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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第3章 華姫騒乱編(下)

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第39幕 呆気ない決着

 「行くぞ白虎!」


 刀の銘を呼び気合いを入れる。女の子の意識はない、あの脚に装着されている機械具足が無理矢理動かしているのだろう。そうなるとできる限り早めに助けなければ彼女の身体に負荷が掛かることになる。

 どうやってアレを切り離すかは戦いながら考えるしかない。相手は待ってくれるわけじゃないしな。

 中段の横薙の様な蹴りが繰り出されるが距離が開いている為空振りに終わる。やっぱり機械具足に動かされてると変な動きをするな、そう思った時だった。何かが風を切る音が耳に入る。この音はよく知っている。風の刃が風を切り裂く音だ。

 音が分かっても避けられない。風の流れは分かるがそれを避けるのは至難の業だ。

 何せ刃が六つ、違う方向から飛んできているのだから。

 白虎を正眼に構えてから白虎を杖に見立て言葉と共に魔術式を起動させる


 「集め・・・」


 剣先に風が集まる。例外無く、風の刃すらも剣先へと引き寄せる。刀で空気の重さを感じながら正眼から大上段へと構え直す


 「散らせ!」


 その言葉と刀を振り下ろす行動をもって魔術式を発動させる。それはただの暴風を起こすだけの一般的に見ればただの使い道のない魔術式、それをかまいたち現象が起きないギリギリのラインで前方へと放つ。引き寄せられていた風の刃を暴風が巻き取り徐々に勢力を落としていく。

 こちらにたどり着く頃には刃はただの髪を揺らすそよ風程度の代物に成り果てた。

 振り下ろした刀で地面を軽く斬り魔力を込める


 「椿流、子の番。窮鼠拷秒(きゅうそごうびょう)


 言葉と魔力に応じわらわらと黒い鼠達が地面から湧き上がり少女の方へと走り出す


 「機械具足だけ齧りとってくれよ」


 鼠達は金切り声で鳴きこちらの言葉に返事をする。わざわざ言わなくてもいいんだけどつい声をかけてしまう。自分の魔力とはいえ動いていると違うものとして見てしまうのは悪い癖かもしれないな。自分の魔力の管理が杜撰とか言われそうだ。

 鼠達は機械具足に噛みつき火花を散らす。一瞬びっくりしたがこいつらの元は地中の砂鉄だ。砂鉄が細かく、高速で動けば研削盤の様に対象を削り取る。

 機械具足は鼠達を振りほどくために暴れ回り火花を周囲に撒き散らす


 「白鎖!」


 付け根の方を縛れば動けないだろう、そう思い袖から白鎖を呼び出す。白鎖は宙を舞いながらあらぬ方向へと向かう。その先には風の鎖に囚われた城ヶ崎と鎖の維持に集中している虎織が対峙していた


 「どうした白鎖!?」


 そのまま白鎖は城ヶ崎の首へと巻き付くとその首を締め上げ始めた。ありえない、我輩の意思ではないとはいえ人間は殺せないはず・・・

 まさか・・・確かめるために白鎖を揺らしさらに締め上げる様に指示を出す。すると白鎖に力がこもる


 「虎織!そいつも式神だ!」

 「ならこの場で斬り捨てるね」


 虎織の口元がにぃっと上がる。神経使う作業をした後だ、思いっきり暴れたいという感じだろうか


 「椿我流。終ノ太刀・・・」


 終ノ太刀、その言葉に耳を疑った。初めて聞くし、虎織にしては珍しい八相構え・・・一体どんな技なのか。

 気を取られた隙に少女が鼠達を振り払いこちらとの距離を詰めて来ていた。

 上からの踵落とし、それを刀で振り払うと鉄を打ち合う音もなく砂鉄と火花が舞い散る。虎織の終ノ太刀の影響だろうか・・・?そんな中もう一撃蹴りが飛んでくる。刀を振り切ってしまったが故に隙が大きい中での一撃、普通なら避けられるはずがない


 「さっきの一撃で決めるべきだったな」


 目の前まで踵に付いた刃が迫って来た瞬間機械具足がバチバチと電気を放出しながら動きを止め少女が地に落ちそうになる


 「白鎖、頼んだ」


 一撃目を弾いた瞬間に袖へと戻ってきた白鎖に少女の身を拘束させそこら辺の木に引っ掛ける。

 少女は完全に気を失っており抵抗する素振りも見せない。正直こんなに上手く行くとは思っていなかった・・・さっきの砂鉄の鼠達に甲冑と戦っている最中に撒いた水を含ませてさっきの魔力を込めた一撃に反応して砂鉄と共に水が中に入り込みショートさせる。ただそれだけで呆気なく決着となった。問題はどうやって機械具足を取り外すかだな・・・その前に蓮にこの子の容態とか診てもらうために来てもらった方がいいか


 「なに俺の妹ジロジロ見てンだよ」


 後ろから近衛が声をかけてきた。どうやら甲冑の方は倒せたみたいだ


 「いやぁどうやってこの機械具足外そうかなってな」

 「・・・どうすりゃ外れンだよこれ」

 「なんで知らないんだよ!」

 「開発者じゃねェンだよ!俺のは自分の意思で装着したり霧散させたりできるが」

 「ならこの子に起きて貰うのがいいんじゃないかな?」


 虎織が白鞘に刀を納めながら笑う。1番いい方法ではあるがどうやって起きて貰うかだ


 「どうやって起こすんだ?」


 虎織はおかしそうに笑いながら答える


 「やっぱりこういうのの相場は王子様のキスだよねぇ」

 「ベタ過ぎない!?というか実妹だよな!?」

 「実妹だぞ!?」

 「ほらほらー早くーいいじゃんー」

 「本当にそういうので目が覚めるのか・・・?覚めなかったら怒るからな・・・」


 近衛は吊られた実妹の顎をくいっと持ち上げ顔を近づける。その瞬間だった


 「に、にぃ様ぁ!?な、何を!?咲弥は実の妹ですよ!ヘンタイさんです!ハレンチです!ケダモノです!」


 少女が目を覚まし近衛の額に頭突きを食らわせる。見事に決まったな


 「いってぇ!」

 「ほら、目が覚めた」

 「ぜってぇ違うだろ!」


 近衛は語気強めに言うが笑っている。なんというか溶け込んできた感じがするな。そしてインカムから雪の声が響く


 「将鷹、聞こえる?」

 「あぁ、どうした?」

 「土地神さまが捕まっちゃったからすぐに助けに行って貰えるかな。場所は土地神さまの神社、僕もすぐに向かうから」

 「あぁ、わかった。すぐに向かう。それと蓮を白鷺城まで頼む」

 「わかったよ。じゃあ後でね」


 土地神さまが捕まってるってなると月奈が・・・いや、月奈に限ってそんなことは・・・


 「近衛、ここは任せた。後で医者が来るから。虎織、行こう!事情は走りながら話す」

 「わかった!」


 土地神さま、月奈、待っててくれ・・・

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