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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
短編過去録「風雪の月」

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第7幕

先生が赴任して1週間、異変が起き始めていた。クラスの一部の人の性格が卑屈になっているというか精神的に抑圧されている気がする・・・

明るかった人も操り人形のように俯き気味に項垂れている


「虎織」

「うん。おかしいよね。あの先生が何かしてるのは明白、そうだよね?」

「そう、ただ下手に手出し出来ないから・・・」


私の言葉を遮るように将鷹の声が響く


「なぁ三田先生、決闘しようぜ」

「何故そんなものを受けなければならないのですか?そもそも君は魔術も使えない訳で」


何考えての!?そう思ったけどまさか将鷹は今回の件の証拠を掴むために先生に決闘を仕掛けてる?

虎織ははぁ・・・っと溜息をつきながら首を横に振る


「我輩はあんたが気に入らない。なんつーかよくわかんねぇけどとにかく気に食わない、あんたが来てからこのクラスはおかしくなってるし何かしてるんだろ?」

「さて、よく分かりませんね」

「とぼけんじゃねぇよ!」

「言っても埒が明かないというわけですね。仕方ありません、やりましょうか。決闘。しかし条件があります。私は魔術を使いますが君はステゴロ、それが呑めないなら決闘は受けません」

「ビビってんのか?」

「いえ、君程度の実力であれば拳銃を持たせても捻りつぶせます。しかし私に喧嘩を仕掛けてきた、その事実への罰の様なものです」


理不尽だ。そんなのなら決闘を今すぐ取り消した方がいい。ちゃんとした魔術師相手に素手なんて無謀にも程がある・・・!


「まずいよ・・・あんなこと言われたら将鷹は・・・」


虎織が焦る。まさか・・・いや・・・将鷹はそういうタイプだ・・・1度勝負を仕掛けたら降りない、武器が使えないからってそれがどうしたって平気な顔して殴り掛かるはずだ・・・


「いいぜ!やってやるよ!」


案の定ノリノリで笑って見せる。一瞬こちらに目配せをしたのは多分何かあったら頼む、そういう意味だろうか


「今回は屋上じゃなくて近くで助けられる様にスタンばってた方がいいよね・・・」

「だね」

「では開始しましょう」


私達の予想とは全く違う予想外過ぎる声と共にいきなり将鷹が教室の床に叩きつけられる。ありえない・・・!明確に殺そうとしている一撃、それに周りにはまだ生徒が周りに居るのに始めるなんて・・・


「みんな!危ないから教室から出て!」

「がっ・・・っぇ・・・」


私たちの横を将鷹が飛んで壁へとぶち当たる。

将鷹は受け身も取れない状態で背中を打ったからかぐったりとしている。気絶して無防備になっているのをいいことに先生は将鷹にゆっくりと詰め寄っていく。その歩を阻むように虎織が前へと立つ


「なんのつもりですか?決闘の邪魔です」

「こんなの一方的過ぎます・・・!」

「一方的に力を示しているんですよ。そうでないとこの馬鹿は分からないでしょう?」

「・・・来て、虎て「待った・・・」


虎織が何かを呼び寄せようとした瞬間将鷹が起き上がる


「我輩が相手するから・・・」

「でも・・・!」

「お喋りしている暇があるとでも?」


先生は将鷹目掛けて走り出す。魔術式で肉体強化をしていると見るのがいいほどの速度、今のボロボロな将鷹じゃ反応出来ない


そう思っていた


「なっ・・・」

「速くて助かった・・・その分こっちの力が少なくて済むからな」


将鷹の拳が先生の頬にめり込みその身体を吹き飛ばす。カウンターを決めたとはいえ先生はすぐに立ち上がって再び向かってくる。ダメージを受けていないようにすら見え確実に将鷹が不利なままでそれでも将鷹はふらつく足で立ち、構え迎え撃つ。将鷹の放った拳は空振り、先生の蹴りが腹を抉るように入る


「かはっ・・・」


血を吐きながら将鷹は先生の足をつかみ強く握る。これ以上は将鷹が死ぬ、そんなのは明白で私も虎織も将鷹に駆け寄っていた。


「寄るな・・・」

「ふん、今日はこれで勘弁してあげましょう」


将鷹の言葉に一瞬足を止めてしまったのが悪かった。先生は将鷹の拘束を振り解きそのままの勢いで回し蹴りを放ち将鷹はそれをモロに食らってしまう。あそこで足を止めなければきっと・・・そんなタラレバに思考を回している暇は無い、将鷹が倒れているんだ・・・


「将鷹、立てる?」


虎織が手を差し伸べると将鷹はその手を振り払い立ち上がる


「俺にもう関わるな・・・」

「えっ・・・でも・・・」

「うぜぇ」


困惑する虎織に目もくれずフラフラと教室を出る姿は別人に見えた


「虎織、大丈夫?」


大丈夫なはずがない床にペタリと手を付き座り込んで声も出さず涙を流していたのだから


「将鷹に嫌われた・・・手を伸ばしたのがいけなかったのかな・・・」

「大丈夫、将鷹は虎織の事嫌いになってないって。きっと今は何か訳があってあんな態度とったんだって。明日また声かけようよ」

「うん・・・」


その次の日、将鷹と先生はクラスに顔を出すことも無く不穏な空気だけが漂い、虎織は屋上で泣きじゃくるだけだった・・・

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