第2幕
さっき偶然出会ったおどおどしていた女の子、雪城さんに職員室まで案内してもらうことになった。
雪城という苗字から華姫の名家であるというのはわかったけどそれ以外はあまり、というか口数が少ないから全く情報がない。こちらから話しかけるべきなのだろうか?多分初等部からココに居るだろうしあの子の事知っているかもしれない。そう思い口を開く
「あの、風咲将鷹って子の事知ってる?」
そう聞いた瞬間雪城さんの纏う空気がやんわりした少し暗い雰囲気から一変する
「吉音さん、でしたっけ?今日転校して来て初日ですよね?なんで将鷹の事知ってるんですか?」
刺す様に鋭い空気、初めて味わった感覚、それにびっくりしてつい1歩後退りして足を止めてしまう。下手に嘘を吐くと確実に何かが起こる。喧嘩なら負ける気はしないけどそんなのは気がするだけって事も十分有り得る訳で下手な事は言えない
「なんで黙ってるんですか?貴方は将鷹のなんなんですか・・・?」
質問がどんどんと追加されていく。彼女も足を止め真っ直ぐ獲物を狙う虎の如き琥珀色の眼が私を射抜き視線を逸らす事すら許さない。正直怖気付いたと言ってもいいかもしれない。あぁ、人の地雷を踏み抜くってこういう事かと妙に納得しながら私は口を開く
「昔助けて貰ったんだ。そのお礼を言いたいんだけどもしかして風咲君の事嫌いだったり?」
「あっ、昔助けて・・・だいたいはわかりました・・・その、私は将鷹の事嫌いじゃないです・・・むしろ・・・」
彼女の纏う空気が頬を赤らめまるで恋する少女の様なふんわりした物へと一変する
「風咲君のことが好きなんだ」
虎織は黙ってコクリと俯きがちに首を縦に振る。そんな時後ろから声が聞こえる
「虎織ーおはよー」
さっき聞いた声風咲将鷹の声だ。でもなんだかさっきとは違いやんわりと角の取れたのびのびとした声だ、もしかしてと思うけどこの2人・・・
「将鷹おはよう!」
!?驚愕した。さっきまでの雪城さんを思い出せない程に明るい声。こんなに印象が変わる子初めて見た
「誰かと一緒なんて珍しいな」
「職員室探してるみたいだったからね。案内してたんだ」
「そっか。そこのアンタ、さっきは急いでたみたいだけどもしかして職員室を探して走り回ってたのか?」
「あはは、そんな所かな?」
笑って誤魔化しておこう。そう思って居ると雪城さんが元気に口を開く
「吉音さん昔将鷹に助けて貰ったんだって!」
「えっ?そうなのか?全く記憶にないんだけど」
「まぁ将鷹は助けるだけ助けてそそくさとその場からいなくなるもんねー」
「そ、そうなんだ」
温度差で風邪引そう。人見知りが水を得た魚に成ってる
「アンタ結構びっくりしてるだろ。虎織は人見知りでな、我輩と一緒にいる時と一人の時は雰囲気が違うらしいんだ」
「正直びっくりしすぎてる。温度差で風邪引きそうになったよ」
「あははは・・・申し訳ないです・・・」
「あっ、自己紹介がまだだったね。私は吉音月奈、今日からこの学校に転入してきたんでよろしくね」
「吉音月奈さん、ね。了解、名前は覚えた」
「さて、2人とも職員室行くんだろ?」
「あっ、そうだったね。こっちだよ」
「風咲君は一緒に来ないの?」
「んー。ちょっと屋上に用があるから、またな」
「お、屋上?」
やばい、鍵の件が最悪風咲君に・・・
「ちょっと鍵の調子が悪くてなぁ。直してこようかなって」
風咲君は指で鍵のついた輪っかをクルクルと回してから鍵を握り背を向ける
「先生にバレない様にねー」
「あいよー」
背を向けたまま手を振り彼は去っていく。その際一瞬何も無い所で転けそうになっていた姿は少し可愛かった




