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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第3章 華姫騒乱編(下)
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第36.5幕 離れていても

 刀を正眼に構え、向かってくる男の手にある札を斬ろうとしたけど弾かれた。札は紙だと思ったけど紙に硬化の魔術式が仕込まれていてそれで物理攻撃を仕掛けて来ようとしていたと見るのがいいかな。

 ちょっと油断してたのが良くなかったかな。刀を弾かれて体勢が悪い、でもできることはある。男の腹に蹴りを入れて距離を突き放す


 「これはこれは随分と手厳しい歓迎ですね。しかししかし、良かったのですか?貴女は風咲将鷹と組んでこそ真価を発揮する人間だと聞いていましたが、私を独りで相手にできるとでも?」


 ムカつく喋り方の金髪男、城ヶ崎は嘲笑うかの様に私を煽る。でもそんな煽りじゃ今の私は動じはしない。だって


 「独りじゃないよ。確かに距離は離れているかもしれないけど私達は2人揃ってる。だから貴方程度には負けない!」

 「おやおや、随分と威勢が良い事を言うではありませんか。腹立たしい!」


 札を振り上げた瞬間一直線に私目掛けて紫電が飛んでくる。速いけど私の知識が正しければ撃ち消せるはず、手を前にして小さな箱をイメージして風の流れを作る。そこから空気を抜いていく様に風を流す。魔力と神経使うけど攻撃を防げるならそれでいい。さし出した手の前で紫電は散り城ヶ崎は驚きの表情を見せる


 「なっ・・・実に実に小賢しい技を使うではありませんか、何故私の雷が消えたかは知りませんが雷を封じた程度で私に勝ったとは思わない事ですね・・・」

 「原理、教えてあげましょうか?」


 精一杯煽るように嫌味ったらしく言葉を紡ぐ。怒りに任せて攻撃してきてくれた方が楽で読みやすい


 「是非是非ご教示頂きたいものですね!」


 次は密度と速度を上げてきたみたいだね・・・結構厄介かな。でもまだ目で追える、だから問題ない!

 虎徹を将鷹から借りた白木の鞘へと納め、体勢を低くして目の前まで迫った紫電を睨む。白木の中の刀に魔力と風を流しさっきやったことを刀に応用する


 「椿我流、居合、蟹式」


 虎徹を振り抜き紫電をかき消す。上手くいった。でも次は難しいかもしれない。だから一太刀でも浴びせておきたい、脚に魔術式で加速を叩き込んで距離を詰める。城ヶ崎の横を通り抜けるのに1秒も掛からない、加速の最中、左手で振り抜いた刀を右手に持ち替えて刀身に風を纏わせ城ヶ崎の腕にそこまで深くは無い傷を付ける


 「椿我流、秘剣・・・」

 「速さには驚きましたがこの程度・・・」

 「過剰刃(かじょうじん)


 城ヶ崎はがくりと膝をつき嘔吐する。そして力尽きる様にそのまま地面に倒れ込み嘔吐しながら息も途切れ途切れに在り来りな言葉を吐く


 「いったい何を・・・」

 「過剰刃、さっきの刃に乗せた風に酸素中毒の重篤症状が出る程度の酸素を流し込んだだけだよ。まぁ症状次第じゃもう聞こえてないかな。しばらくそのまま倒れててよ」


 将鷹の居る方向を見ると赤黒い甲冑、それに手こずっている様に見える将鷹がそこに居た。将鷹のスタイルが崩れてる?刀を振るテンポがおかしかったり軌道がいきなり逸れたりしてかなり戦い辛そう・・・

 今手伝いに行くよ、そう考えた瞬間右腕に痛みと熱さ、それに痺れが襲ってきて虎徹を落としてしまった


 「っ・・・!まさかもう・・・」


 ありえない、そう思ったけどこいつらが私達の物差しで測れるかと言えば否定せざるをえない。完璧に油断してたし技が決まって慢心してた。

 振り返ると城ヶ崎はゆっくりと立ち上がりながら札を周りに散りばめていた。これはかなり不味い。

 符術士には2タイプあって魔力量が乏しいが故に毎日札に魔術式を刻んで溜め込みいざと言う時に少量の魔力消費で済むようにするタイプと魔力量が多いのを利用して大量の札を作って一気に解放して普通の魔術式じゃ出来ない様なことをやるタイプ、城ヶ崎は確実に後者だ


 「くっくっくっ・・・やってくれたなぁ小娘ぇ!ぶっ殺してやる!」

 「キャラ変わってない!?」


 急なキャラ変に驚きながら右腕を止血の為に押さえる。

 虎徹を拾うほどの時間はないかな


 「此れは全てを焼き尽くす雷、触れるモノ全てを無に帰す神の一手」


 人の頭程の雷の球が城ヶ崎を中心に回り始める。1周ごとに球の数は倍になっていく・・・あの口上からすると触れちゃダメなやつだよね。しかもさっきみたいにかき消せるかどうかは分からないし、さっきは簡易的な真空を作って絶縁体を作って消し飛ばしたけど今回はそうはいかないとなると・・・

 どうしようか・・・過剰刃で仕留めてた方が絶対良かったよね・・・しかも最悪なことに右腕は痺れて動かせない


 「後悔しても仕方ないよね・・・やれる事だけやってみようか」


 右腕をだらりと投げ出し魔術式を起動しながら左腕を振るう


 「風断ち!」


 認識出来ない風の刃が直進して雷球へと当たるとバチッとすごい音を立てながら雷の柱を打ち立てる。やっぱ当たったら即死系だよねー。めんどくさ・・・

 さっきと同じ様に魔術式を起動しながら乱雑に左腕を振る


 「二連風断ち」


 またバチバチと雷の柱を立てる。雷球は確実に潰せてる。でも増えていく雷球を全部消すのは私達の魔力的に難しいし効率が悪いよね


 「無駄だぁ!その程度のモノ俺の体に触れることすら許されないぃ!さっきの雷撃の無効化はどうせ真空でも作って防いだのだろうが今回は真空であっても焼き尽くす!」

 「さて、どうしようか・・・」


 困ったなぁ・・・手詰まりかな。そう思った時だった。土煙と共に剣薙近衛が入っていると思われる鎧と剣薙に似た女の子が争いながら割って入ってきた

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