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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第1章 先代鬼姫編

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第18幕 作戦開始

午後八時。各々準備を済ませて事務所の手前へと集まっていた。


集まっているのは久野宮さん、ヴァンさん、ローズさん、虎織、我輩の5人だ。

琴葉ちゃんは事務所で桜花さんと蓮と一緒に待機している。



「まさか作戦会議してその日のうちに攻略作戦とはな。術式の完成はもう少しかかると思っていたが流石は雪城だな」


黒いスーツを着たヴァンさんが髪をかきあげバンダナを巻きながら言う。

この人本当にスーツ似合う大人って感じで憧れるな。


「なかなか大変でしたけどね」


着物姿の虎織は魔術式を刻んだ木簡(もっかん)を扇子の様に広げ1人ずつ渡していく。

その姿はさながらカードゲーマーのようだった

着物姿の虎織に見蕩れ木簡を受け取るのがワンテンポ遅れてしまった。


「へぇー木簡なんて珍しいわね。基本魔術式を刻むなら紙だと思ってたけど」


木簡を上から、下からと観察する様にローズさんは言う。

実際、紙の方がコスト面的にも用意する手間的にも優れている。だがしかし一つだけ木簡が紙よりも優れている点がある


「木簡は紙よりも強度があるんで3回くらいは魔術式に耐えられるんですよ」


ちょうど虎織が説明してくれた。

紙はどんな魔術式でも1度使えば使い物にならなくなるが木簡はそうはならない。

理屈はよく分からないが素材の強度の問題なのだろうか。


「やっぱり面白いわね、日ノ元の魔術は。外じゃ偽物の錬金術や魔法ばかりで探究心もなかったけどこれは本当に奥深いわ。」


木簡を胸元に仕舞いローズさんはメモを取り始めていた。

そういえば魔術をもっと知りたい、突き詰めたいと前言っていたな。

それはそうとして何故外国の人は胸元に物を仕舞うのだろうか?映画とかでもよく見かけるが向こうでは常識なのだろうか?


「ヴァンさん。胸元に物を仕舞うって外国では普通なんですか?」

「将鷹、ローズのあれはテレビの影響でやってるだけだ。実際やる人は多分少ない。そもそもあれは出来るやつは稀だろう?」

「あー確かに」



久野宮さんがコホンと咳払いを1つし全員が静かになる


「そろそろ向かうとしよう。出来れば生け捕り、無理なら致し方なし、容赦は要らぬ。皆、覚悟はいいか?」


「「「「おー!」」」」


こういうので4人そろうのは珍しい。普通ばらけるんだけどな



移動を始めて西の丸付近の石垣までやってきた。


「そういえばここは池だったか。すっかり忘れていたな。さて、どうやってそこの石垣に掴まるか・・・」


ヴァンさんもしかしてこの池越える手段用意してない?


「お前確か魔術式で空走れたよな?」


我輩の肩を持ってヴァンさんは言う。まさかこの展開は我輩が全員抱えて何往復もするパターンですかね?


「できますよ。でも運ぶのは御免ですよ」

「そう言わずに頼む。危険は承知だがお前の実力を買ってだなぁ・・・」

「それなら私が風で3人一気に運ぶから将鷹は私を抱えて空駆けって言うのはどうかな?リスクも何往復もするよりずっと低いかなって」


虎織の口から現実的な提案がでた。だがしかし虎織はさっきまで魔術式を作って若干消耗しているかもしれない。そう考えると往復するのが1番いいのかもしれない


「大丈夫か?今から乗り込むのに力使って?」


我輩は虎織に問う。


「心配してくれてありがとね。私は大丈夫。魔力量には自信あるし、これからの戦いには影響は出ないと思うよ?」


虎織は背伸びをして我輩の頭を撫でる。少々子供扱いされている気がするが今は気にしない方向で行く


「そうか。じゃあ、抱えるからな。」


そういうと共に虎織を俗に言うお姫様抱っこというやつで持ち上げる。

彼女の体重は軽く、もう少しご飯しっかり食べてもいいのでは?とさえ思った。


「みなさん、身体がふわっとしたらそのまま風に身を任せてくださいね。将鷹、術式準備OKだよ。最速で最短で駆け抜けよう!」

「応!」


掛け声と共に魔術式を足場に空へと駆け上がり西の丸へと走る。

道中石や手裏剣のような物が数回飛んで来たが虎織が作った魔術式で飛来物は全て湖面へと叩きつけられ、沈む。

やはり伏兵が居たようだ。ヴァンさんの提案がなければ今頃何発か食らっていただろう。


「到着!っと」


石垣を越え物陰へと身を隠す。

そして数秒遅れて風に乗っていた3人が到着する。


「なぁ、広場の方向で嫌な物が見えたんだが」


ヴァンさんが顔を青くして言う。嫌な物とは一体なんだろうか。黒影でも居たのだろうか?


「というと?」

「人間モドキがびっしり居て門付近まで迫ってた」

「人間モドキ!?それは笑えない冗談ですよ!」


人間モドキ、華姫や他の市が人体実験等で作り出してしまった異形にして元人間の成れの果てである。

とても獰猛で、凶暴で、理性がなくそれは既に人では無く、ただ人を襲う化け物となったモノだ。

十数年前に掃討されたと聞いていたモノがびっしりと居るはずはない。

そう思いながら我輩は物陰から広場の方へと目線を向ける。


そこにはワラワラと映画のゾンビの如く呻き、お互いを喰らい合うおぞましい人型の化け物達がいた。


「マジでいるじゃないですか・・・」

「先代を追い詰めるより先にこいつらをどうにかするべきじゃないか?外に出たら民間人に被害が出るだろうしな。」


ヴァンさんの言う通り、人を襲う化け物なら倒すのが優先事項だろう。

先代と闘う前にバテたくはないが仕方ない。


「将鷹、あの集団に爆弾投げたら雪城と久野宮さんを連れて先代を倒しに行け。戦力はちょっと少なくなるがローズと俺で門は絶対に死守してみせる」

「でもあの数を2人でってのは・・・」

「風咲、門は2人に任せてワシらは先へと進むぞ。」


久野宮さんは冷静に、そして辛そうにそう言った。

ヴァンの意見を尊重しよう、久野宮さんは静かにそう言って背を向ける。


「2人ともご武運を」

「おう。お前らも全力で先代を叩き潰してこい!」

「もしなにかあれば信号弾でも撃つからその時は助けに来てちょうだい。まぁ、そんな事はないと思うけどね!」


ヴァンさんとローズさんは力強く答えた。

各々の武器を構えたのを確認してから我輩は高台へと登り竹筒の爆弾の導火線に火をつけ人間モドキ達の群がる場所へと放り投げる。


大きな爆発音と共に我輩達は二手に別れて走り出した

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