プロローグ
「やぁ坊や。おはよう」
秋の早朝、肌寒さを感じながら女性の声で目を覚ます
「おはようございます・・・宇迦様・・・」
欠伸をひとつして毛布に包まりながら声の主に挨拶する。身体も起こさずにだ。頭が冴えてきて自分の相対している相手が神様だと認識すると折りたたみベッドの上に飛び上がる様な形で正座して背筋を伸ばす
「そんなにかしこまらなくてもいいんだよ?別にオレはさっきの毛布ミノムシ状態で話を聞いてくれても・・・いや、ダメだな。今回は背筋を伸ばして聞いておくれ」
「はい」
「まぁオレがここにこうやって来ている時点で察しはついているだろうがな」
宇迦様の話は分かっている。ヤツら、異端狩りが動き始めた。その報告だろう
「お察しの通り異端狩りどもが動きを見せた。派遣してくるのは多分2人から6人、ここはまだハッキリしないんだがヤツらの傾向から見て6人以上は送ってこないだろうな。6人全員殺されたらその異端にはよっぽどの事が無い限りは触れないとかそういう教義みたいなのが有るそうだからな」
「教義って宗教みたいですね・・・」
「実際ヤツらは本質的には宗教やってるヤツらさ。崇めてるヤツが神か人かの違い程度の些細なものだよ。まぁどうでもいい話はこの程度で。これからどうするつもりだい?」
宇迦様は真剣な眼で我輩を見る。対策期間はおおよそ2ヶ月もあったのだ、打てる手が無いという事は無いだろう?と口には出さずとも眼がそう語りかけてくる
「琴葉ちゃんを武蔵へ護送します」
「存外普通の答えだねぇ。てっきり坊やの事だから、6人倒せば手を出してこないっていうなら全員ぶっ倒す。とか言うかと思っていたんだけどね」
「戦力差を考えると武蔵で火野姫に頼る方が勝算がありますから。向かってくる刺客を捕まえて火野姫と最上含めて相手の元締めと交渉って手筈になってます」
「そこら辺は話を通しているのか・・・君のそういう所は褒めざるを得ないね。だけどそれなら最初から琴葉を武蔵に置いておけば良かったのではないか?」
ごもっともな意見が飛んできた。普通なら宇迦様のこの意見が正しいのだが今回は普通じゃない
「例えば虎織とかが狙われるならそれでも良かったんですけど今回は鬼姫、琴葉ちゃんが狙われてる訳ですから琴葉ちゃん不在の間華姫の運営どうするんだと火野姫に言われてしまいまして、それに異端狩りから逃げながら武蔵にたどり着けない程度じゃこれからやっていけないだろうから自力でなんとかしろとも・・・」
「これは随分と火野姫らしい理由だな。それなら早めに支度するといいさ。しばらくオレは見守るだけになってしまうだろうが武蔵に着けば手を貸してやれるからな、それまでに死ぬんじゃないぞ」
「えぇ、なんとかしますよ」
神様と約束をしてからまだ睡眠を欲している身体を起こし虎織達を起こしに向かう。これから随分とめんどくさい旅が始まるんだろうな・・・
 




