第1幕
「さて、そろそろ皆さんが登校してくる時間でしょうから貴方・・・あっ、お名前を聞いてもよろしいでしょうか?これから関わることが増えるかもしれませんし」
「吉音月奈と申します」
「月奈、良い名前ですね。その名の如き祝福があらんことを」
少彦名命、いや、久那さんは龍面を被り再び消えてしまった。と思ったら直ぐに龍面が浮かび口を開く
「あっ、言い忘れてましたけどここ立ち入り禁止なんで早めに戻った方がいいですよ。鍵とかぶち壊して此処にいるんで」
「えっ・・・」
それは色々とヤバい。他の人からみたら鍵壊して入ってる訳だしバレたら転校早々問題児扱いされてしまう。それだけは避けなければ。幸いまだ人の気配はない、屋上のドアをそっと開け周りを確認してから階段を降りて行く。そして2階まで降りて来た所で誰かとぶつかってしまった
「大丈夫か?」
「あ、ごめんなさい・・・私は大丈夫です」
「そっか、欠伸してて前向いて無くてな。ごめんな」
「いえ、こちらこそ・・・」
相手の顔を見ると私はギョッとした。探している人にこんなに早く会えるなんて・・・成長はしているけど変わらない面影がそこにはあった
「ん?やっぱどっか痛い?」
「だ、大丈夫!」
キョトンとした顔をよそ目に逃げる様に私は走り出していた。校舎を出る頃には心臓が早鐘を打ち、息が切れてその場に座り込んでしまっていた。
すると灰色の髪をポニーテールにして黒い髪留めを2つ左の毛束につけた女の子が不思議そうにオドオドしながら私に手を差し伸べてこう言う
「あ、あの、その、えっと、大丈夫・・・ですか?」
「大丈夫だよ。少し走ったら疲れちゃっただけ」
「そ、そうですか・・・良かった・・・何も無くて・・・」
この子、人と接するのが苦手なのに声をかけてくれるなんて随分と優しい子なんだなとその子の手を取る。
制服のリボンは赤、私と同い年みたいだ
「心配かけちゃってごめんね。貴方、お名前は?」
「あっ、えっと、雪城、虎織です・・・」
「雪城さんね!覚えた!同じ学年みたいだしこれからよろしくね!」
「はっ、はい・・・」
雪城虎織、まさか久那さんが言っていた2人と直ぐに逢うなんて思いもよらなかった。これは何かの縁なのかそれともただの偶然か、今はまだよく分からない




