第41幕 干支廻し
口から血を吐く城ヶ崎から突き立てた刃を引き抜きそれと同時に鉄の鎖で縛り上げる
「しかししかし、何故私が化けていると何時気付きました?」
「教えて欲しいか?まぁ教えないんだけどな!」
精一杯嫌味ったらしく笑顔で答えてやった。ここに来る前に禍築達にここに踏み入れるなと伝えておいて良かった。選択肢が増えると化けられた時に手間取るからな。それにアイツが化けたのが土地神さまで本当に良かったと思う。あの神様程判別がしやすい神様は居ないだろう、何せ石畳を壊されて平然としていたらそれは偽物なのだから
「そう言うとは思っておりましたが実際言われると腹立たしいものですね」
「口調が崩れてきたぞ?」
「おやおや、これは失敬。教えて頂けないと言うならその頭の中身を覗かせて頂きましょうか!」
城ヶ崎の眼が赤黒く光る。何かよく分からないが嫌な感じがした、その刹那オレンジ色の炎が城ヶ崎を包み声が響く
「我が友の頭を覗こうとするなど随分と度胸がある人間よのぉ」
日差しの様に暖かい声、天照大御神の声だ。前に貰った御守りを媒介に話しかけて来ているのだろう。しかし何時もと話し方が違うのが気になる・・・神様の威厳がどうのってやつなんだろうけど・・・
「天照大御神・・・!貴様、何故人間に加担している・・・!?本来神とは人間には不可侵であるはずだ!」
炎に炙られながら城ヶ崎は声を荒らげる。我輩が城ヶ崎の立場なら同じように声を荒らげるだろう
「お前らが日ノ元に害を成すとなっておる。故に我らはお前らの天敵となるこの人間に協力する事にしておる」
「これが天敵・・・はっはっはっはっ!確かに風咲将鷹は我らにとって天敵かもしれないがあの御方にとってはただの赤子も同然!」
「ふむ、そうだろうな。しかしだ、私たちが将鷹に付いている限り、いや、ワタシたちが付いていなくともこの子はお前たちには負けない!親友、さっさとコイツ倒すといいさ!ワタシはゲームでもしながら君たちの道行を見守るとするよ」
城ヶ崎の身を焦がしていた炎は消えると鎖は焼け落ちて城ヶ崎を自由の身にしていた。なるほど、きっちり戦って倒せって事か・・・
「くっくっくっ、やってしまいましたね天照大御神。せっかく貴方の手駒が私を捕らえたというのに。なんとなんと嘆かわしい。それにそれにさっきつけられた傷も焼かれ塞がっているではありませんか!」
我輩目掛けて炎が地面を走る。だがその炎は我輩に届くことなくかき消された
「せっかく捕まえたのに・・・」
不機嫌そうな声で虎織が言う
「捕まえ方が甘かったんだろうさ。もう1回捕まえればいいだろ?」
「それはそうだけど・・・」
「何を何を余裕そうにお話をしているのでしょうねぇ!」
式神の元となる型紙が大量に展開され城ヶ崎の写し身や白い獅子や大蛇など幻獣の様な物までが姿を現す。だがその程度どうってことはない
「虎織、アレやるぞ」
「片手で大丈夫?」
「あぁ、心配無用。それにこの数やるなら連撃で仕留めるしかないだろ?」
「そうだね・・・じゃあやろうか」
虎織が踵を鳴らして準備完了の合図をする。それに応え踵を2回鳴らす
「「椿我流、連弾。干支廻し!」」
威勢よく、2人で声を合わせ叫ぶ
「子!」
我輩が言葉と共に刀を振るうと地面から砂鉄が集まり鼠の形を取りその場に居る虎織と我輩以外の物の脚に噛みつき動きを止めさせる
「丑!」
虎織が動きの止まった式神達の頭に神速と言える速度で突きを加えて行く
「「寅!」」
2人式神達をありとあらゆる斬撃で斬り裂く。まだ式神達の再生速度の方が早いか。幻獣達を写しているだけあってそう簡単には倒れてくれない
「卯!」
我輩はその場を跳ねながら式神達の首を落としていく。ついでに城ヶ崎にも一撃と思ったが式神に邪魔をされてしまった
「辰!」
虎織が刀を鞘に仕舞った瞬間式神達はバタリとその場に倒れ込む。しかしまだ獅子と蛇は立ち上がる。城ヶ崎は何やらブツブツと呪文を唱え始めた。早めに決めないとやばいな。次の干支からは火力が期待できないから最終段でダメージ与えて行く方がいいな
「巳!次最終段よろしく!」
本来ならここは虎織にやってもらいたいところだが順番的に我輩だから仕方ない。未完成の2連撃の已己巳己を獅子と蛇へと放ち吹き飛ばす
「理心、無明剣!」
虎織の三段突きが吹き飛ばされた獅子と蛇へと繰り出される。我輩は虎織の後ろへと走り次の技を用意し虎織が技の範囲から抜けた瞬間に刀を突き出す
「風衝剣!」
刀身から一直線に刃のように鋭い突風が石畳を砕きながら突き進む。残っていた獅子と蛇はズタズタに引き裂かれ風は城ヶ崎を前に消える。どうやら何かで邪魔されたみたいだ
「黒影よ、私に力を!この身を喰らいてあの者達を・・・」
「悪いけどそれはさせないよ」
我輩でも虎織でも無い誰かが城ヶ崎の手足を切り落とし血の池を作る
「月奈!?」
「ごめんねーちょっと縄抜けに手間取って遅くなっちゃった」
黒い髪を靡かせ血の池の上に立って居たのは神殺しの槍を携えた月奈だった




