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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
短編過去録「風雪の月」
221/361

第11幕

「ここに黒髪のお嬢さんが捕まっている」


狐は学校の前でそう言って止まる。灰髪じゃなくて黒髪・・・


「黒髪ねぇ・・・月奈、急ごう」

「うん。その前に・・・っと!」


私は将鷹の背中を強めに叩く


「いって!」


気合いを入れる為に一喝、というのもあるけどこれで将鷹に魔術式を埋め込めた。後ろから将鷹を見るための魔術式、危機回避というよりも本当に危ない時に助けに行ける様にする安全装置だ


「気合い入れていこう!」

「・・・あぁ!」


将鷹は自らの力を確かめるように盛大に門扉を蹴り壊し校内へと踏み入れる。正直魔力による身体強化がここまでの物とは思っていなかった。もしかしたらただ制御しきれてないだけなのかもしれないけど今はその強大な力が頼もしい。

グラウンドには大量の生徒、そして鎖で吊られた虎織、それを眺めニヤニヤとしている三田。

将鷹は堪らず走り出し生徒の群れに構わず炎の直線を2本、平行に走らせる


「露払いは頼んだぞ」


怒りに満ちた声色に私は酷く嫉妬した。あぁ、それが私の為に向けられたものならどれだけ良かったか。そんな煩悩を振り払い私は応える


「任せて、全部蹴散らすから」

「心強いな!」


一直線に走る二線を基準に将鷹は真っ直ぐ吹き飛ぶ。風を使って吹き飛ぶなんて力技で空高く飛び放物線を描き降下しながら目の前の生徒達を蹴り飛ばして行く。

怪我なんて知ったこっちゃない、虎織さえ助けられれば他人がいくら傷ついてもいい。そう見える程に荒々しく、ただの蹴りのはずの一撃は力強かった


「私もやりますか!」


神殺しの槍をくるりと回し将鷹に群がろうとする者を吹き飛ばしていく。この生徒達が魔術を使ってきたら余裕なんてなかっただろうけど鈍く襲いかかって来るだけなら神殺しは必要なかったかもしれない。

ただ、そのおかげで将鷹の方に目を向ける事が容易になっているのは幸いだ


「自力で私の魔術を振り払いましたか。ここまでイレギュラーだとは思いませんでしたね。まぁでも、雪城虎織の前で君を完膚なきまでに叩き潰して殺してやれば彼女はきっと美しく泣いて、心が折れるんでしょうね」

「趣味が悪ぃな」


将鷹は呟きながら右手に炎を灯し殴り掛かる


「おっと、まさかそんな一撃が私に届くとでも?」

「がっ・・・!」


容赦のない膝蹴り、それが将鷹の腹部を抉る。声を上げたものの将鷹は笑う


「捕まえた!」


体勢が悪い中将鷹は拳を振るう。殴る勢いは十分、その拳が三田の頬を捉え顔を逸らさせる。その隙に体勢を整え拳を構える


「ぐっ・・・魔力で肉体を補強しているのか・・・」

「いくぞ・・・」


まるで右ストレートからの左フック、普通の人が直撃すれば即ノックアウトだろうけど三田は異様にタフだった。それを気にせず将鷹は右の拳に炎を纏い裏拳を放つ。そんな攻撃は当たるはずも無く避けられてしまう


「単調な攻撃すぎてつまらな・・・」


裏拳を避けたのを確認した将鷹は身体を無理矢理動かして1歩距離を詰めてから風を使って回し蹴りで避けてすぐの三田の身体を蹴り飛ばす


「まだ足りないか・・・」


そう呟くと三田の方では無く虎織の方へと走る。

縛られた虎織の鎖を炎と腕力で壊し虎織の名前を呼ぶ


「虎織、大丈夫か?生きてる、よな?」

「将鷹・・・」

「良かった・・・!酷いこと言ってごめんな・・・」

「ははっ、良かった・・・いつもの将鷹だ」


虎織の頬を涙が伝う。その涙は将鷹の物も混じっているだろう。肩を震わせてから自らの涙を拭い立ち上がる


「我輩だけじゃアイツを倒せないだろうから手伝ってくれるか?」


将鷹は虎織に手を伸ばす。将鷹はその言葉の意味を分かっているはずだ。独りで三田を倒せ、その誓約を破棄し魔力を失うことになる


「もちろん、一緒に戦わせてよ。何発か殴らないと気が済まないし」


虎織は将鷹の手を取る。瞬間虎織の髪は黒く濁った物から澄んだ灰色へと色を変え綺麗に整う


「それじゃあ行こうか!」


さっきより活き活きした声で将鷹は拳を構える。あぁ、羨ましい・・・

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