖い事を言ってくれる。


「日々喜さん、なんで!?」


虎織が声を荒らげ日々喜さんに問う。


「なんでと聞かれたら恩を返す為ですかね。ここの門を護るのがわたしなりの恩返しなので」


恩返しか。そりゃ納得だ。日々喜さんにとっては先代は命の恩人なのだからその恩に報いる為にここに居るというわけだ。


平然と味方、いや、今の彼女からすればただの敵に手裏剣を淡々と投げていく。

何故か我輩にしか投げないのは何か恨みでもかってしまったのだろうか?


飛んでくる手裏剣を刀で弾きどうやって倒すかを考える。

ここは狭いから風切は使えない、虎徹も椿流の型を使えば引っかかるだろうし。

考えている間も手裏剣は飛んでくる。

虎織が作ってくれた魔術式の発動回数が残っていれば楽に乗り切れただろうに・・・


「仕方ないよね・・・日々喜さん、ここであなたを殺します!」


虎織の声が響く。

虎織が悩んでから出した答えなのだろうが我輩はそれを否定しなければならない。


「虎織!手出し無用だ!それと人は殺さないって約束は守ってくれ!」

「っ!でも・・・」


手裏剣を弾きながら話をするのはなかなかにしんどい。

これ以上話をしながら弾くのは難しいかもしれない。


「弾くのに精一杯なんですか?そんなのじゃ天守閣にいる仄様に一太刀浴びせるのも難しいんじゃないですかね?まぁどっちにしろその長い刀じゃ仄様の身体を傷つけることすら叶わないでしょうけどね」


もしかして遠回しに情報をくれてる?

天守閣に先代が居るのは初耳だし室内は虎徹を振り回せる程の広さはないという事だろうか

というかもしかして恩とか一切感じてないパターンですか日々喜さん。

それならなんで殺しに来るような手裏剣投げるんですかねぇ・・・

今もめちゃくちゃ痛いんだけど


「そもそもこの先にそれなりに強い人間モドキが居ますし、ここで引き返す方が身のためだと思いますよ」

「ならそいつらに我輩達を殺させればいいんじゃないか?」

「それもそうですね。わたしがわざわざ殺さなくてもアレらがやってくれるでしょうしわたしは仄様の元へと戻ることにしましょうか」


手裏剣を1つ投げ置き日々喜さんはまるでさっきまでいなかったかのようにスっと消えた。

置かれた手裏剣には紙がくくりつけられており内容はこの先では太刀類の使用は難しいから取り回しの利く短刀や魔術、武術での対応を勧める、先代の後ろには誰か居るから気をつけろ

という内容だった。


「全く、演技かどうか分からないのは困り物だな」


一発目の手裏剣はどう考えても殺しに来てた気がしたがまぁいいや・・・


「将鷹、手を出して。」

「はい」


怪我をした方の手を差し出す


「いってぇ・・・」


消毒液をだばだばとかけられた。それが傷口に染みる


「我慢して。全く、最近無茶し過ぎだよ・・・」

「ごめんな。」


虎織がガーゼをしてから包帯を巻いてくれた。


「ありがとう」

「うん」


少し間を空ける。言うべきかどうか迷ったが言うべきだろうと思い口を開く


「1つ、言いたいことがあるんだけどいいか?」

「なにかな」

「あの約束は絶対破らないで欲しい。約束というより契約みたいなものだけどさ」

「わかった・・・」


申し訳なさそうな顔で虎織は頷いた。


「あれ?久野宮さんは?」

「さっきまで居たはずなんだけど」


久野宮さんはこの場から姿を消していた。

もしかして城壁を登って上へ向かったのだろうか?

そうなると久野宮さんと先代及びその後ろに居る誰かとの戦闘が始まってしまうかもしれない。

一対一ならまだしも一対二となると分が悪いのではないだろうか


「虎織、天守閣へ急ごう!」

「うん!」


我輩と虎織は天守閣へ向かうため城の階段を急いで駆け上がる。


広く拓けた所に1つの影があった。


「おいおい冗談だろ・・・」


そこには首から上がない人間モドキが1匹徘徊していた

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